bitter久々の更新です。短いですが。
とりあえず次のバレンタインまでに終わらせることを宣言。・・・一年がかり・・・。すみません。
bitter 続きです。
前回まではこちら。
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心底参ったといわんばかりの溜息、子供扱いのようなそれに思わず新一はむっとする。
「…っんだよ!」
「自覚ないのが怖い。…ほんま、怖いわ。」
「てめっ…」
罵声を最後まで浴びせることはできなかった。突然新一は抱き上げられてうろたえる。
「は、服部?」
ひっくり返った新一の声音に、平次は苦笑しつつ軽々とその体を運んだ。
背中と膝の下に二本の腕、耳元に彼の心臓。目を白黒させて軽いパニックに陥った新一は、暴れてその腕から逃げようというところまで考えがいかない。
時間にすればほんの数秒、けれど新一には長く感じられた。平次は数歩進んだだけで、新一はゆっくりと腕から降ろされた。
そこは浴槽の中、淡い肌色の塀が目の高さに現れたよう。
状況が飲み込めないままの新一が平次を見上げた途端、ざあっと水音が勢いよく浴室内に響いた。
「頭、ちょっと前に出し。」
言われた意味がわからず、きょとんと平次を見上げていると、平次が新一の後頭部に手を添えてやや前に倒す。
湯の温度を掌で確認した平次が、新一の肩口にお湯がかかるようシャワーヘッドを壁に固定した。
少し熱めのお湯が肩をすべり、体中を暖めていく。自分で自覚していた以上に体は冷えていたようだ。
体が一度ぶるりと大きく震える。反射的に膝を抱えた。
「ええか、絶対ぬくまってから出るんやで?」
「…子供じゃねえよ。」
顔も向けぬまま憮然と呟く。聞こえなかったはずはないだろうに、平然とスルーして平次は次の予定を口にする。
「濡れた服は、しばらくしたらキーパーさんに来てもらってクリーニングしといてもらえるよう手配しとく。今夜だけは俺のん使てくれ。」
「・・・・・・」
「着替え、ベッドの上に置いとく。安心せえ、下着はさらっぴんや。」
誰かさんのおかげで新品で予備を持ち歩くのがクセになってな、と笑いながら平次は備え付けの棚にあったフェイスタオルを一枚だけ手にした。
顔と髪を乱雑に拭い、そのままタオルを首に下げ、浴室のドアノブに手をかけながら振り返る。
眉間に小さく皺を寄せて、眉を下げて困ったように笑うのは何時頃からだったろう。
見慣れたその仕種に、新一は平次の苦しみの長さを知る。
「ええな。絶対胸まで湯がたまるまでは出てきたらあかんよ。」
きちんと笑えていると思っているのだろうか、声だけは以前のようにかろやかにして告げると、
浴室を濡れたまま出た男はパタンと音をたてて扉を閉めた。
「・・・てめえは、どうすんだよ。」
小さく呟いた問いに応えはなく、新一はただうるさいほどの水音の中で閉じられた扉を見つめるだけだ。
ぐるぐると回る思考は、結局のところ堂々巡り。
何の結論も出ないまま、ふと気づけば膝にのせている顎の所まで湯が上り体から寒気も抜けている。
慌てて手を伸ばし、蛇口を閉めてお湯を止めた。
暖まったことで幾分ふらふらとするが、浴室に備え付けられた手摺りを頼りにのっそりと立ち上がる。
酔いも重なってぐらりと体が傾いだものの、ベッドで起きた時よりは楽になった体、ふうと大きく息をついて状態を立て直す。
浴槽の湯の中で立ったまま、のろのろと服を脱ぎ始めた。指先でひとつずつボタンを外していく。
濡れた布が肌に張り付いて気持ち悪い。べしゃりと音をたてて床に脱いだシャツを落とした。
不安定な足場ではうまく下を脱ぐことは難しいだろうと、湯からあがり浴槽のへりに腰掛けてまずベルトを外す。
シャツの上に次々とクリーニングされる服の山ができたのを横目に、備え付けのバスローブで体を覆った。
濡れた髪から滴る雫もそのままに、浴室から出ようと扉に向かう。
ふと横を見れば壁に掛けられた鏡の中、ひどく幼い表情の自分と目があった。
(何で、そんな顔してんだよ。)
不安気に揺れる黒い瞳が自分へと問う。
(・・・そうだ。選択したのは自分だ。)
今度は扉へと視線を向けた。あの薄い壁の向こう、何が待ち受けているのか。平次は、いるのか。
あの口ぶりではおそらく部屋を出ているだろうが、もしいたとしたらどんな言葉をかけられるのか。
唇の裏側を歯で小さく噛んで、思い切って扉を開けた。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
