忍者ブログ
東西名探偵/平×新のSSブログです。幸せイチャイチャ中心。                                                               死にネタ別れネタなし。初めての方はカテゴリーより「はじめに」をクリックしてください。                                                 ご意見、ご感想等ございましたら カテゴリー下にあるリンクのWEB拍手や文末コメントにてお願いします。
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11
2026/07/01 (Wed)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2011/04/23 (Sat)

キス、だよな。

今のキスだよな!

信じらんねえ、この俺がいるのに、しかもよりにもよって俺の目の前で他のヤツにキスなんかしやがった。

かわいいなんて連発すんな、そんなのは俺にだけ言ってりゃいいだろ!

にやけたツラしやがって、あ、今度は抱き締めやがった。

ちょっと待ち合わせに遅れたらコレだ。油断も隙もねえ。

カツカツと靴音をたて近づく俺にようやく気づいたか、振り返って手なんざ振っている。

それでもまだ離れねえ。ふつふつと苛立ちが増し、口元の笑みがひくつく。

「どないしたん?工藤?」

しゃがんで、腕にじゃれる子猫をあやしながら俺を見上げる男を、俺は盛大に蹴りあげた。

拍手[10回]

PR
2011/04/22 (Fri)

天空の難破船→鬼火の章→浪速の連続殺人事件と、連日平次デイでした!

・・・あまりにあまりにステキすぎる平新連日デイに、もう息も絶え絶え。

文章の書き方を忘れていたことも手伝って、ちまちま絵を描いていました。

久しぶりだったからぜんぜんダメダメさんだったけど超楽しかった・・・!

色塗りソフトの使い方がまだ全然わからなくて、あーだこーだと四苦八苦。

今のところ肌色平次はなかなか実現できませんねえ(苦笑)

しばらくちまちま書いているかも知れません。その時は追記にのせていくのでよかったら見てやって下さい。

 

拍手[3回]

2011/04/21 (Thu)

『ひろいせかいのちいさなあさ、たしかなものにつつまれたひび』

耳に残る歌声。歌っていたのは、隣に住んでいた主治医。

珍しいこともあるものだと、肘をつきながら窓辺で聞いた。

5月の風が楡の枝を揺らして、澄んだ空の色がどこまでも青い。とろりと眠気を呼ぶそんな午後、瞼が半分以上も瞳を覆い、新一はこっくりと船を漕いでいた。だからその歌の続きは夢の中、ぼんやりと遠く聞いていたために殆ど覚えてはいなかった。

主のいない部屋でみつけたCDを何気なくデッキにかけると、やはりあの時の歌が流れて、新一は突如その時間へと戻る。

彼女は何を思っていたか、正確なところを知ることはできない。けれどその脳裏には、自分が力不足のために死んだ女性が浮かんでいたはずだろう。

ヒトは万能になれないのだと、知っていたのに。

だからこそこの手で、心ごと守りきろうと決めていたのに。

握りしめた拳は行き場を無くして、振り上げることも叩きつけることもできないで空を彷徨い、声なき慟哭を胸に抱えたまま立ちつくす。

 

『そんな居場所は遠い記憶 私は此処でで笑顔を試す あなたのいない乾いた歩道で』

主を亡くした空虚な部屋に、歌は流れ続けた。

 

 

歌詞は「すてきなあたしの夢」ajico。私的哀ちゃんのイメージ。

拍手[3回]

2011/04/17 (Sun)

今日のアニメ見ました?見たよね!!!かっこよかった平次ー!

感想。たたんで置きます。うざいほど長いです。

拍手[9回]

2011/04/16 (Sat)

鬼平を涙を飲んであきらめたけど、やっぱり観てよかったよ!!!面白かったー!コナン映画でもかなーり面白い部類にはいるんじゃないでしょうか。冷静に考えるとレンタルできるコナンを録画せずに鬼平録画すればよかったんだろうけど、やはり平次のことを考えるとついね・・・。ああ、鬼平・・・・・・私、一時期着信音鬼平なくらい好きなのに・・・・・・・。でも平次には勝てないのですね。

さて感想です。長くなったのでたたんどきます。

拍手[3回]

2011/04/14 (Thu)

「なんか、それ止めろよ。」

「なん?」

「・・・・・・・」

「変なやっちゃなー?黙っとったらわからんやろ?」

「うるせえ、そっちこそ黙れつってんだ!!」

シンイチ、って名前をお前の声で聞くと、なんか無性に恥ずかしいんだよ!!!!

真っ赤になって俯いて、コナンは心の中で叫んだ。

拍手[7回]

2011/04/09 (Sat)

掌に収まるコンパクトな機械が発する点滅する光。

メールの受信を知らせるそれは、いつもの軽口の応酬の始まり。

相手から来るメッセージの内容は事件を中心にしたものが多かったが、時にプライベートでのつきあいをそれとなく散りばめており、自分と同じように女性を中心にさまざまなつきあいを容易に想像させるものも少なくなかった。

旅行先のホテルで事件に巻き込まれたこと、一緒にいったのはどうやら幼馴染以外の女だろうこと、

デートと称した買出中に遭遇した事件や、試合の差し入れのこととか、

胸の大きさをごまかされて最新の下着は詐欺だと怒っていたりとか、

そうしたことに冷たい一瞥をくれてやるような返信を送れば、冷たいなあと何故か嬉しそうに笑う声で電話がくる。

何度も、何度も、そうしたやりとりを繰り返す。

この間は剣道部に新しく入ったマネージャーのこと、かわいい子で巨乳なんだってさ。

 

『かわいい子でなんと巨乳!今度はホンマもんの胸やで!』

『事件の資料収集中。連絡控えろ。』

『どんな事件や!なんかあったら協力すんで!遠慮なく連絡しいや~』

 

そういえば最初は事件のことばかりだったのに、最近は大学生活で幼馴染と離れたためか女絡みのメールも増えた。

だから俺も時折返信にそうとも受け取れるようなメールを返す。

『今夜は人と会う約束になっている。』

『大切なクライアントと会っている。しばらく電話控えたし。』

 

こうした連絡をいれた時は、大阪からは連絡がしばらく途絶える。今夜もそう。いつもみたいにバカなメールが届いたから、今夜は話したくなくて誤解されるような嘘を吐く。

『人と会っている。また連絡する。』

 

自室のベッドに腰掛けたまま、小さな液晶画面に浮かぶ送信動画を見送る。携帯電話の電源を落としてしまいたい衝動に駆られたが、万一連絡された場合に不審に思われることを恐れてかろうじて指を止める。

下唇の内側を血の味がするほど噛んで、そしてふうっと笑顔を作るとぎゅうと電話を握り締めた。

溜息だって殺してみせる。好きだなんて、絶対に気づかれないようにするから。

少しでもお前が、何かを感じて心を重くしたりなんかしないように、俺はいくらでも嘘を重ねる。

ずっと傍にいられなくてもいい。

ただお前が、笑ってくれていたら、それで。

拍手[7回]

2011/04/06 (Wed)

何故かパチリと目が覚めて、ベッドの中で身動ぎする。眠る前にはすぐ傍にあった温かさが今はない。

寒さを感じたために起きたのかと分析しつつ、掛布団を肩に羽織ったまま のそりと上半身を起こした。

「・・・あのバカ、また人の意識がトぶまでヤりやがって・・・」

文句を呟くも肝心の相手はそこにはいない。

またあそこか。

ふうっとひとつ溜息を吐いて、新一は散らばる服へと手を伸ばして手早くその肌を隠した。

そっと、音を立てぬように部屋の扉を開ける。気づかれぬように電気もつけない。

廊下は静まり返り、わずかに階段下からかすかに人の気配がするだけ。

忍び足のまま階段を下る。リビングは暗闇だ。続く奥のキッチンにわずかな光。近づくとカコン、カタンと小さな金属音が聞こえる。同時にシュウ―ッという空気の流れるような音。

新一は足を進めてキッチンを覗き見る。

音の正体はステンレスのドリップポットを火に掛けている音だ。もうまもなく沸くのだろう、蛇が鎌首を持ち上げたような形の細い注ぎ口から蒸気が立ち上っている。

そのままキッチンへと足を踏み入れた新一は、一瞬立ち止まる。

ほのかな橙色をしたキッチンの手元灯が、まるで小劇場の照明のように暗がりに立つ男を浮かび上がらせていた。下半身はスウェットを身につけているが上半身は裸のまま、左手をポケットに突っ込んで軽く前かがみに立っている。褐色の肌をライトの光が柔らかく滑る。

平次だ。

ドリップポットの下、小さな青い炎をじっと見つめている。

その表情は音のない海のよう。漣のような笑みを口元に浮かべているが、それはゆうらりと深い底から溢れる何かを湛えている。

黒い瞳は動かず、ただただ炎だけを映す。

新一は声をかけない。当然、平次も新一が傍にいることには気づいているだろうが、彼も新一へと声を掛ける気配はない。互いは、今、同じ場所に立ちながら異なる孤独に包まり息を詰める。

水が熱で踊る音だけが響く。

カ、カ、カ、と途切れなくスタッカートを刻むポットの底から鳴る金属音に、平次がようやく動いた。カチリ、とガスを止めると、ポットをガスコンロから持ち上げる。

踵を返した先にはテーブルがある。その上に置かれたコーヒーサーバー、配置されたネルの中には二人分のコーヒー、そして大き目のマグカップが二つ。シュン、シュン、と熱した金属に湯が触る音がして、ポットの細口から白い蒸気とともに柔らかいネルに眠る挽いたばかりのコーヒーへと湯が注がれる。

ふわりと香るマンダリン。

眠れなくなるだろ、とか、片付けはてめえがしろよ、とか、喉元まででかかっている文句もあるが、とりあえずその香りに免じて新一は渡されたカップを口元へ運ぶ。

こくりと飲んだその刹那、彼の視界はカップで閉ざされる。

だから、平次がその一瞬だけ浮かべた、湛えられていたものが揺らぎでほろりと零れたような透明な笑みを見ることはできなかった。

 

拍手[12回]

2011/02/05 (Sat)

bitter 続きです。
前回まではこちら。
bitter bitter2 bitter3 bitter4 bitter5 bitter6 bitter7 bitter8 bitter9  bitter 10

・・・終わるだろうか。がんばるぞ!

 


踏み出した足の裏に、浴室の床下の空洞を意識させる軽さとは異なる重々しい絨毯の感触。

ところどころに広がる色の異なりは、彼がろくに拭かず出歩いた後を示す。

浴室の扉から点々と続く足跡の先、クローゼットの前には大きな染み。

おそらくはそこで体を拭い、服を脱いだのだろう。急いだのか、水の行方を目で探れば雫はベッドの上にまで飛んでいた。

そしてベッドの上に置かれた着替えに気づく。

ビニールの包装に入っている下着、黒い綿地の服と茶系のダークカラーのパンツ。

おそらくベッドへと寝かせる前に、邪魔になるだろうと財布や携帯電話は服から抜き取ったのだろう。サイドテーブルに並べて置かれていた。

時計も外されている。おかげでコナンの頃から愛用している麻酔銃は水難を逃れたようだ。

両手でバスローブの袷を解き、するりと脚元へ落とす。平次の用意した着替えを手にすると、ピリっと音を立ててビニールの包装を取った。このホテルで購入したものではないらしい、本当にクセになっていたのか。
だとすれば、あいつの中にはコナンだった頃の俺もまだ存在しているのか。

何度目かわからない溜息を一つ。

すぐに気を取り直して下着に脚を通し、今度は平次の着替えであったろう長袖のシャツを頭から被る。
すべて着替え終えるとにわかに疲れを感じて、新一はベッドにどしりと座り込んだ。
ぐったりと前屈みになって、片手で頭を抱える。ふと足下を見れば、履いたパンツの裾は踵あたりにあった。
思いついて己の肩を手で撫でる。シャツの肩幅も少し余裕はあるもののサイズはぴったりで、そういえば服は同じサイズだったんだと、今更ながらに思い出した。

「・・・馬鹿じゃねえの。」

同じ体躯、同じ性。

「ほんと、馬鹿じゃねえの?」

そういった趣向でないことは、それなりのつきあいで知っている。それなのに男を好きになるなんて。

「・・・どうすんだよ・・・。」

両手で顔を覆う。

声が震えている理由なんて、今は知りたくない。

より深くうなだれた拍子に、濡れた髪がひたりと頬に張り付く。

かきあげようと顔から掌を離れさせて、ふと自分の手首に目が行った。褐色の腕が掴んだそこには、跡など残っているはずもない。
けれど意識したとたん、まるでまだ掴まれているかのように、じんと熱をもって痺れた。
一瞬、せりあがるものがある。

熱を感じる場所をもう片方の手で覆い、隠すように胸へと押し付けた。

「くそっ、消えろよ…!」

ぎゅうと強く、抱きしめるように。

 

拍手[10回]

2011/01/31 (Mon)

「ちょっと気障だったかな・・・」

”探偵キッド”なんて、カードを残して写真を撮るなんて。

でも泣いている蘭を少しでも慰めたかったのだ、それが自己欺瞞でも何でも。

閉めた扉にもたれて、コナンはふっと曖昧に笑う。その場を離れようと扉から身を起こしたその時。

「昭和ね。」

「灰原!?」

突然横からかけられた声に、心臓が跳ね上がるくらい驚く。

「昭和だな。」

「昭和ですね。」

「コナンくん、ちょっとあれは・・・」

見れば何故か少年探偵団が全員集合。うんうんと頷きながら呟く彼らは、どうやら一連の自分の行動を見ていたようだ。

「な、ななななな・・・!!!!」

羞恥で舌が回らない。真っ赤になった顔で、半目でこちらをしらーっと見つめる全員を指さす。

その時、コナンの背後で扉がキイ、と開いた。蘭だ。手には先程置いたカード。

「まあまあ皆、コナンくんを責めないで。新一に影響を受けたんなら仕方ないわ。」

ね?と小首をかしげて、にっこりと笑顔。

コナンが固まる。蘭さんは優しいですねえ、などと光彦がフォローしたのを契機に脱兎のごとくコナンは駈けだした。

「ああ、コナンくん!?」

「・・・見事なトドメだわね。」

蘭たちの慌てぶりをよそに、泣きながら走り去るコナンを腕組みしながら見つめる哀の目には、

”おもしろかった”という色が、ありありと浮かんでいた。

拍手[5回]

2011/01/29 (Sat)

「これ餞別や。割れ物だから気いつけて持って行って。」

「・・・今から引っ越しのために新幹線乗る男に、普通割れ物手渡しするか?」

「なんや、わざわざ貴重な時間さいて用意したったんに。何か文句でもあるんかい。」

「オオアリや。お前はもうちっと時と場所をわきまええっちゅうの。」

「なんやて!あんたはヒトに感謝するっちゅう気持ちが足らんわ!まずはお礼言うんが筋やろ!」

「へえへえ。すんませんです~。」

ざわめきの中、ひときわ大きな声でのやりとりに周囲の視線が一時集まる。慌てて口を閉じ、じろりと目の前の男を睨み付けると 肩を竦めるだけ。

乗る新幹線の時間を他の人には教えないで。小さなわがままを聞き届けてくれた優しい人。

大阪駅の新幹線のホームには、大きな荷物を持った人が幾人も途切れなく行き来する。春休みということもあってか、同年代の学生のグループが多く出発を待っていた。目の前の男と同じく、新生活を始めるためなのか、家族に見送られている人も見かける。

傍にいた小さな子供を抱えた家族連れは、おそらく父親が単身赴任をするのか。新幹線を見ておおはしゃぎする子供を抱きかかえながらつかの間の別れを惜しんでいた。

ええやん、あんたらは。大事な人はまた戻ってくるんやろ?

・・・こいつとちごうて。 

苦い気持ちが湧き上がる。ぎゅっと拳を握りしめて、思わず俯いた自分に、頭上から声がかかる。

「まあ、ありがとな。大事にすんわ。」

顔を上げると、優しく口元を綻ばせた笑顔。最近見せるようになったその仕草は、自分を置いて大人になってしまったことを示しているようで、あまり好きじゃない。

いじわるしたくなるわ。小さな溜息を隠して言葉を紡ぐ。

「中身な、グラスや。ペアの。向こうにいるあんたの”大事なヒト”と飲んだらええわ。」

「っ、」

平次が口を開こうとした瞬間、新幹線の発車時刻を知らせる放送のベルが鳴り会話は中断する。

東京行きもうまもなく出発します、お乗りの方は・・・そんな聞き慣れたアナウンスも今は耳に痛い。以前なら乗る電車は同じだったのに。隣の席には私がいたのに。

ふっと、一つ小さく息をついて、地面に置いていた学生時代から愛用のダッフルバッグのショルダーストラップを掴んで持ち上げる。片手に渡した紙袋を持ったまま、そのストラップをひょいと肩にかけると

「ほな、俺行くわ。」

「元気でな。」

「腹出して寝て風邪ひくなや~。」

「いつの頃の話してんねん!もう、子供やないんやで!」

怒鳴り声を片手でうけとめて、彼は開いたままの入り口に脚をかける。

一歩、二歩。

ああ、とうとう乗り込んでしまった。 

座席を探して、車両の中を進んでいく。同じ方向へと私も足を進めた。窓の隙間の壁、時折見えなくなる姿。

結局追いつけなかった横顔。歩みを進める度に渡した紙袋が腕の下で揺れていた。

買った時のことが、脳裏によぎる。

 

「かわいい~。」

「ええなあ、このグラス。」

甲高い声に振り返れば同年代の女の子が二人、何かを指し示しながら騒いでいた。

「あーでも、このメーカーのすごく割れやすいんだって。」

「へえ。」

「お姉ちゃんが買ったんだけど、ちょお置いただけですぐ割れて困ったって。特殊ガラスだから、割れたかけらが粉々になってしまうらしいで?」

「あ、あれもええなあ。」

話していた子たちは、次に何かを見つけてその場所を移動した。何を見ていたのかと覗き込めば、そこには小さなグラスが並んでいる。

丸いフォルムのガラスを外側に、内側にすとんとストレートの窪みがある二重構造のグラス。まるで透明な月の中に深いクレーターが掘られたようなグラスで、思わずかわいいと呟いてしまう。端においてあるポップの説明を読むと、耐熱ガラスでできているため、冷水もお湯もどちらでも使えるという。手に取ると思ったよりも軽い感触で、薄いガラスなのだとわかった。

きれいで、はかない。

写り込んだ自分の顔が、溜息で曇った。

 

思いだした出来事を遮るように唐突にベルが鳴る。

出発のベルが。

窓越し、かわらない笑顔で出発する。あんなにも水があわないと行くたびに眉をしかめていた東へと。

動き出す新幹線。思わず追いかけて走った。

彼が座席から立ち上がるのが見えた。窓に掌をつけて、私に何か語りかけている。

泣きたくない。だけど、たまらず零れた滴に平次の眉が下がる。

大好きだった。すごく好きだったの。言いたかった。言えなかった。大好き。

歯を食いしばっていなければ、未練たらしく言葉が溢れてしまいそう。

速度を上げた新幹線がホームから遠ざかっていく。肩で息をしながら、ぼろぼろと零れる涙を拭うことも忘れてそれを見ていた。もう走る道もないホームの端で。

・・・せめて さよならと、言えたらよかった。

でもできないまま、ただ少しの皮肉と祝福と、そして告げられなかった想いを込めてグラスだけを贈る。

 

日常使いのそのグラスは、いつか、割れるだろう。

ペアで贈ったのは、彼がきっと大切に思っている人間と飲むであろうことを予想して。

ああ、早く割れてしまえばいい。

砕けたグラスの破片が星のように煌めいて、その瞬間はきっと美しい。

ただのグラスのままでしか、それがあの人の記憶に残らないとしても、

私の中の想いも早く砕けて、消えてしまうように願うから。

拍手[11回]

2011/01/26 (Wed)

少年は小さなリュック一つを背に、玄関の鍵をかけたところだった。

門の開く軋んだ金属音に振り返った彼は、そこに立つ自分を見て苦笑した。心底、困ったように。

「悪いな、でかけるところなんだ。」

「・・・どこ行くん?」

予想していたよりも低い声が出て、平次は自分でも驚く。喉がひりつくような気がした。

「ちょっとな、ヤボ用。」

「いつ帰る?」

「・・・戻ったら連絡するよ。」 

会話を進めるにつれ、平次の耳に警鐘が鳴り響く。

平次がその日、東京に向かったのはひどく胸騒ぎがしたからだ。

前日の新聞の片隅に掲載された小さな記事。東都を中心にあちこちで子供への不審者からの声かけが多発しているというニュース。それだけならばさして気にとめることもなかっただろうが、狙われたのはいずれも”髪が明るい赤毛”の女の子。数少ない目撃情報では”黒い服”の男が目撃されていて、警察では同一人物による広範囲の連続事件として取り扱われているということ。

 大滝を通じて少し調べてもらったものの、一課が携わるようなヤマではないということで詳しい情報は得られなかった。

嫌な感じがした。暗い闇に彼が飲み込まれるようなソレ。悪夢を見た翌日のような汗が、背中に滴る。

じゃあな、と軽い口調で会話を切り、コナンである新一は足早にその場を離れようとする。

玄関の扉の前にいた体が、門の傍に立つ平次へと近づいてくる。近づくごとにピリピリと空気が肌に刺さるよう。

無意識に拳を握りしめ、ともすれば殴りかかってしまいそうな苛つきを鎮めるべく、平次は意図してゆっくりと呼吸する。

その静かな緊張を断ち切る小さなブレーキ音が耳に届いた。同時にコナンから聞こえた舌打ち。

ちらと平次は視線を音のした方向へと向けた。開け放たれたままの門の前に、一台の車が停まっている。運転席に座る男には見覚えがあった。

思わず息を呑んだ。すでに平次の苛つきは怒りへと変わっており、掴みかからんばかりの勢いでコナンへと体ごと向き合う。

「お前、まさか。」

 「本当、こういうタイミングのよさには脱帽モンだよ。」

そう言って、新一は、見た目の年齢とは裏腹にシニカルに笑う。

 「・・・やっぱり、例の組織か。」

コナンは黙って肩をすくめる。否定はない。

「工藤!」

叫ぶように名前を呼ぶ。

まるでその声を噛みしめるようにコナンはゆっくりと目を閉じた。そして瞼をゆるゆると開きながら、平次の視線を真正面から受け止める。そこには何の表情も読み取れない、能面のような白皙。

敷かれた石を、音を立てて踏みつけながら平次はコナンへと詰め寄った。

いつもならば話す際にはしゃがみ込むだろう位置まで来ても、平次は立ったままだ。背後にも隙を見せぬよう指先まで意識を集中している。

工藤、ともう一度名前を呼んで、それでも変わらない彼の表情に焦りをいっそう強くしながら、平次は大阪を出るときにはすでに固まっていた決意を口にする。

「行くな、とは言わん。俺も連れて行け。」

「駄目だ。」

予測していた言葉だったのだろう、ぴしゃりとコナンが平次の言葉をはね付ける。

「何でや!俺はお前の手足になる言うたやろ!連れて行け、必ずお前の助けになる。」

「・・・駄目だよ、服部。」

 烈しく咆哮する自分とは対照的に、静かに溜息をこぼしながら諭す声音。なおも言い募ろうとする平次に、からりと乾いた一言が降る。

 

「だってお前、俺のために死ねるじゃねえか。」

 

すとんと、その言葉は平次の胸に落ちた。納得、というよりも自明の理で あると無意識に認識できてしまったのかもしれない。言葉の重みが平次の動きを止めた。

「それじゃダメだ。俺は、俺のために死ねない人間としか一緒には行けない。」

そう言って、立ちつくす平次の横を歩調を変えぬままするりと抜けていこうとする。

反射的にその腕を掴んで引き寄せた。軽い体は容易く地面を離れ、平次の足元まで引きずられる。小さな体だということを忘れる程、彼は今、持つ全ての感覚が工藤新一のままであった。瞳にだけでなく、彼の17歳の気迫が溢れている。それが何を意味するのか、平次は恐れた。

「それでもついていく。」

睨みつけ、平次はギリギリと手の力を強めていく。小学生の体であろうと関係なかった。ほどく隙を与えるものかと容赦なく握り締めるが、痛むだろう手首をものともせず、コナンはただ穏やかに笑う。

「・・・バーロぅ。」

 パシュ、と軽い空気音。しまったと思う時にはもう遅く、大腿にちくりと痛みが走る。

手首を押さえていたのに、そう思いながら見ればコナンは手首に時計型麻酔銃を巻きなおしているところだった。片手で操作できるよう、前もって外していたらしい。

おそらくは、自分がこの家の門に立った時に。

ぐらりと体が揺れて、視界が上下逆転する。即効性の睡眠薬、効き目を知るのは二度目。あれ以来けして自分に使うことはなかった麻酔銃を打ち込まれたことで、彼が組織へと向かうことは明白。

「くど、う」

渾身の意思を持って手を伸ばす。震えながらゆっくりと伸びた掌は、コナンの細い足首を掴んだ。

けれどそこまで。掴んだ形の掌は解け、地面へずるりとくずれていく。視界にグラデーションの白い闇。

駄目だ。今、意識を失っては。

舌を噛もうとするがうまく力が入らず、叫ぶこともできないまま体全部が弛緩していく。

 

「・・・服部。俺は、・・・・・・・」

囁きとともに唇に触れる感触が何かなんてわからない。

ただ離れる刹那、彼の表情がとても綺麗に微笑んだことだけが――――やけに、鮮明に。

 

拍手[15回]

2011/01/22 (Sat)

bitter久々の更新です。短いですが。

とりあえず次のバレンタインまでに終わらせることを宣言。・・・一年がかり・・・。すみません。

bitter 続きです。
前回まではこちら。
bitter bitter2 bitter3 bitter4 bitter5 bitter6 bitter7 bitter8 bitter9
 

 

 

 

心底参ったといわんばかりの溜息、子供扱いのようなそれに思わず新一はむっとする。
「…っんだよ!」
「自覚ないのが怖い。…ほんま、怖いわ。」
「てめっ…」
罵声を最後まで浴びせることはできなかった。突然新一は抱き上げられてうろたえる。
「は、服部?」
ひっくり返った新一の声音に、平次は苦笑しつつ軽々とその体を運んだ。
背中と膝の下に二本の腕、耳元に彼の心臓。目を白黒させて軽いパニックに陥った新一は、暴れてその腕から逃げようというところまで考えがいかない。
時間にすればほんの数秒、けれど新一には長く感じられた。平次は数歩進んだだけで、新一はゆっくりと腕から降ろされた。
そこは浴槽の中、淡い肌色の塀が目の高さに現れたよう。
状況が飲み込めないままの新一が平次を見上げた途端、ざあっと水音が勢いよく浴室内に響いた。
「頭、ちょっと前に出し。」
言われた意味がわからず、きょとんと平次を見上げていると、平次が新一の後頭部に手を添えてやや前に倒す。
湯の温度を掌で確認した平次が、新一の肩口にお湯がかかるようシャワーヘッドを壁に固定した。
少し熱めのお湯が肩をすべり、体中を暖めていく。自分で自覚していた以上に体は冷えていたようだ。
体が一度ぶるりと大きく震える。反射的に膝を抱えた。
「ええか、絶対ぬくまってから出るんやで?」
「…子供じゃねえよ。」
顔も向けぬまま憮然と呟く。聞こえなかったはずはないだろうに、平然とスルーして平次は次の予定を口にする。
「濡れた服は、しばらくしたらキーパーさんに来てもらってクリーニングしといてもらえるよう手配しとく。今夜だけは俺のん使てくれ。」
「・・・・・・」
「着替え、ベッドの上に置いとく。安心せえ、下着はさらっぴんや。」
誰かさんのおかげで新品で予備を持ち歩くのがクセになってな、と笑いながら平次は備え付けの棚にあったフェイスタオルを一枚だけ手にした。
顔と髪を乱雑に拭い、そのままタオルを首に下げ、浴室のドアノブに手をかけながら振り返る。
眉間に小さく皺を寄せて、眉を下げて困ったように笑うのは何時頃からだったろう。
見慣れたその仕種に、新一は平次の苦しみの長さを知る。

「ええな。絶対胸まで湯がたまるまでは出てきたらあかんよ。」
きちんと笑えていると思っているのだろうか、声だけは以前のようにかろやかにして告げると、
浴室を濡れたまま出た男はパタンと音をたてて扉を閉めた。
「・・・てめえは、どうすんだよ。」
小さく呟いた問いに応えはなく、新一はただうるさいほどの水音の中で閉じられた扉を見つめるだけだ。

 ぐるぐると回る思考は、結局のところ堂々巡り。
何の結論も出ないまま、ふと気づけば膝にのせている顎の所まで湯が上り体から寒気も抜けている。
慌てて手を伸ばし、蛇口を閉めてお湯を止めた。
暖まったことで幾分ふらふらとするが、浴室に備え付けられた手摺りを頼りにのっそりと立ち上がる。
酔いも重なってぐらりと体が傾いだものの、ベッドで起きた時よりは楽になった体、ふうと大きく息をついて状態を立て直す。
浴槽の湯の中で立ったまま、のろのろと服を脱ぎ始めた。指先でひとつずつボタンを外していく。
濡れた布が肌に張り付いて気持ち悪い。べしゃりと音をたてて床に脱いだシャツを落とした。
不安定な足場ではうまく下を脱ぐことは難しいだろうと、湯からあがり浴槽のへりに腰掛けてまずベルトを外す。
シャツの上に次々とクリーニングされる服の山ができたのを横目に、備え付けのバスローブで体を覆った。
濡れた髪から滴る雫もそのままに、浴室から出ようと扉に向かう。
ふと横を見れば壁に掛けられた鏡の中、ひどく幼い表情の自分と目があった。

(何で、そんな顔してんだよ。)

不安気に揺れる黒い瞳が自分へと問う。

(・・・そうだ。選択したのは自分だ。)

今度は扉へと視線を向けた。あの薄い壁の向こう、何が待ち受けているのか。平次は、いるのか。
あの口ぶりではおそらく部屋を出ているだろうが、もしいたとしたらどんな言葉をかけられるのか。

唇の裏側を歯で小さく噛んで、思い切って扉を開けた。 

拍手[10回]

2011/01/15 (Sat)

「この後すぐ、名探偵コナン!」のセリフがある時のイラスト、
いつも平次にみとれて未だに誰が描かれているかわからない。
……というか、何人いるかもわからない。
私だけかしら(-.-;)

拍手[3回]

2011/01/12 (Wed)

「なあ、工藤君。工藤君は事件で嫌なことあった時、どないしてるの?」

「え?」

またも事件にそろって巻き込まれた帰り道、大阪へと向かう新幹線を待つ間駅のフードコートに立ち寄った。

注文を終え、席について食事ができあがるのを待つばかり。ちょうどトイレへと席をたった平次の背中を見送って、和葉は思い切って話の口火を切った。

父親について探偵事務所へと帰宅した蘭にも、新一に相談してみたらとアドバイスされたばかりだ。

確かに平次と同じ学生探偵の彼ならと、期待をこめて和葉は目の前の青年を見る。

「平次、この間の事件から元気ないねん。なんや、話したくないって言うてはったから・・・」

新一は心当たりがあったらしく、ああ、と頷いてから会話の水を向けるべくこちらへと視線を返した。

「あの、たまにあんねん。事件とかでなんや嫌なもん見た時とか、そういうときにちょっとナーバスになるっちゅーか・・・。」

 指先で上着の裾を弄びながら、いいにくそうに和葉は話を続けた。

 「工藤君なら平次と同じ立場やろ?もしかして、平次が元気になる方法知らんかなーと思って・・・。」

うーんと一つ唸ると、新一は胸の前で腕を組んだ。

「俺と服部は似てないからな。参考にはならないと思うけど。」

そう言われて、一瞬和葉は目を丸くする。端から見てるとそっくりなのって、本人は自覚ないもんなんやなー。蘭ちゃんの言ってたとおりや、なんて思っていることに相手は気づかないまま話し出す。

「俺の場合、気持ちが落ち込むようなシチュエーションに陥っても言葉が追いついていくんだ。」

予想外の答えに、和葉は一瞬きょとんとする。

「どういいうこと?」

「つまり・・・、その、例えば誰かが自分にとってはとうてい理解しがたい行動をしたとするだろう?」

「うん。」

「そうするとその理由を頭の中で考えていくんだ。その考えが脳内で言葉になって、解析文書として巡る。」

新一は 人差し指を立てて、自身のこめかみをとんとんとこづく。

「そうしているうちに、理解はできないままであるにしても何らかの結論が自分の中に形作られる。不安や悲しみに溺れる一番の要因は、その理由を己の中で咀嚼できないことにあるというのが俺の考えなんだ。」

 「・・・よう、わからんけど。とりあえず、平次にはむかんかもしれんなあ。」

 「参考にはならないだろ?あいつの場合、頭の中で言葉は渦巻いているけど、それ以上に感情が強いから。」

――― あいつのいいとこ、だけどな。

そう呟いた工藤新一の顔は、とても優しい表情をしていた。

 その表情に、居心地の悪さを感じたのは何故だろう。胸を爪の先で引っ掻かれたようなもどかしさ。傷口から少しの悔しさが滲んでくるみたい。

ほとんど衝動的に、そしてなにより納得がまだいかなくて、和葉は口を開いた。

「けど、ほんまに感情を言葉で抑えられるもんなん?工藤くんかて、なんやあるやろ?」

 何が?と軽く小首をかしげる新一に、ずいとつめよりたたみかける。

「言葉が追いつかんくらい、感情が強く出ちゃうこと。」

「そんなの・・・」

言葉が途切れた次の瞬間、新一の顔が真っ赤に染まって動きが止まった。

「工藤くん?」

突然のストップモーションとその表情に、訝しく思った和葉が新一の顔をのぞき込む。

ちょうどその時、手洗いに立っていた平次が新一の背後から現れた。二人の距離の近さに一瞬むっとした表情を浮かべたものの新一の様子がどことなくおかしい事に気づいて、あえていつも通りに。けれどちょっと驚かそうと気配を消して声をかけた。

「工藤、どないした?」

「うわあああああっ!」

いきなり背中に感じた気配と声に、新一は意味を成さない叫び声をあげる。振り返りざまに平次の臑に蹴りをかまして彼を痛みで蹲らせると、「ちくしょうっ、てめえなんてっ」と小さく吐き捨てた。

 あっけにとられる和葉と、まったく状況のわからないままの平次を取り残して、赤い顔のまま新一はその場から走り去ったのだった。

 

拍手[13回]

こばへの連絡先
最新CM
[02/03 Agipuiv]
[01/30 Awobunup]
[12/21 pigAntina]
ブログ内検索
プロフィール
HN:
こば
性別:
女性
自己紹介:
二児の母。2009年に唐突に平新に。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
忍者ブログ [PR]