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東西名探偵/平×新のSSブログです。幸せイチャイチャ中心。                                                               死にネタ別れネタなし。初めての方はカテゴリーより「はじめに」をクリックしてください。                                                 ご意見、ご感想等ございましたら カテゴリー下にあるリンクのWEB拍手や文末コメントにてお願いします。
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2026/07/01 (Wed)
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2010/04/05 (Mon)
アルコールが苦く喉を通る。
耳に馴染むピアノの音も、広く景色を映し出す窓ガラスに夜の光が散らばるのも、暗い室内に泳ぐ水槽の魚たちも、何一つ自分へと響いてこない。
「工藤様。」
バーテンが明らかに酒量を過ごしている新一へと、躊躇いがちに声をかける。
声は咎めるというよりも心配を滲ませたもので、そのことがより新一を苛立たせた。
荒れた気配を押し隠しつつ、無言でもう一度グラスを差し出す。
ベテランの彼はそれに肩をすくめることもなく、すっとそのグラスを下げて新しいグラスに氷を用意し始めた。
それを横目に見ながら、ふと溜息を零す。

自分でも理解できない衝動が、あの日以来何度も己の理を捻じ曲げる。
その時に浮かぶのは、決まって彼の暗い目だった。
あの目がいけない。
何度思い返しても、その都度焦燥に似たもどかしさが胸を這ってどうしようもなくなる。
カランと氷の音が響いて顔を上げれば、先程追加したドライジンのロックが透明に揺れる。
手を伸ばし躊躇いなく呷れば、先程までよりやや薄く感じる。
気遣いだろうそれに、バーテンへと目を向ければ軽く頭を下げた。
「お取替えいたしましょうか?」
「いえ、・・・すみません。」
その配慮に、少し酔いが冷めるのを感じる。
これを最後にして部屋でもとろうか、そう考えながらも、手にしたグラスを離すことができない。
とりとめなく巡る思考がアルコールを必要としている。

どうして自分は、このホテルから立ち去らなかったのだろう。
どうして彼が追って来なかった事に安堵しているはずなのに、こんなに苦い酒を呷っているのか。
どうして女の呼ぶ声に笑顔を向けたことや、その女が彼の何なのかが気に懸かるのか。

ぐるぐると同じ問いが何度も新一を囲い、その答えを考えようとするたびにまた平次のあの目に辿り着く。
ダメだ。これ以上考えるのはよそう。
謎を解くのは自分の本業であるはずだが、己を解析する心理学には不向きなのだとも自覚している。
アルコールで粘ついた思考を追い払おうと頭を数回左右に振り、
そのままカウンターに手をついて立ち上がろうとしたが、足に力が入りきらずよろめいた。
バランスを崩しそうになったものの、背後から力強く腕を引かれて倒れることは避けられる。
その勢いのまま背後に立つ男にぽふんとぶつかり、慌てて謝罪の言葉を紡ごうと新一は振り向いた。
「すみませ・・・」
なおざりに浮かべた笑顔が張り付いて、固まる。
そこにいたのは、一番会いたくなかったはずの男が立っていた。
「何しとん、自分。」
小さく、自分にだけ聞こえる声で新一に詰問する。
ざあと血が引く音が聞こえるような気がした。
反射的に逃げようと引いた腕を離さず、平次は突然からんとした笑顔になると、ひときわ大きな声で話し出した。
「いやー、奇遇やなあ工藤!俺も久々に東京来て、まっさか会えるとは思うてなかったわ!」
腕をきつく掴んだまま、その目に浮かぶ剣呑としたものを感じさせない口調。
「しっかし、まー珍しく酔うとるんか。俺も飲もうかと思うて来たけど」
口元に浮かぶ大仰な笑みも、今の新一にはひどく怖いものに見えた。
「そないなら、俺の部屋で飲みなおそーや♪」
ぎゅうと腕を掴む手に力がこめられた。その手を振りほどくことも、首を振ることもできない。
「あ、おっちゃん。勘定は俺んとこにつけといて。」
苦笑するバーテンも、人懐こい関西弁のためかその目が笑っていないことに気付かない。
手を振り、にこやかに笑顔を撒きながら、
けれどけして腕を掴む手の力を緩めることなく、新一を半ば引きずるようにして平次は店を出た。


店を出ると、二人とも無言でエレベーターの前に立つ。
片手で新一を捕えたまま、ボタンを押して平次は新一とともにエレベーターへ乗り込んだ。
内部に並んだ階数のボタンを選び、すぐに閉じるよう扉の閉鎖ボタンも押す。
慌てたように店からエレベータに乗ろうとした客がいたが、あえて見ないふりをしたようだ。
木目調をあしらった金属の扉が閉じられたことを確認すると、ようやく平次は新一の腕を離した。
「アホか、お前は。何しとんのや。」
「・・・てめえには、関係ねえ。」
かろうじて出た声が喉にひりつく。
「店の奥にいたんはどこぞのアホな記者やぞ。あのままやったら、名探偵の泥酔記事が載るわ。」
「ずっといたのかよ。」
「たまたまや。ついさっき店に入ったら、カウンターでクダまいとる男がおって、それをこそーっと写真撮ってるのがおったからな。」
ふうと息をついて、エレベーターの壁にもたれた平次が、ちらと新一を見る。
「お前の部屋、何階や。」
「・・・部屋なんて、とってねえ。」
「一緒におった女んとこか?」
「もう帰らせた。」
「・・・なら、タクシー乗って帰れ。」
平次の指が、ロビーを示すボタンを押した。
灯りの点いたそれが、新一をひどく落ち着かない気にさせる。
ちん、と音が鳴り、平次の部屋の階であろうところでエレベーターが静止する。
開く扉。踏み出される足。
「余計な手出しして、悪かったな。」
振り向かず、ひらりと手を振り平次はエレベーターを降りた。
扉が閉まる音がして、下降していく微かな稼動音に平次はようやく振り返り、目を見張る。
そこには俯いたままの新一が立っていた。
エレベーターの扉は確かに閉まっている。ならば自分の意思で降りたのか。
混乱しかけた現実に平次が口を開こうとした時、新一の声がそれを遮った。
「てめえの部屋で飲みなおすんだろ?」


04

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こば
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自己紹介:
二児の母。2009年に唐突に平新に。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
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