東西名探偵/平×新のSSブログです。幸せイチャイチャ中心。 死にネタ別れネタなし。初めての方はカテゴリーより「はじめに」をクリックしてください。 ご意見、ご感想等ございましたら カテゴリー下にあるリンクのWEB拍手や文末コメントにてお願いします。
口がやたらと渇く。
自分が出した言葉だろうか、何故に?
からからとした咥内を潤すよう何度も唾を飲み込み、俯いて自分の靴だけを見る。
何を恐れているのか、平次の顔を見ることができない。
耳鳴りが響いて、拳に汗が滲んでいく。
まるであの時のよう。酔いが廻るのか視界がぐわりと揺れて、息を吐くのすら苦しい。
何かに急かされるようにもう一度歩き出そうとするが、踏み出した足がよろめき下半身が崩れる。
体のバランスが傾いで、倒れながら平次の駆け寄る姿が視界に斜めに映るのを見た。
倒れた、と自覚したまま意識を失う。
工藤と名前を呼ぶ平次の声が、不思議と耳に馴染んで心地よかった。
こぽり、水に浮かびあがるような感覚がして、自分が目を覚ましたことを悟る。
見たことがあるような部屋に、懐かしさを感じる後姿があった。
上着を脱いでシャツだけの背中がわずかに屈められ、肩甲骨がすらり突き出る。
珍しく平次はスーツを着ていたのだと、このとき初めて新一は気がついた。
続けて自分がベッドに寝かされていることを、そして彼がそのベッドに腰掛けていることを知る。
手を伸ばせば届く距離。
そう意識した途端、ぴくりと指が反応した。
その気配を感じたのか、平次が振り返り新一へと視線を向ける。
「起きたか。」
呟いて立ち上がり、ベッドサイドに置かれた椅子へと移動する。
けれど座ることもなく、背もたれに手を置いてよりかかるだけだ。
立ったまま、新一を上から見つめる。
色のないその目が新一をざわつかせる。
まだくらくらとする頭を軽く振り、先程の平次のようにベッドへと腰掛けて上半身を起こした。
片手で顔を覆い、俯いたままざっと室内を確認する。
見たことがあるような気がしたのは当然、どうやらホテルの一室のようだ。
乳白色の壁紙と白木の柱が、室内灯の白い灯りを反射していて少し眩しい。
「水飲むか?」
「・・・いらねえ。」
気遣う平次の声を撥ね退ける。
如実に拒絶を表したそれが気に障ったか、ぴくり眉をあげた平次が吐き捨てるように続ける。
「ずいぶん派手に遊んどるみたいやな。この目で見るまでは信じられへんかったけど。」
こっちまで噂が届いとるわ、と溜息とともに続けられらた声には非難の色が滲む。
遠まわしに蘭とのことを質問されているようで、神経がささくれる。
「てめえには関係ねえ。」
「・・・さよか。」
室内に重く沈黙が続く。
あの日からおかしくなった時間が、そのまま今の二人にのしかかるようだ。
椅子にもたれたまま視線を横に流し、自分を見ようとしない平次になお苛立ちが募り行く。
もう片方の手にはじわり汗が滲み、その手を何度も握り締めながら唾を飲む。
帰る、と一言自分が言えば、打開されるであろうこの状況。
内側からは誰でも開くことのできる扉を開けて、このままタクシーに飛び乗ればいい。
まだ間に合うはずなんだ。
そう理性が訴えるのに、どうしてかエレベーターでの邂逅が何度も浮かんできて消え、
ベッドから立ち上がることもできないまま、時間だけが過ぎていく。
しばらくして、平次が立ち上がった。新一の体を緊張が走り、びくり肩を揺らす。
平次は一瞬だけ足を止めたが、かまわず冷蔵庫の扉を開けて中からビール瓶を取り出した。
ガラス瓶同士の硬質な音が静かに部屋に響き、続けて栓を抜く音。
グラスに注いだビールを新一が座るベッドのサイドテーブルに置き、続けて自分の手にあるグラスにも同じようにビールを注ぐ。
平次が一気に呷る様子を視界の端にとめつつも、新一はことりと置かれたグラスに手を伸ばす気にもなれない。
しかしそれを気にする様子もなく、黙々と二杯目を注いで再び一気に呷る。
はあ、と大きく息をつくと、ぐいと袖で口元を拭った。
「・・・まさか、こんなとこで会うとはな。」
自嘲するかのように口元を歪めて呟く平次に、そういえばここは彼のテリトリーではないのだと今更ながらに思い出す。
再度グラスにビールを注ぐ音が警戒心を緩めたのか、ふと疑問が新一の口をついて出た。
「・・・なんで、東京にいるんだ。」
「明日、結婚式なんや。」
グラス半分ほどのビールを嚥下しながら、
「けっこん?」
「大阪からだと間に合いそうになかったからな、ホテル取ってもらって」
けっこん、ともう一度口の中で呟く新一に続けられた平次の言葉は聞こえてこない。
ただその言葉が自分の中にひどく重く沈み、胃の奥が痙攣するような痛みを起こした。
「・・・お前、結婚するのか?」
「は?」
ようやく新一は顔をあげた。色を失くした表情が平次の前に晒される。
動揺が視界をも揺らす。―――嬉しそうに笑う女の顔、手を振りお前を呼んだ。
幾重にも浮かぶそれに応える平次の笑み、それは内臓を抉られるような苦しさを新一にもたらす。
同時に浮かぶ幼馴染との最後の夜。
哀しい笑顔と、今夜の平次と、それらが脳裏に交差してぐちゃぐちゃになった思考をより掻き乱す。
「あんなふうに壊しておいて、お前だけ、」
喉が震える。うつろう視線は目の前の平次でなく過去を映す。
「何言うて、自分、大丈夫か?」
「お前があんなこと言わなけりゃ、蘭にだって。―――お前が。」
「蘭ちゃんがどないしたん?工藤、お前・・・」
とりとめなく呟き続ける新一に危惧を抱いた平次が、新一の前に駆け寄りもう一度「工藤」と名前を呼んだ。
新一を心配する心遣いに嘘はなく、その目を正面から見据えた時、新一の何かが弾けた。
立ち上がり、平次の胸倉を掴んでがなる。
「てめえのせいじゃねえか!」
腸が煮えるようだ。怒りが溶岩のように燃えて内臓を溶かしていくかのよう。
「てめえが壊した!何もかも!」
溢れて、目頭が熱い。
「蘭は俺から離れた。俺はもう戻れない。あそこは、あそこだけが、」
蘭の笑顔が脳裏に浮かぶ。ふわり浮かぶそれを、いつも見つめていた。
抱きしめると壊れそうだった。触れないようにして、守っていたつもりでいた。
いつも別れ際に浮かぶ、物言いたげな瞳を見ない振りして。
「・・・俺に、優しい場所だったのに・・・!」
怒りに任せて胸倉を掴んだ手が、するり力なく落ちる。
受け取れなかったチョコレートの箱を、淋しく笑いながら鞄にしまう様を止めることもできず、
ごめんね、と呟いた彼女に何を言うこともできないまま後姿を見送った。
心許ない淋しさはあれ以来止まない。
それなのに、その原因を作った人間が今それらを省みることなく、次へと足を踏み出そうとしている。
「工藤。」
戸惑う平次の声を掻き消すように、掌で両耳を塞いだ。
「うるせえ!呼ぶな!」
激昂は抑えることもできず、溢れる怒りそのままに叫ぶ。
「工藤、お前、」
「呼ぶな!・・・てめえが俺の名を呼ぶ。それがたまらなく嫌だ。」
ぎゅうぎゅうと耳を塞ぎ、目を固く閉じる。
世界を閉じて、目の前の男を自分から消してしまいたい。狂おしい衝動が、喉を焼いて吐き気がする。
「ひどい言われようやな。・・・しゃあないけど。」
お前だけは俺の気持ちを拒否する権利がある。
ぽつり自分に言い聞かせるように言う平次が、ふいに表情を険しいものへと変えた。
「なら、なんで来たんや。」
搾り出すような声で、けれど荒げることなく。
ぐうと何かを飲み込むようにして平次は目を閉じ、一つ大きく息を吐いてもう一度新一へと向き合う。
その目には事件の時に浮かぶ、何かを追うような、そして何もかも見逃さぬという意思に光る。
平次は腕を伸ばすと新一の両手首を掴み、耳を塞ぐ彼の手をそこから引き剥がした。
息がかかるほど近く、視線をそらすことの適わぬ距離に顔を近づけて詰問する。
「工藤の話す内容、変やで。何で蘭ちゃんとおかしなったんが俺のせいなんや?」
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自分が出した言葉だろうか、何故に?
からからとした咥内を潤すよう何度も唾を飲み込み、俯いて自分の靴だけを見る。
何を恐れているのか、平次の顔を見ることができない。
耳鳴りが響いて、拳に汗が滲んでいく。
まるであの時のよう。酔いが廻るのか視界がぐわりと揺れて、息を吐くのすら苦しい。
何かに急かされるようにもう一度歩き出そうとするが、踏み出した足がよろめき下半身が崩れる。
体のバランスが傾いで、倒れながら平次の駆け寄る姿が視界に斜めに映るのを見た。
倒れた、と自覚したまま意識を失う。
工藤と名前を呼ぶ平次の声が、不思議と耳に馴染んで心地よかった。
こぽり、水に浮かびあがるような感覚がして、自分が目を覚ましたことを悟る。
見たことがあるような部屋に、懐かしさを感じる後姿があった。
上着を脱いでシャツだけの背中がわずかに屈められ、肩甲骨がすらり突き出る。
珍しく平次はスーツを着ていたのだと、このとき初めて新一は気がついた。
続けて自分がベッドに寝かされていることを、そして彼がそのベッドに腰掛けていることを知る。
手を伸ばせば届く距離。
そう意識した途端、ぴくりと指が反応した。
その気配を感じたのか、平次が振り返り新一へと視線を向ける。
「起きたか。」
呟いて立ち上がり、ベッドサイドに置かれた椅子へと移動する。
けれど座ることもなく、背もたれに手を置いてよりかかるだけだ。
立ったまま、新一を上から見つめる。
色のないその目が新一をざわつかせる。
まだくらくらとする頭を軽く振り、先程の平次のようにベッドへと腰掛けて上半身を起こした。
片手で顔を覆い、俯いたままざっと室内を確認する。
見たことがあるような気がしたのは当然、どうやらホテルの一室のようだ。
乳白色の壁紙と白木の柱が、室内灯の白い灯りを反射していて少し眩しい。
「水飲むか?」
「・・・いらねえ。」
気遣う平次の声を撥ね退ける。
如実に拒絶を表したそれが気に障ったか、ぴくり眉をあげた平次が吐き捨てるように続ける。
「ずいぶん派手に遊んどるみたいやな。この目で見るまでは信じられへんかったけど。」
こっちまで噂が届いとるわ、と溜息とともに続けられらた声には非難の色が滲む。
遠まわしに蘭とのことを質問されているようで、神経がささくれる。
「てめえには関係ねえ。」
「・・・さよか。」
室内に重く沈黙が続く。
あの日からおかしくなった時間が、そのまま今の二人にのしかかるようだ。
椅子にもたれたまま視線を横に流し、自分を見ようとしない平次になお苛立ちが募り行く。
もう片方の手にはじわり汗が滲み、その手を何度も握り締めながら唾を飲む。
帰る、と一言自分が言えば、打開されるであろうこの状況。
内側からは誰でも開くことのできる扉を開けて、このままタクシーに飛び乗ればいい。
まだ間に合うはずなんだ。
そう理性が訴えるのに、どうしてかエレベーターでの邂逅が何度も浮かんできて消え、
ベッドから立ち上がることもできないまま、時間だけが過ぎていく。
しばらくして、平次が立ち上がった。新一の体を緊張が走り、びくり肩を揺らす。
平次は一瞬だけ足を止めたが、かまわず冷蔵庫の扉を開けて中からビール瓶を取り出した。
ガラス瓶同士の硬質な音が静かに部屋に響き、続けて栓を抜く音。
グラスに注いだビールを新一が座るベッドのサイドテーブルに置き、続けて自分の手にあるグラスにも同じようにビールを注ぐ。
平次が一気に呷る様子を視界の端にとめつつも、新一はことりと置かれたグラスに手を伸ばす気にもなれない。
しかしそれを気にする様子もなく、黙々と二杯目を注いで再び一気に呷る。
はあ、と大きく息をつくと、ぐいと袖で口元を拭った。
「・・・まさか、こんなとこで会うとはな。」
自嘲するかのように口元を歪めて呟く平次に、そういえばここは彼のテリトリーではないのだと今更ながらに思い出す。
再度グラスにビールを注ぐ音が警戒心を緩めたのか、ふと疑問が新一の口をついて出た。
「・・・なんで、東京にいるんだ。」
「明日、結婚式なんや。」
グラス半分ほどのビールを嚥下しながら、
「けっこん?」
「大阪からだと間に合いそうになかったからな、ホテル取ってもらって」
けっこん、ともう一度口の中で呟く新一に続けられた平次の言葉は聞こえてこない。
ただその言葉が自分の中にひどく重く沈み、胃の奥が痙攣するような痛みを起こした。
「・・・お前、結婚するのか?」
「は?」
ようやく新一は顔をあげた。色を失くした表情が平次の前に晒される。
動揺が視界をも揺らす。―――嬉しそうに笑う女の顔、手を振りお前を呼んだ。
幾重にも浮かぶそれに応える平次の笑み、それは内臓を抉られるような苦しさを新一にもたらす。
同時に浮かぶ幼馴染との最後の夜。
哀しい笑顔と、今夜の平次と、それらが脳裏に交差してぐちゃぐちゃになった思考をより掻き乱す。
「あんなふうに壊しておいて、お前だけ、」
喉が震える。うつろう視線は目の前の平次でなく過去を映す。
「何言うて、自分、大丈夫か?」
「お前があんなこと言わなけりゃ、蘭にだって。―――お前が。」
「蘭ちゃんがどないしたん?工藤、お前・・・」
とりとめなく呟き続ける新一に危惧を抱いた平次が、新一の前に駆け寄りもう一度「工藤」と名前を呼んだ。
新一を心配する心遣いに嘘はなく、その目を正面から見据えた時、新一の何かが弾けた。
立ち上がり、平次の胸倉を掴んでがなる。
「てめえのせいじゃねえか!」
腸が煮えるようだ。怒りが溶岩のように燃えて内臓を溶かしていくかのよう。
「てめえが壊した!何もかも!」
溢れて、目頭が熱い。
「蘭は俺から離れた。俺はもう戻れない。あそこは、あそこだけが、」
蘭の笑顔が脳裏に浮かぶ。ふわり浮かぶそれを、いつも見つめていた。
抱きしめると壊れそうだった。触れないようにして、守っていたつもりでいた。
いつも別れ際に浮かぶ、物言いたげな瞳を見ない振りして。
「・・・俺に、優しい場所だったのに・・・!」
怒りに任せて胸倉を掴んだ手が、するり力なく落ちる。
受け取れなかったチョコレートの箱を、淋しく笑いながら鞄にしまう様を止めることもできず、
ごめんね、と呟いた彼女に何を言うこともできないまま後姿を見送った。
心許ない淋しさはあれ以来止まない。
それなのに、その原因を作った人間が今それらを省みることなく、次へと足を踏み出そうとしている。
「工藤。」
戸惑う平次の声を掻き消すように、掌で両耳を塞いだ。
「うるせえ!呼ぶな!」
激昂は抑えることもできず、溢れる怒りそのままに叫ぶ。
「工藤、お前、」
「呼ぶな!・・・てめえが俺の名を呼ぶ。それがたまらなく嫌だ。」
ぎゅうぎゅうと耳を塞ぎ、目を固く閉じる。
世界を閉じて、目の前の男を自分から消してしまいたい。狂おしい衝動が、喉を焼いて吐き気がする。
「ひどい言われようやな。・・・しゃあないけど。」
お前だけは俺の気持ちを拒否する権利がある。
ぽつり自分に言い聞かせるように言う平次が、ふいに表情を険しいものへと変えた。
「なら、なんで来たんや。」
搾り出すような声で、けれど荒げることなく。
ぐうと何かを飲み込むようにして平次は目を閉じ、一つ大きく息を吐いてもう一度新一へと向き合う。
その目には事件の時に浮かぶ、何かを追うような、そして何もかも見逃さぬという意思に光る。
平次は腕を伸ばすと新一の両手首を掴み、耳を塞ぐ彼の手をそこから引き剥がした。
息がかかるほど近く、視線をそらすことの適わぬ距離に顔を近づけて詰問する。
「工藤の話す内容、変やで。何で蘭ちゃんとおかしなったんが俺のせいなんや?」
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プロフィール
HN:
こば
性別:
女性
自己紹介:
二児の母。2009年に唐突に平新に。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
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