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2026/07/03 (Fri)
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2011/01/10 (Mon)

新年最初はH。初物、ということで、初めて、をテーマにしております♪

いつもより濃度をこくしておりますが。まあ、しょせん、うちのレベルですので。

 

大丈夫な方は、つづきはこちら、からどうぞ!

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2011/01/08 (Sat)
新しいエンディングすてき!
視線の先にいるのは平次だよね!
うわあ、タギる!か、書かなきゃ!

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2010/12/18 (Sat)

「あなたが落としたのは、知人の服部平次ですか?親友の服部平次ですか?それとも・・・」

小さな泉にどぼんというベタな水音、そのすぐ後に沸いて出た自称”泉の精霊”

俺と似た顔でニヤニヤと笑う白装束の男は、ご丁寧に3人の服部平次を水上に並べている。

侍らせてるみたいで腹がたつ。むかついた気持ちを隠さないままずっきらぼうに答えをやれば、鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔でぽかんと口を開けやがった。

いい気味だ。

少し溜飲が下がると同時に、周囲の景色が揺らいで溶けていくように消えていった。

同時に響く、優しい声。

「・・・どう、工藤、起きろて、」

「・・・・ふん、だろーと思ったぜ。」

「へ?」

案の定夢だった。

ベッドに沈んだ体をのろのろと動かして、上半身だけ起き上がると、自称泉の精霊と同じようにぽかんとした顔をさらす色黒男の頭を前触れもなく拳をグーにして殴る。

「何すんねん!」

「簡単に捕まってんじゃねーぞ。バーロゥ」

訳がわからないと目を白黒させる男の顔を見ていたら、猛烈におかしくなって笑いが止まらなくなった。

「工藤?どないしたんや?なあ、」

心配したのだろう、熱でも測ろうというのか自分へと伸ばされた手を掴んで、そのまま唇を落とす。

ぴたりと動きを止めた平次に、新一はまたくすくすと笑いを零した。

 夢の中で告げた答えをその掌の中へ独白する。

「・・・全部 俺のに決まってんだろ。」

そう、服部平次は、どんな形での存在でも。

 

平次の手が新一の頬へ柔らかく触れ、ふと目線をあげると彼の顔が近づいてくるところだった。

ゆっくりと唇が重なる。微睡みの幸福感の中、新一は目を閉じた。

 

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2010/12/16 (Thu)

「あいつ、誰なんですか?」

子供のくせに、と言葉にはしないまでも態度に示している若い刑事の声を驚いた表情で見るベテランの刑事たち数人が囲んだ。無精ひげを伸ばした顔を見合わせると、こめかみに傷を持つ大柄な男がたまりかねたように噴出す。

「まあ、最初は誰もがそういう反応やな。」

「俺もそうやったわ。懐かしいなあー。」

「そうか、高橋、お前今日が関西の現場初めてやったなー。」

周囲が和やかに話し出すのを、高橋と呼ばれた青年は憮然とした表情をなお深くする。

彼の視線の先には学生服を着た色黒の少年が一人、警察のテリトリーである事件現場を我が物顔で占拠している様子が伺えた。

何より腹立たしいのは、検視官や他の警察官たちもそれを是として受け入れている態度に他ならない。

自分が刑事になるまでに一体どれほど苦労をしてきたと思うのだ。それを学生、つまりは子供だ。そんなのが探偵気取りで現場に立ち入っている。

東京での研修先でも、下手に現場のものに手を触れようものなら怒鳴り声の洗礼を受けたものだ。

「あんな子供に舐められちゃ大阪府警の名折れじゃないですか!」

東京で大学を出たのにわざわざ大阪へと出てきたのは、尊敬する人のもとで仕事がしたかったからだ。ちょうど東京へと出向中のあの人が自分を人質とした犯人を目の前で捕縛する様は、そりゃあもうかっこよかった。鞄に入っていた進路希望書に、でっかく”刑事”と書き込んで単純だと笑われたのだって気にならなかった程。

そんな自分の憤りにも、にやにやと笑うだけで何も言わない周囲に対しての腹立ちも膨れ、それならば俺がと子供にお灸をすえる気持ちで大股で踏み出した途端。

「あー、あんた、そこ歩かんといて!」

しかし突然の大声にびくっと体をすくませて、片足を高く上げたまま動きを止めてしまった。その持ち上げたままの足をがしっと少年に掴まれる。

「やっぱ、ここや。横山さん、こっちこっち。」

鑑識の制服を着た初老の男が一人、少年の声で駆け寄ってくる。その人物の顔を見て目を丸くした。

(あの人!鬼の鑑識翁の横山!!なんでこいつの一声で走ってくるの?前にあの人を顎で使おうとした検察のキャリアを殴って大騒ぎになったって・・・)

あまりのことに固まったままの体で事態を見送ると、ちょうど足を踏み降ろそうとしたその場所のカーペットへ鑑識翁が張り付くようにして目を近づける。すぐに顔を上げると、自分には目もくれず少年に対してにかっと一の悪い笑みを浮かべた。

「おう、これやな。流石は平ちゃんや。」

「ぱっと見てわかってくれるんも横山さんだけやで?流石は鬼爺・・・」

 一言余分じゃ!と、拳で小突かれた少年がいきなり手を離したため、硬直していた体がバランスを崩して尻餅をつく。あ、すまんなと一言簡単に謝られて、ここぞよばかりに反撃をしようと、あえて余裕たっぷりに立ち上がる。膝の土を払う真似をして、口を開こうと前を見ればすでにその男は姿を消している。

代わりに横山翁がじろりと睨む姿に思わず後ずさってしまい、完全に怒鳴るタイミングを失ってしまった。それを見ていた周囲の人間から失笑が漏れるのに気づいて余計に頭に血が上る。

探し出して一言言わないと気が済まない、と部屋を飛び出した少年の後を追う。あちこちを見渡して小走りに駆け出せばわずかばかり玄関の扉が開いており、ゆっくりと自重によって閉じられていくところだった。そこか!と扉を勢いよくあけて首を大きく振り見回すと、庭に植えられた柊ががさりと音を立てて揺れる。

すでに夜も更けている。明るい室内から一転して暗闇となった視界を、目をしかめつつ徐々に夜に慣れさせていくと、音のした木の根元に、探し求めた姿を見つける。彼は膝を土で汚しながら庭に這い、何かを探しているようだった。

ふいにぴたりと動きを止め、次にポケットからハンカチを取り出した。そして何かをハンカチを使ってそっと拾い上げている。手の中の何かをじっと見つめ、苦々しく舌打ちをする。そしてそれをそのままハンカチごと学生服のポケットへとしまい込んだ。

( 証拠隠匿!現行犯じゃねえか!よしっ。)

その腕をひねりあげ、説教どころか拘置所にでもぶち込んでやろうかと息巻いて彼へと向かう。

「おい、お前・・・!」 

怒鳴り声をあげて威嚇するが、その横をするりと彼に素通りされてしまった。

「な、おいっ!」

しかし彼の耳には己の声は届いていないらしい。ぶつぶつと一人口の中で何かを呟きながら、また屋敷の中へと入っていく。まったく視界にない自分の存在に、毒気を抜かれるが、彼は明らかに証拠を隠している。

周囲は彼の何を認めているか知らないが、あれはやり過ぎだ。持ち前の正義感がむくむくと胸に沸き上がる。けして、けっして馬鹿にされたとか、そういう気持ちだけではない。・・・ないと思う。

憤懣を体中に滲ませながら、どかどかと玄関をくぐる。出たり入ったりと騒々しいことこの上ないと、何故か自分だけは他の捜査官に白い目で見られてしまった。

あいつの後追ってるだけなのに、なんであいつはよくて俺は駄目なんだよっ!そう思うと余計に苛立ちが増してきた。

室内へと戻る途中の廊下では、何故か常よりも慌ただしく鑑識が動いていた。PCでデータを送る遣り取りを横目に部屋の中へ入ると、何故か今回の事件の関係者が皆現場の部屋に集められていた。

 「いやあ、えろう すんませんなあ。」

やはりその部屋の中心には学生服の彼がいて、へらへらと笑いながらその関係者一人一人に声をかけている。今更それを中断させる雰囲気でもなくて、結局壁に寄って傍観するしかなかった。そうしている間にも鑑識の慌ただしさはそのままで、背後から聞こえる雑多な気配に気を取られるものの、世間話のような軽さで問われていく学生服の男の質問は、流し聞きで充分だと腕組みして壁にもたれた。

しかしそれらは話した相手から各々のアリバイの矛盾を巧妙についていくものであった。全員のアリバイが崩れるまでに所用した時間は5分に満たない。その間に鑑識の横山が数度、少年の質問に答えたのみだ。

(何だ?何だ?何だ?)

ただ目を白黒させることしかできない。展開の早さについて行けない。先程までは強固なものであったアリバイが、砂の城のように崩れ落ちていく様はいっそ爽快ですらあった。

「・・・そうなると、この犯行ができたんは一人しかおらへん。」

 (・・・あれ?急に、なんか。)

彼の目が鋭さを増したように感じた。それが気のせいでないことはすぐに知れる。周囲の緊張がつられるようにして高まり、彼の一挙一動を遠くから固唾を呑んで見守る様子がわかった。ごくりと息を読む。

(な、なんだ?これ、子供の出す空気じゃねーよっ!)

 例えるなら重力。周囲を圧倒する明確な力。

「あんたや、倉田さん。あんたが殺した。」 

宣告は霹靂のごとく、それが下された女の胸へと落とされる。

(嘘だろ!ありえねえ!)

そう思ったのは自分だけではなかったようで、他の刑事も信じ切れないらしく”ほんまか?”などと顔を見合わせている。倉田は被害者の娘だ。仲睦まじさは近所でも評判でさえあったというのに。

女は静かに否定した。破られたアリバイの理由は、犯行の為ではなく父の名誉の為であったことを添えて。

けれど少年は、それを一刀両断する。あんたが犯人だと、そしてその理由を続けて口に乗せた。内容に驚愕しつつも、その理由が語られるにつれ、倉田が青ざめていくのがわかる。それが事実だと、その顔色が告げている。

それでも必死の虚勢により否定する女の前に、少年はハンカチに包まれた何かを突き出した。

「これを調べればわかることや。あんたが唯一残した証拠品。探しとったみたいやけど、俺のが先にみつけたで?」

見れば何の編哲もない万年筆。しかし女はそれを見た途端膝をついた。

がくりとうなだれた女を前に、犯行の一部始終をまるで見てきたかのように理路整然と少年は語り出した。

「・・・仕方なかったのよ。」

その内容に否定するところがなかったのだろう。泣きながら項垂れる女を、一欠片の憐憫を滲ませた瞳で見下ろしながら少年は黙した。ぼんやりとその光景に見入っていた自分は、大声で名前を呼ばれるまで犯人に手錠をかけることも忘れていたのだった。

 

 

犯人を連行する道すがら、パトカーの中で今日見た光景を思い返す。圧倒された勢いのまま、結局彼の名前すら訪ねることもできずに今に至っている。

(けどあの瞳、どっかで見た気がすんだよな・・・。)

「あのー・・・先輩。」

同乗する先輩刑事に、おずおずと尋ねる。

「今日のあの学生服の子供、一体何者なんですか?あの推理力といい、ただの高校生じゃないでしょう?」

すると問われた刑事は、ニヤリと笑った。待っていた質問だったのだろう。

「お前の尊敬する人の息子さんや。」

「へ?」

俺の尊敬する人って・・・、・・・・・・まさか!

「服部本部長の息子さん!?」

思わずあたふたと身を乗り出してしまう。思い返せば、そうだ。誰かに似ていると思っていた。

「鬼の平蔵の秘蔵っ子であり一人息子の服部平次。関西ではちっとは名のしれた探偵やぞ。」

今度からはきちんと覚えときいと、そう笑う先輩の声を聞きながら頭を抱えた。

ああ、確かに納得できる。納得以上だ。正直すごいものを見せてもらった。

「平ちゃんと事件をともにすると、たいていものすごく惚れ込むかライバル心むき出しに憎むか、どっちかやけど。」

お前はどっちかなあ、と意地悪げに呟く声を聞きながら、そりゃ前者でしょうともと、敗北感以上の爽快感が自分の中でその答えを出していた。次も、あるだろうか。そしてその時もきっと、あの奇妙な昂揚感を味わうことができるだろう。

期待に、高橋は胸が躍るのを感じた。

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2010/12/15 (Wed)

柔らかな檻、続き。

 

 


「・・・そ、んなこと、」

「これでも一応、こういう場数は踏んでるからな。こういう誘いに慣れとったり経験豊富な女の子は、肩抱いたらここぞとばかりにすり寄ってきよるわ。」

思い出したのか、嫌そうに眉をしかめる。その表情は苦手なものを無理に食べさせられる時の子供のようで、河井と呼ばれた女性は思わず口元を緩めた。

ふ、と平次も笑う。ほっとしたような顔になったのは、少しでもこの外気のような冷たい空気を払いたかったからだろう。

その目元だけの柔らかな笑みに気づいて、女性も同じように笑おうとしたが、吊り上げられていく唇は途中で強張った。

「そういう顔、するから。」

笑いかけた顔のまま、ほろりと涙が零れていく。

「そういう優しい顔をするから、好きになってしまうんです。」

ぼろぼろと堰を切ったように溢れてくる涙に、内心おろおろとしながらもそれを表には出さず平次は彼女をただ見つめる。

かけられる言葉などは何もない。

しゃくりあげもせず、静かな声で彼女は口を開いた。

「一度だけでいい。せめて初めてはあなたがいい。本当に、一度だけで、」

その場に立ちつくしたまま、まっすぐに平次を見つめた。俯かない真摯な瞳が、彼女が一夜以外何も欲しがっていないことを告げている。

「・・・好きです。あなたが好きなんです。」

この行動が自分にとってどれほど恥ずかしいものか、どれだけ勇気を振りしぼったものか。

自分の概念が壊れてしまった行動をとりながら、それを隠してまで彼に触れようとした。

「…好き、です。」

押し殺した叫びは、小さな声の”好き”の中に閉じこめて平次へと告げる。


「…あんたは他の子と違うようだから、俺もきちんと話をする。」

それらを感じ取ったのか、そう言うと平次は一歩だけ女性のほうへと踏み出した。今度は身動ぎせず、彼女は平次と距離を詰める。

彼女の目に冷静さが取り戻される。不思議な静けさが二人の間に漂う。

「俺は好きな奴がおる。そいつ以外、誰にも触れたない。」

「噂の、幼馴染みの彼女ですか?」

「・・・表向きはそうなっとる。けど、あいつは俺に協力してくれとるだけや。」

「服部君、」

話が自分の想像よりも深いところに触れようとしていることに気づいた彼女が、とまどいを含めた声で平次の言葉を止めようとする。それを唇を片側だけ吊り上げて笑いながら平次は話を続けた。

「ええよ。人を見る目はあるつもりや。あんたは言いふらしたりせんやろ。」

「・・・好きなんですね。」

「ああ。」

聞いてもいいですか?と前振りすると、頷いた平次を見て思い切って質問を続ける。

「恋人はどんな人ですか?」

「恋人とちゃうよ。」

俺が好きなだけ。

その答えに女性は目を見開いて言葉を失う。その表情を見てそうやろーと平次は笑った。

「自分でもひいてまうわ。乙女思考やんな。・・・でも、」

視線を夜空に投げる。肩をすくめているのは自嘲のためか。白い息が彼の周囲にふわりと立ち上る。

「あいつ以外はあかん。自分だけは自分の気持ちを裏切りたくない。」

ポケットに入ったままの拳を握りしめて、その夜空におそらくは愛しい人の姿を見ているのだろう。

「少し自棄になってた時期もあったけど、もうふっきれた。ほんまに好きになってしもたら、どうにもならんな。」

 

その表情に息を飲んだ彼女は、今度は心から笑みを浮かべた。柔らかな、母性を感じさせる笑み。

同時にはっきりとしたあきらめがその瞳に宿る。

実際には短い、しかし互いには長いと思える沈黙を破ったのは女性の方だった。服部君、と呼ぶその声に、平次が視線を女性へと戻した。
 


「名前、覚えてくれていて嬉しかった。ありがとう。」

その声で呼んでもらえたから。胸の奥に、大事に大事にその声を響かせていく。いつかその声が聞こえなくなっても―――

「好きでした。とても。」

平次を見つめながら、彼女の手が一瞬持ち上がりかけ、少ししてその腕はまた力なく降りて拳が握られた。

握手だけでも、そう思ったのだろう。けれどそうしなかったのは、平次が誰かを大切に思う気持ちを少しでも尊重したかったから。

「それから、ごめんなさい。私もちゃんと帰ります。」

「そうか。タクシーまで送ってくわ。」

「・・・ありがとう。」

ロータリーの端に止まっているタクシーまで30メートルもない距離を、二人は黙ったまま並んで歩いた。

ぬぐうことも忘れるほどに自然に溢れた涙は、そのまま彼女の頬の上で冷たい風に乾いていく。

二人が足を止めると、タクシーの扉が開いた。その扉に手をかけて乗り込みかけた彼女がまた動きを止める。

平次に顔をむけて、何かを言おうと唇を開いた。白い息が零れる。泣きたいのだろう、軽く胸が上下して息が震えているのがわかる。

しかし彼女は無理矢理にその表情を満面の笑みに変えた。

「・・・叶うことを、祈っています。」

平次が目を丸くしたのを見ることもなくタクシーの扉は閉められた。ガラス越しに見える彼女の表情は俯いているせいで髪に隠される。

行き先を告げたのだろう、タクシーが走り出していく。わずかな街灯のみの暗い夜の中、平次はそれを見送るように立ちつくす。

「女は強いなあ。」

苦笑して歩き出した。胸の中で一つの決意が頭をもたげ始めている。

頭を冷やさんとあかんなあと一人ごちて、肩をすくめると足早に駅を去った。

 

 

 


「あのさあ、河井って子覚えてる?コンパの時にいただろう?」

冬休みが明けて短い後期の授業の中、耳打ちされた噂話に平次は瞠目した。

「結構可愛い子だったけど、あの子結婚するらしいよ。今時珍しいことに見合いなんだって。」

「在学中に結婚しちゃうなんて、すげえよなあ。」

「親同士がノリノリで、相手ももう彼女に惚れ込んじゃって。」

「じゃあ、あれが最後の思い出コンパかあ。」

「わかんねーよ、浮気相手募集!だったかも!」

「ばーか、なんでもコンパ初参加だったんだってさ。」

へえー、と相づちをうつ友人達に紛れて、曖昧に笑ってその場を逃れた。

窓から覘く冷気に澄んだ青空を見上げて、あの時の決意を行動に移すことを考えながら。

 


 

 

 

たなかさんへ。読んでくれているといいなあ。

 

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2010/11/29 (Mon)

終電を心配する声が出始めて、カラオケは延長せずに解散となった。大学のコンパにしては盛り上がった方だろう。参加人数もいつもより多く、男女あわせて20名を超えた。

その原動力なった人物は顔を赤くしながら、男友達を両脇で羽交い締めにしてからからと笑っている。少しでも隙があれば褐色のその腕にまとわりつこうと、目を光らせている女性は少人数ではない。

店を出て解散の音頭を取る幹事はやけ酒が入ったろれつの回らない舌で今日はありがとう!などと叫んでいる。お目当ての子と彼がくっつくための催しだったはずだが、彼女のねらいはあっさりと一番眩しい恒星に向かったようだ。

まだ遊びたりないよね、などと示し合う者、ちらちらと視線を投げかけながらも、男どものガードが堅く声がかけられないらしい。少しでも近づいて、遊ぼうと声をかけようものなら、それならばこいつと、などと次々と腕に抱えている男どもを差し出される始末。

「そんじゃーなー。」

「おう、お疲れさん。」

携帯番号だけでもと粘る子もいたが結局は煙に巻かれてしまい、誰も彼の連絡先をゲットできないまま駅へ向かうごと男女問わずパラパラと人数は減っていった。

駅へ着くと終電の発進が迫ることを告げるアナウンスが流れ、まだ騒ぎの余韻を引き摺りながら電車に滑り込んだメンバー達がガタンと揺れる電車に一息ついた時、ふと周囲を見渡して首をかしげた。

「あれ?服部君は?」

「ほんまや、おらへん。」

「嘘!降りる駅で一緒に降りようと狙ってたのに!」

車内は浅はかなもくろみの破れた哀れな女性達の悲鳴と、それを宥めながらも彼を餌に彼女らから連絡先をゲットしようとする男性陣の携帯電話のプッシュ音が響いた。

 

「・・・さて、タクシーでも拾おうかな、と」

両手をブルゾンのポケットにしまいこんだまま、少し背中を曲げてるようにして気配を消していた平次は呟くと、改札口からほど近い階段を出口に向かって歩き出した。

数歩歩いて、ついっと振り返る。

「へえ。気づかれとったんか。」

振り返った先には改札口の前、ストレートの髪を肩までおろし、白いタートルネックのセーターと膝上のキャメルのスカートをはいた女性が一人立っていた。彼女は平次の言葉に小さく頷くと、少しためらいを見せながらも彼の元へ近づいてくる。すっきりとした顔立ちと白い肌、眺めの睫が清楚な色気を持っていた。

「俺、結構フェイドアウト得意やってんで?自信なくしそう。」

「・・・見てた、から。」

「さよか。」

俯いたまま、彼女は次の言葉を発しようとはしなかった。何の用件かは平次も察しがついている。両手をポケットから出すと、片手で髪をかき上げた。その動きに彼女の肩がびくりと揺れる。長丁場になるだろうかと、平次が一つ息を吐くと同時に彼女は顔を上げて、平次をまっすぐにみつめた。

「あの、服部君。」

「何?」

表情はにっこりと笑ってはいるが、平次の目は笑っていない。隙を見せるとこういうシチュエーションでは誤解を招くことを数多い経験から知っているためだ。簡潔な言葉で返し、相手の出方をうかがう。

「今晩だけで、いいの。一晩つきあってもらえない、かな?」

「ゲーセンとかで遊ぶくらいなら、ええよ。」

はぐらかした答えで、明確に拒絶を示す。一瞬、泣き出しそうに顔を歪めた彼女は、それでもくっと唇を噛みしめて俯かない。

「・・・一度だけでもいいから、私と寝てみない?」

震える声で、もう一度。今度ははぐらかされることを避けての言葉。

「ありがたい申し出なんやけど、」

「好きな人が、いてもいいんです。」

断る平次の言葉を遮るようにして、彼女は言葉を続けた。切実な響きと、誰にも話していない”好きな人”のことを持ち出されて、平次は黙って彼女の言葉の続きを待った。けれど彼女は自分の発言が失言であったらしく、口元に手をあてて目を泳がせた。慌てて自分を立て直したか、やや取り繕う声で軽い響きを装い続きを話し出す。

「少しの時間、遊ぶだけじゃない、ね?」

断りの言葉を繰り返そうとした平次の声を次々と暗くなる駅舎の電灯が遮った。

 「すみません、駅を閉めますので。」

向かい合う男女など慣れたものなのだろう、離れたところから初老の駅員が平次へと事務的に声をかけてきた。

平次はすんません、と頭を下げると駅から出ようときびすを返しかけ、そこから動けないでいる彼女を見て小さく溜息をついた。仕方なく出口へと誘導しようと彼女の手に肩を置けば、びくりと大げさなほどの動揺。見れば握り締めた手はその力の強さのあまり真っ白になっており、かすかに体が震えている。

 平次はそれらに気づかぬ振りをしながら、あえて肩から手は外さずに駅舎の外へと出た。コンクリートの壁が無くなると同時に、木枯らしが強く吹き付けてくる。反射的に肩をすくめた平次の腕が肩から離れたことに、ようやく少し緊張を解いたらしく女性の肩がようやく下がる。

 かまわず前を歩いていく平次の背中を見つめ、意を決したらしく目をきりりと吊り上げ口を開いた。

「服部君。」

「なに?」

道路の端に並ぶタクシーに目をやりながら振り返らずに答える。

「後腐れないですよ。私。胸も大きいです。遊ぶのにはちょうどいいと思うの。」

冷たい風に晒されて髪がなびき、それを何度もかき上げる度にアンゴラの毛足の長いセーターの袖から紅潮した頬が見え隠れする。長いブーツとニーソックスを組み合わせているが、スカートからのぞく足は素足だ。

白く柔らかな曲線、ふんわりと丸みを帯びたそれらに、大多数の男ならば誘いにのるだろう。

「ええと、河井さん。」

名前を呼ぶと弾かれたように顔を上げた。一瞬、泣きそうな顔で平次を見る。

「あんた、こういうこと慣れてないやろ?」

 

 

<続く!>

明日で11月が終わるというのにこのていたらく・・・!!!すみません、今まだ書いています。終わらない・・・長いので分けました。でもたなかさんはもっとがんばってるんですよね。ちょっとでも気にいっていただけるものを書けるようがんばります。

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2010/11/27 (Sat)
「来週はお尻に気をつけることね。」
「はあ?どういう意味だよ。……っまさか!」
「どうしたの?急に周囲を見回したりして」
「…服部はどこだ?」
「…………ああ、その手があったわね。」

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2010/11/27 (Sat)

背中越し、抱きしめて言葉を紡ぐ。

好き、すごく好き、離れない、離さない。

自分の想いを告げるには言葉も体も、表に示す方法ではやはりまるで意味をなさず、ただ深いところへ何かが沈んでいくような錯覚を覚える。

(足りへん、なあ。)

ナニをしても、ナニを告げても、彼に向かい行く抑えきれない感情。せめて暴発しないようにとこうしてたまにガス抜きをしているけれど。

「工藤、・・・好きや。」

その声に紛れてあくびをひとつする音が聞こえ、じきに彼から体の力がゆっくりと抜けていく。

その呼吸にあわせながら、できるだけ、できるだけそっと、抱きしめる力を強くしていった。

そういえば。

ふ、と口元を緩ませた。泣きたくなるような気持ちで平次は微笑む。

眠ることが苦手だなんてあの頃は知らなかったから、

・・・自分の声で、体温で、ようやく息を吐いて眠れるなんて。

それをこの腕の中で知ることができるなんて、

・・・なんて贅沢な、 ”告白” 。

 

 

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2010/11/15 (Mon)

「あかん!足りへん!」

そう叫ぶと同時にがばりと抱きついてきた男を、いつも通り足蹴にしてベッドから追い払う。

これまたいつも通り、犬であればキャインと鳴いているだろう表情で恨めしげに床から俺を見上げる姿。

心動かない訳ではないが、明日の予定と腹事情を考えれば今晩はこの程度で眠りたい。

「足りてねーのは体じゃねえだろ。」

来い来いと手で招き寄せれば、従順に傍に近づいてくる。けれど渋々といった風体であるのが笑いを誘って、それを見咎めた彼はまた唇をとがらせた。そんなところもかわいいなんて、口には絶対に出さないけど。

目の前で正座をする男の肩に両手を乗せて、指先で耳をなでるとそこがふるりと震えた。思惑通りの反応に満足いく。そして次の瞬間には素早く腕を引いて、その手をつかみ取ろうとした黒い腕から寸でのところで逃げる。

ああ、また睨んでいる。

こういう俺をほしがる顔がたまんねえから、危険だとわかってもぎりぎりまで遊んじまうんだよ。

にいっと彼の好きな力強い笑みを浮かべて、もう一度彼を真正面から見た。

「言えよ。今日は止めずに聞いてやるから。」

「・・・相変わらず偉そうやな、自分。」

「そういうとこもいいんだろ?」

なあ服部、と高飛車な声を作り名前を呼ぶと顔を赤くする。 

「ほんまに止めへんな。」

「二言はねえ。」嘘はつくけど。

相手にはすでに見透かされている内緒の呟きを、口の中だけで転がしてごろりと横になる。

平次は立ち上がり、新一の隣に体を滑り込ませて背中から彼を柔らかく抱き締めた。

大きな声でなく、けれど囁く以上にはっきりとした低音で、一音一音をその肌に染みこませる。

「好きや。離れへん。・・・好きでたまらんわ。」

どんな表情でその言葉を吐くのか、切実さを伴うその声は彼の叫びを内包している。

けれどあえて、あふ、と軽いあくびをすると新一は体から力を抜いていき、

心地いい告白を背に、とろりとした睡魔へと身をゆだねた。

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2010/11/15 (Mon)

広島焼きって、焼きそばがはいってんのか。

へらで分けられた切り目からのぞく麺に驚きながら、一切れを蘭に切り分けてもらい熱さを堪えて口の中へ押し込む。知識だけでしか知らなかった情報を、こうして目の前にして舌で感じるのは一種の感動があって、やはり本だけじゃ駄目なんだよな、と一人納得する。

ただ自分はやっぱり大阪のお好み焼きの方が好みらしい。

美味しいと頷いて食べながらも、やたらと大阪のお好み焼きを思い出してしまう。

けど、なんで最初に蘭たちと行った店じゃなくて、あいつと二人で行ったことばっかり思い出すんだろ?

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2010/11/14 (Sun)

生きていくのに必要なもの。水と食料、それと本。

けどよ、俺が背筋伸ばして生きて行くのに必要なのは、きっと。

(・・・目の前の馬鹿、なんだろうな。)

 

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2010/11/13 (Sat)

広島焼きを口の中へほおりこみ、はふはふと暑さと格闘していると蘭がおかしそうに笑った。

今の姿では仕方がないとはいえ、子供をあやすような目で見られて恥ずかしさと同時に少しむっとする。

その表情がおかしかったのか、また蘭が笑みを深くした。

「そっくりね。」

「ナニが?」

「帽子の鍔を後ろにして被って、お好み焼きを嬉しそうに食べているところが。」

「・・・・・・誰に?」

確認したくはなかったが、あえて彼女に問えば予想通りの答えが返る。

「服部君よ。二人ってよく似てるなあって思うときがあるの。」

「似てないと思うけどなあ。」

憮然とした気持ちを隠してにっこりと笑いながら、コナンは片手でさりげなく帽子を脱ぐ。

「似てるよ。時々、びっくりするくらい。・・・同じ目をするときがあってびっくりするわ。」

そう言うと蘭は、両手を顎の下で組んで寂しげな柔らかい光を目に浮かべている。

視線はコナンを向いていたが、・・・わかる。彼女は今、コナンを通して工藤新一を見ている。

「男の子だからかな。・・・探偵だからかな・・・。」

唇がその先の言葉を紡ぐ前に、小五郎の酔いどれた声が店内に響く。

諫める蘭が立ち上がり、小五郎から酒のコップを取り上げてしまう。いつもなら笑いながら呆れて終わる場面だが、彼女が口の中でだけ呟いた言葉が読めてしまったコナンは口へと運ぶへらの手を止めて彼女を見つめた。

視線に気づいた蘭がコナンににっこりと笑う。 困ったものね、と父親を憂う表情をしていて、ぎこちなくコナンも笑顔を返した。軽いため息が零れる。

似てないだろ、ともう一度聞こえない程度のささやき声で呟くと、帽子を今度は鍔を前にして被り直す。

表情を隠した彼の中で、蘭の言葉が繰り返し繰り返し響いた。

 

同じ世界を見たいのに、見られないの。・・・うらやましいな、服部君やコナンくんが。

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2010/11/07 (Sun)

人が殺されている。

鉄に似た血の臭いが溢れているリビング。カーペットに広がる赤色の染み、テーブルに撒き散らされた飛沫。まだ乾ききらないそれらに埋もれて、見開いた目のまま強張る死者の顔。

見渡す程に日常とかけ離れた光景。

昂揚する心を抑える。ここはヤツのテリトリーだと自分に言い聞かせ、そっと足を下がらせると壁へ背中をもたれさせた。

刑事や検察官の関西弁を聞きながら、死体に近寄り独自に検分する彼を見る。

いつもは背中側に向けている帽子の鍔をきゅっと掴んで前へと向けると、ポケットからハンカチを取り出して手にし、被害者の傍に落ちている何かを拾って鑑識を呼ぶ。

ここで彼がどれほどに信頼を得ているのか。呼ばれた鑑識が即座に平次へと駈けより、指示を頷きながら聞いていることだけでもわかる。刑事らは誰もそれを咎めず、走り去る鑑識に目もくれないで平次の繰り出す次の指示を待っている。

警察官でもない一介の学生である平次に指示を求め、それを行動の指針とする周囲の姿は自分と変わりない。だがこれもまた、日常や常識とは異なる光景だ。

平次の視線が周囲をくまなく移動し探る。違和感を感じるモノがないか、それがここにある理由はナニか。全身をアンテナにして脳を稼働させている。記憶している景色を明確に脳の中に再現し、被害者の動きをトレースしていることだろう。

何かを頭の中で見つけたのだろう。平次の目が輝く。

そして、笑み。

口元に浮かぶ、挑戦的で勝ち気な笑みが隠しきれないでいる心の底をさらけだす。

謎が示され、幾重にもばらまかれたヒントをひとつひとつ拾い上げながら犯人を追い詰めていく道筋。

それらを辿る時、胸に沸き起こる衝動、その源。苦々しく自覚しながらも、消してしまうことのできない気持ち。

 

――― 楽しい。

 

人が死んでいるのにな。

自嘲とため息が同時に零れてしまのは、それがあまりに覚えのある感情だからだ。

新一は無意識に口元へと手を宛てる。彼から目を離せない。

その表情、その動き、俊敏な獣を思わせるそれが、自身の胸を何故こうも震わせるのかを知りたいと思う。

見つめる視線に気づいた平次が、振り返って新一を見た。

今更目をそらすこともできなくて、そのまま互いに奥を探るようにして視線を交わす。

それも束の間、刑事らに声をかけられた平次は、また新一に背を向けてそのまま彼らと話し始める。

意識だけはこちらに向けられている、新一はそんな彼を感じてまだ平次から目を離すことができない。

一人の刑事が腕を伸ばし、隣の部屋を指さした。それと同時に場所を移動するのだろう、刑事らに囲まれながら歩き出す平次が新一の横を通り抜けていく。

ふと平次は足を緩め、新一の前で止まった。

さして気にとめる様子もなく刑事達は先を急ぎ、残された平次は帽子の鍔を片手で持ち上げ、もう片方の手をジャケットのポケットにいれながら新一の前に立つ。視線は流し、新一を見ないまま口を開く。

「・・・ひとでなしのかお、しとるやろ?」

唇の片側を歪ませながら平次が笑う。

 

俺と同じ、な。

胸の中だけで呟いて、新一は彼と同じような笑みを平次に返しながら頷いた。 

 

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2010/11/07 (Sun)
またパソコンをたちあげることができず、携帯からこんにちは。

酔っ払いの朝に、コメント下さったkanaさん、無記名さん、ありがとうございます
レスを早くかえせるようにしますね。お二人のコメントとても嬉しかったです

早くbitterの続きもやらねば!
がんばります~

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2010/11/02 (Tue)

 酔っぱらいの朝  の続き。 


「…二人に内緒にしていたのは悪かった。」
軽く頭を下げると、しばらく俯いたまま言葉を探す。突き刺さる視線が痛い。
こういう時にいつもの滑らかな啖呵が切れればいいのに、そう焦りながらも喉がつかえる。
しかしいずれは話さなければいけないことだったのだ。

「服部とは、その、半年くらい前からそういう付き合いをしてる。」
真っ赤になりながらも、言葉を紡ぐ。
恥じ入ることなどは何もない。
ただ自分たちを知る幼馴染みに話すという行為が猛烈に恥ずかしいだけだ。

「服部は話しておいたほうがいいんじゃないかって言ってくれていたんだ。」
テーブルの上のコーヒーカップを両手で包むように握りしめる。
「俺は少し、時間が欲しくて。」
湯気がまだほのかに香りをまとって、鼻をくすぐる感覚が遠い。
緊張しているのか、と自己分析する自分がおかしい。
きゅっとコーヒーカップを握る手の力を強めると、新一は幼馴染み達を見回した。

「けど、俺は、」
「工藤。」

平次がぴしゃりと言葉を挟み込む。
はっとしたように新一は目を瞠る。そしてそのまま目元を緩ませた。
「ああ。あー…」
こほんと小さく咳払いをして、そして少し頬を赤らめながらも一息に告げる。
「・・・俺たちは、お互い、相手がそういう意味でも必要なんだ。」
先ほどまでの動揺が嘘のように引いた静かな目で二人に笑いかける。
視線を床に落として、テーブルに肘をついている平次の表情が心なしか柔らかい。
けれど。

「さみしいわ。」
いつもは高い位置で結わえられているポニーテール、今は降ろしている長い髪が俯いた彼女の表情を隠す。
呟かれた言葉は重く、鳥のさえずりが聞こえる程の静けさの中で張り詰められた空気。
「遠山さん」
俯いたまま、また「さみしいわ」と繰り返す和葉に、名前を呼ぶ以外言葉をかけることができなくて、
探偵達の能弁な舌は今はその動きを止めた。
ふと蘭を見れば、やはり寂しそうな笑みを浮かべている。

彼女たちでも、やはり自分たちを認めてもらうことはできないのだろうか。
いや、彼女たちだからこそ、認められないのだろうか。
それならばいっそ、怒りを露わにしてくれればこちらも言葉を返すことができただろう。
けれど二人はただ、寂しいと呟くだけ。
その言葉が、今までのどの言葉よりも何故か歯がゆさを感じさせる。
無意識にごめん、と喉元まで出かかるが、それは平次に対しての自分の気持ちを否定することになる気がしてまた口を閉じた。
何を話せばこの二人に伝わるだろうか。
けして幼馴染み達をないがしろにしているわけではないと。ただ自分は、自分たちはー……。
そこまで考えて、はたと気づいた。

本当は蘭なら平次とのことを理解してくれるんじゃないかと、楽観的に希望を持っていた。
だからこうして、話すことにもさして抵抗はなかったのだ。
これほどの重たい空気の中にあることが、そのことへの軽いショックが、自分がいかに蘭に甘えていたのかを知らしめる。
できることは真実を、できうる限り明確に伝えることだけ。
普段ならばけして彼の前では使うことのない言葉で、大切な、ずっとずっと好きだと思っていた彼女に伝えることだけだ。

「俺は、」
あらためて緊張に体がこわばる。

「……俺は、服部が、好きなんだ。」
誰に否定されても、自分だけはそれを否定できない。
長く続くかと思われた沈黙は、がたりと椅子を引く音と、それに間髪入れず続いた予想外に明るい声で破られた。

「あー、平次が紅うなっとる~。」
「…っやかましっ!」
「ほんま恥ずかしいくらい馬鹿っぷるやねえ、ごちそーさま。」
どんっと音をたて、行儀悪く肘をテーブルにつくと和葉は先ほどのまでの雰囲気を払拭した。
半目になって、にやーりと笑いながら平次をからかう言葉を投げ、平次は和葉に照れを隠す為か荒っぽい言葉で受け答える。
それはいつも大阪で見せられる光景。

その変貌ぶりに、肩すかしをくらった新一はきょとんと目の前の漫才を見るだけだ。
和葉は新一のそんな表情を見ると、ふふっと猫のように目を細めて笑う。
「なあ、工藤くん。」
頬杖をついたまま、新一へと首を傾ける。
「うちらな、平次と工藤くんがつきあっとること怒ってる訳やないの。」
――― ずっと一緒におったのに。
「話してもらえなかったことが、淋しいかったんや。」
一晩眠れなかった仕返しに、少しくらい意地悪したっていいかなって。

そうして頬杖を解くと、和葉はテーブルの上で掌を組んだ。
「何がきっかけでも、話してくれたことは嬉しいわ。それに・・・なあ?蘭ちゃん。」
「うん。」
和葉の言葉を受けて、静かに話の行く末を見守っていた蘭が口を開く。
胸へと手をあてて、そっと何かを噛みしめるようにした小さな声。
「なんとなく、二人の関係が変わったような気はしてた。」
そうして蘭と和葉は二人揃って顔を上げると、今まで見たことのない綺麗な微笑みが浮かんでいた。

「びっくりはしてるし、一応ショックなんだけど」
「・・・納得もしているとこがあるの。」
「話してくれてありがとう。」
「まあ、なんなら相談にのったらんこともないで?」

幼馴染みをやめたわけじゃないからな、と和葉が言えば、大きく蘭が頷いた。

「蘭、遠山さん…。」

動揺もショックも、けして小さなものではなかったはずだ。
それでもなんとか二人して笑おうと決めていたのだろう。
笑みにはやや苦く、明らかに悲しみも混じっていたが、それ以上に二人の目に浮かんでいたのは自分たちの幼馴染みへの信頼。
新一と平次がともにある姿を長く見ていたからこその、それ。

同じ年齢の人間の中にあって、その才能故の異質さを感じさせぬように、いつもどこか緊張していた生活。
遠慮なく言葉を選ばずにいたのは、幼馴染みである自分たちのみであったことを知っていた。
子供のようなじゃれあい、聞く者を混乱させるとりとめがない言葉の応酬、互いを試すような挑戦的な笑みを
嬉しそうに交わす二人を傍で見ていたからこそ、一晩で気持ちをある程度整理することができたのだ。

幼馴染み故の理解に、じんわり温かいものが新一の胸にこみあげる。
ありがとうと呟きかけた時、女の子二人が互いの視線を交わしたかと思うと揃って両手を合わせた。

「後ね、ひとつ謝らないといけないの。」
「私たちもちょっと酔ってて。」

えへへ、と照れながら二人が指さしたのは窓の外。
振り返った先のその景色に、新一はしばし呆然とする。
平次は知っていたのだろう、いや、もしかしたらその瞬間に現場を目撃していたのかもしれない。
しれっと何食わぬ表情のまま、コーヒーを飲んでいる。

そういえばやたらと日照りがいいなあと思ってたんだよなあ。
しょっぱい表情になった自分に気付きながらも、両手を合わせて上目遣いに謝る女の子の姿はやはりかわいくて、
新一は「いいよ、気にしないで。」と軽く笑ってその場を流し、心の中で庭で根本から倒れている楡の木に合掌したのだった。

 

 

 

 

 

 

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自己紹介:
二児の母。2009年に唐突に平新に。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
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