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東西名探偵/平×新のSSブログです。幸せイチャイチャ中心。                                                               死にネタ別れネタなし。初めての方はカテゴリーより「はじめに」をクリックしてください。                                                 ご意見、ご感想等ございましたら カテゴリー下にあるリンクのWEB拍手や文末コメントにてお願いします。
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2026/07/01 (Wed)
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2010/02/14 (Sun)

今年は何個もらったとか、それを聞いて勝ったとか負けたとか。
そんなやりとりを去年はしていたはずだった。
電話の向こうで来年も見とれよ、と高らかに笑った男は目の前にひどく飢えた目をして立っている。

幾重にも張り巡らされた罠、古びた洋館の密室、綻びのないアリバイ。
依頼を受けて呼ばれた現場に、この男も呼ばれていた。
偶然の再会はたわいない嫌味の応酬から始まりながらも、互いに発見する証拠と推論。
背中を預けることのできる信頼と、飛躍する推理の連続に高揚する魂。
謎解きの披露を終えて、警官が犯人を洋館の外に連なるパトカーへと連行していくのを二人で見送ったのは2分も前ではないだろう。

携帯が鳴って、蘭からのメールを読んだ。
その腕をとられて、名前を呼ばれて。
「今日、会うんか?」
誰に、と聞くまでもない。蘭専用のメールの着信音を彼も覚えている。
ひどく苦しそうに問うのを不思議に思いながらも、当たりまえだろうと頷いた。
毎年この日は、彼女が手作りのチョコレートを必ず渡してくれる。
高校生の頃と変らぬ関係のまま、こういうのを恋人未満友達以上とでも言うのだろう。
居心地のよさに甘えて互いにそれ以上踏み込むこともなく。
それを幼馴染の彼女から聞いて、彼も知っているはずだろう。
きょとんとした表情の自分を見つめ、平次は苦しそうに顔を歪めて唸る。
喉から血を吐くような声がした。
「工藤、俺は。」
続けて告げられた言葉は到底信じられないもので、一瞬自分の足元が崩れる気がした。

信じられねえ、ほんまや、嘘だ、ずっと、言うな、――聞け。

低く押し殺した言葉の応酬は、昨日までとはまるで違う。
彼の言葉がわからない。
目を見るだけで次の言葉がわかるほど、何でも疎通できたはずだった。
なのに、どうして。

威圧されるのか、無意識に後ろへと後ろへと足が下がる。
こつり硬い感触にもうそこは壁だと気付き、動揺しつつもそれを表情に出すようなへまはしない。
けれど、目の前には平次が立つ。
壁に背中を預ける形になった新一の耳の横あたりに、彼の手が伸びて置かれた。
くどう、と唇が名前を形づくる。
蛍光灯の白い光によって描かれた彼の影が、自分を覆うようにして伸びる。
誰かを、こんなにも恐ろしいと感じたのは初めてだった。
震えそうになる足を心の中だけで叱咤しつつ、平次の視線から己の目をそらすことなく逆に睨みつける。
耳鳴りがする。
それがうるさいほどに鳴る心音だと気付けない。
肌が粟立ち、背筋が凍る。呼吸がうまくできない。
ぐらぐらと脳が煮立つような混乱の中、彼の声が唇に触れたのを境に新一はパニックになったのだと思う。
「俺は蘭が好きなんだ!」
叫ぶと同時に平次を殴りつけ、部屋を飛び出した。
去り際に後ろを一瞥すると、頬を抑えた平次がひどく暗い目をして床を見つめていた。
彼は、追いかけてはこなかった。



どうやって家に戻ったのか覚えていない。
すでに夜と呼べる時間、タクシーを降りた門の前には一人の少女が立っており、新一の姿を見つけて嬉しそうに微笑んだ。
「蘭…」
(俺は蘭が好きなんだ。)
叫んだ言葉が耳に蘇る。

「お帰り、新一。よかった、会えて。」
冷気に晒されて、鼻の先が赤い。
この寒空の下ずいぶん待ったことを愚痴りもせず、ただ会えた事実を晴れやかに喜ぶ姿。
わけのわからない焦燥に喘ぐ新一には、まるで救いの女神のようにも見えた。
あの頃と同じように待つばかりの彼女なら、自分に踏み込んでこない。
は、と笑いがこみ上げた。
どうしたの、と近づいてきた蘭を新一はぎゅうと抱きしめた。
「俺は蘭が好きなんだ。」
平次へと投げた言葉を繰り返す。
「新一…。」
腕の中で彼女の体が強張ったのがわかった。
嬉しくて、笑いたくて、でも気持ちが追いつかずに泣きそうになって、震えている。
細身の自分よりもひとまわりも細い、女性の小さな体。
膨らんだ胸の感触にも、女の柔らかさが溢れる。
すがるように、一層腕に力をこめて彼女を抱きしめた。
ほら、俺は蘭が好きなんだ。
抱きしめると、こんなにも落ち着くじゃないか。
はあ、とようやく体から力を抜くことが出来た。
あれからずっと体が緊張していたことがわかる。

あんなふうに、体全部がぐちゃぐちゃになるような思いはゴメンだ。
壊れそうだった心臓が、今、息を吹き返すようで新一は安堵の息をまたついた。
「らんがすきなんだ。」
言い聞かせるように繰り返す。

おれはらんがすきなんだ。

ふいに、蘭の体が先程と違う緊張に硬くなると、新一の体をそっと押し返した。
「蘭?」
長く待たせた終止符となるはずだった抱擁を、柔らかく、けれど確かな拒絶を持って離されて新一は動揺する。
俯いたままの彼女は何も言わない。
新一のひどく焦る気持ちを感じていないはずはなかったが、蘭は少しの間何かをこらえるようにして、それからゆっくりと顔を上げて新一の名前を呼んだ。

「新一は、色んな事件の真実を見抜く目を持っているよね。」
何を言い出すのだろうか、いや、これ以上何を言わせてもいけないのではないだろうか。
しかし切迫した彼女の声は、新一の声を喉へととどめる。
「でも私、新一の嘘だけは見抜けるんだよ。」
そう言って、蘭は新一を正面から見つめた。
―――どうして、そんな悲しそうな目をしているんだろう。
考える間もなく、すいと目の前に差し出されたのはシックな包装紙に包まれたチョコレートの箱。
派手な飾りは苦手だと、呟いていたのを覚えていたのか。
「受け取ってくれる…?」
震える声。ふわりと微笑んだその表情は何かしらの覚悟を湛えていて、例年のような遣り取りで過ごせるものでないことが知れた。
こくり、喉が鳴る。

俺は蘭が好きだ。
好きなはずなんだ。
それなのにどうして、この箱を手にとることができないんだろう。

真っ直ぐに見つめる彼女の目が揺らいで、ほろりと涙が零れていく。
それを止めることが出来るのも自分だけだということはわかっていた。
この箱を受け取れば、その涙を止めることができるであろうことも。
けれど同時に、彼女には自分の中にある彼女への気持ちを悟られているのだ。

自分でも自覚のなかったものを抉り出されて、新一は指すら動かすことも出来ずに立ち尽くした。

02

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プロフィール
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こば
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女性
自己紹介:
二児の母。2009年に唐突に平新に。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
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