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東西名探偵/平×新のSSブログです。幸せイチャイチャ中心。                                                               死にネタ別れネタなし。初めての方はカテゴリーより「はじめに」をクリックしてください。                                                 ご意見、ご感想等ございましたら カテゴリー下にあるリンクのWEB拍手や文末コメントにてお願いします。
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2026/07/02 (Thu)
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2010/03/14 (Sun)

「ねえ、コナン君。どうしてヒントの帽子で浮かぶイメージが平次くんなの?」
「へ?だって、帽子っていったら、は・・・じゃねえ。平次兄ちゃんでしょ?」
「シャーロックホームズとかでもよかったんじゃないかなーって。ほら新一はホームズ好きだから、新一に似てるコナン君もホームズをイメージするのかと思ってて。」
「・・・・・・・・・・・ああ、そうだ、ね。」
「本当に服部君のこと好きなのねー。」
「ばっ、違えーよ!じゃない、違うよ!たまたま何となく!何となくだってば!」
 

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2010/03/10 (Wed)

『僕を探しに』という絵本のネタバレを含んでいます。
今後読まれる予定のある方、ご注意下さい。


 

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2010/03/08 (Mon)
集団の中から幾人かが走り、周囲の様子を伺う。
誰もいないことを確認すると後ろにいる集団へと腕をあげて合図を送り、それに頷いた数人が肉食獣のような笑みを浮かべた。
標的となる家の門を壊そうと手にしたバッドを振り上げた刹那、男は腕を押さえて蹲った。
「痛ぇっ」
からんと乾いた音をたててバッドが地面へと落ちる。
「困ったもんやなー。やっぱ来おったか。」
コンクリートの塀の上に立つ一人の男の姿。街灯を背に、掌で石の礫を数個もてあそんでいる。
「誰だ!邪魔する気か?」
「ちょーっと警察の見張り解いてもろたら、のこのことまあ間抜けなことで。」
場違いな関西の訛りは、男たちの怒りに油を注ぐ。
「んだとぉっ!」
「これは仲間の報復だ。邪魔するならてめえも痛い目にあわせっ…」
平次は指輪だらけの拳を振り回しながら意気込んで叫んだ一人に、もてあそんでいた礫を弾いて額にぶち込む。
見事に命中して男は言葉半ばに倒れた。右手に持っていた缶がからんと音をたてて転がる。
「スプレー缶片手にご苦労なことで。」
塀の上に立つ男が自分たちの敵とようやく悟った男たちは、にわかに殺気立つ。
「てめえ、何もんだっ!」
緊迫した空気を心地よさそうに目を細めて受け止めると、にやりと笑みを深くして胸を張った。
「よお聞いてくれた。俺が西の名探偵、服部平次や。」
朗々と名乗りを上げるが、聞いた男たちの反応はいまひとつ。
少し沈黙があって、ぼそりと男の一人が呟く。
「知らんぞ、そんな名前。」
「な、」
あまりの返事に平次のバランスが揺らぐ。
ブロック塀の上で片足でぐらぐらとやじろべえのように揺れつつも、かろうじて無様に落ちるのは避けられた。
「ちょお待てぇ!お前ら本当新聞とか読まんのか。西の服部、東の工藤言うたらちったあ名の知れた探偵やぞ!」
「てめえ、あのガキの知り合いか。」
工藤の名前にはちゃんと反応するんかいっ、というツッコミは男たちの怒号で消された。
「うるせえっ!あいつのせいで俺らの仲間が何人パクられたと思ってンだ。」
「あの事件のせいで、せっかくの楽しいゲームもおしゃかになってよ。」
口々に身勝手な事情を叫びだす男たちを平次はうるさそうに、小指を片耳につっこんで胡乱に見下げる。
「港のベースまでダメにしちまいやがって。」
「あー、それ俺や。俺の仕業ですよって。」
「何イ!」
にこやかに宣言する平次に、男たちの殺気は増していく。
徐々にエスカレートしていく獰猛な気配とは反対にいっそう笑顔で平次は続ける。
「人気モノはつらいなー。ほんまもんのリクエストは俺やったようで。」
「馬鹿なヤツだ。飛んで火にいる何とやらだ。」
「虫や虫。日本語はきちんと使わんかい。」
「うるせえっ!前哨戦だ。やっちまえ!」
おおう、と唸るような声とともに、幾人もが同時に平次へと襲い掛かる。
ひょいっと塀から飛び降りると同時に二人に蹴りをかましがてら着地し、着地と同時に倒れた一人が持っていた大きなマグライトを蹴りあげて己の手にほおる。
手にしたマグライトは長さが50cmはあるだろう、そのライト側の付け根を持ってくるりと剣のように次々に向かってくる男たちへと向けた。
ナガモノを手にした平次の恐ろしさを知らない彼らは、人数や武器による己の優位を過信してバットや角切れを振り上げながら向かってくる。
にいっと平次の口角があがった。
「もうちょい、ちゃんと、勉強してこいやっ」
言葉が途切れる都度、濁った悲鳴をあげて一人ひとり倒れていく。
無駄のない動きで、急所を一撃する平次の狙いは的確だ。
地面にひれ伏す数人の中、残った一人が平次と相対する。
じりじりと後退しながらも、強気な姿勢を崩そうとしない男は少しでも平次の隙を誘うおうとしてか口を開いた。
「後はあんただけやな。」
「は、あのガキのとこにもきっちり報復の矢は放たれてるぞ。今頃お前のオトモダチはズタボロになってる頃だろうぜ。」
下碑た笑いを浮かべながら、逃げるタイミングをはかろうと後ずさる。
「工藤と俺はオトモダチと違うわ。」
すう、と呼吸を整えて丹田に力を落とす。
軽く曲げられた膝がヒュっと音を立てて伸ばされ、喚く男の延髄にきれいに足が入った。
気を失い倒れる男を見下ろし、周囲にもう動ける者がいないことを気配で確認すると平次は呟いた。

「――― 相棒や。」


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2010/03/07 (Sun)
もうそこまで火も煙も迫っているビルの中、最上階のパーティ会場にも仕掛けられているという爆弾の爆破まで残り時間もあと僅か。
大丈夫だよと笑う彼は、この状況ににも関わらず笑顔でいて、なおかつここから皆を助け出すことを考えていた。
そして私に、時間を数えてくれという。
私にしかできないことで彼を、皆を助けることが出来るというのだ。


赤い車の前で、彼は私にヘルメットを被せてくれた。
そっと目を閉じて、それを受け入れる。
ああ、花嫁のベールのようだと思った。



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2010/03/06 (Sat)
隣で眠るおっちゃんの鼾はうるせーし、かといって寝返りをうてば目に毒の蘭の浴衣の寝姿。
泊ることは計画になかったから、いつもは鞄の底にいれてある文庫本もなく、
かといってこんな夜中に、子供の姿のまま新聞を読みにいくわけにもいかない。
「だー、もう。」
ガシガシと髪をむしると、携帯電話を持って布団を抜け出した。
眠れないこんな夜は、ヤツにでも連絡をとってやるか。

嬉しそうに電話に出るだろう彼の声を思い浮かべると、知らず自分にも笑みが浮かんだ。

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2010/03/06 (Sat)
最近、平次の様子が変なんよ。
急に青ざめたり赤くなったりして、宙を睨んで唸ってるときもあるし。
この間なんて、通りがかった店のショーウィンドーを見て、固まったかと思ったら
なんや、「工藤、すまんー!」て走って逃げてしもたん。
でもそこにはぬいぐるみがディスプレイされてるだけで、工藤くんに関係するもん全然あらへん。
うーん、むっちゃかわいいウサギのぬいぐるみならあったけど。
な。変やろー?

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2010/03/02 (Tue)
うさぎ萌え・・・!

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2010/03/02 (Tue)

「なんでやの!」
自分に向けられていた好意が愛情だったなんて、今始めて知ったみたいな顔で立っている男に涙ごと言葉を投げつける。
「なんで工藤くんなんっ。他にいくらだって平次なら選べたやろ?」
特定の女性とつきあわなかったのは、自分を選んでくれるかもしれないという期待だと思っていたなんて馬鹿みたい。
とても大事にされていたのがわかったから、それだけで有頂天になっていて。
「服部の家はどうすんの?あんた長男やろ?親戚連だって黙ってないで。」
両親にも告げたから、おまえにも一応報告しとくなんて言うから、何のことかと思えば一緒になる人がいるという。
もしかしたらこんな日が来るかもしれないと、何度も何度も繰り返し考えてきたからとうとうこの日が来たかと、握った手に嫌な汗を感じながら平次の報告を聞いた。
どんなひとなの、と抑えきれない震えた声で問えば、あまりに意外な答えに怒りがこみ上げた。
「…信じられへん。なんでやの?ホモだったん?」
アホウと小さい声で返す平次に、また怒りが募る。
それじゃあ、なんで私やないの?
「だったら女の方がええやん。なんでよりにもよって工藤くんなの。」
男にも劣るというのか、自分は。
他の男から告白だって何度もされた。スタイルもいいって、褒めてもらったことも多くある。
きちんと美容にも気を使って、料理の腕も磨いて、いつか彼の隣に立つ日を夢見て。
「結婚もできせん、胸だってない。子供だって産めないやないの!そんな人間と一緒になったかて、ええことなんてひとつもない。」
「女と結婚すれば子どもができるわけでもないやろ?」
和葉の言葉を黙ったまま受け止めていた平次が、ふいに言葉を挟む。
静かに、けれど有無を言わせぬ重さを含んだ言葉に和葉も口をつぐんだ。
「産めずに苦しんでいる人がいるのも知っているのに、そんな言葉つこうたらあかん。」
「・・・せやかて、」
溢れる涙もそのままに、ぐうっと拳をにぎって悔しさに震わせる。

「女は子供を産む道具とちゃう。」

真正面から和葉を見据える平次の目は、その声と同様とても静かなものだった。
見ていられなくて、俯けばまた涙がぽろぽろと頬から零れて落ちた。
拭おうとしてか平次の手がわずかに動いたが、すぐにその手を下げてまた立ち尽くす。
しばらく和葉の押し殺した嗚咽だけが続いて、平次は彼女の涙が少し落ち着くまでじっと待っていた。
しゃくりあげる声が小さくなるのを合図にしてか、平次が呟く。
「俺には工藤しかおらん。」
その言葉がつらくて、和葉は首を左右に振った。

「悩まんかったわけやない。けど、どうしても工藤がよかった。」
いっそう強く首を振って、また泣き声を大きくした。何も聞きたくない。
けれど、平次は声を荒げるでもなく淡々と言葉を紡いだ。
和葉が一言も聞き漏らさないことを信じているし、・・・知っている。
「長男に生まれて、きちんと子供こさえて、家継ぐんも大事なことだってわかってた。」
本当は聞きたくない。
泣いて泣いて、その声に少しでも彼が揺らげば、そこに飛び込んで奪い返したい。
「おかんやおとんが大事に俺を育ててくれたみたいに、家族がどんだけ必要かもわかっとるつもりや。帰る場所のありがたみをここ数年は特に感じたわ。」
けれど、と言葉を切り、和葉の泣く声が収まるのを待つ。

自分でもわかっている。これはただのワガママ。ヒステリー。
でも平次は、平次のことちゃんと知ってる私ならわかると思って話してくれている。
かっこわるくとりみだす私でも、変ることなく彼は今までと同じようにいてくれている。
掌に爪が食い込むほど強く、もう一度きつく手を握り締める。
強くあれ、彼の傍にいるために強くあれと何度も言い聞かせて背筋を伸ばす。
勢いあまって睨むように顔をあげれば、優しい顔をした平次が苦笑した口元を隠さずにいた。
その口元が軽く開いて、小さくありがとうと呟くのがわかった。
顔を上げた自分を褒めたい、そんなふうに思えた。
「俺は他のもん全部なげうってでも、あいつの傍におりたいと思った。」
私だってそうや!プライドも何もかも、全部捨ててでもあんたが取り戻せるんなら。
「なあ、たった一人に会えた。それは俺にとってもめちゃくちゃ幸せなことだったんや。」
私にだって、あなたはたったひとりのひと。
最後まで謝罪の言葉を口にしない優しさが憎いくらい。

「男とか女とかってことはとても重要だけれど、それを超えるくらいあいつのことが好きなんや。」

――― たったひとり、大切な人。

浅ましく泣いて縋ってでも、取り戻したいあなた。
けれど、もうこの手には取り戻せないほど、深く他の人を好きなあなた。

「・・・ええわ。もう。むちゃくちゃええ男と結婚して、かわいい子こさえたる。」
涙がまだ止まらない。悔しい。やっぱまだ、むちゃくちゃ好きや。
でも好きだからこそ。
「すごーく幸せな私の姿見て、むっちゃ後悔するとええわ。」
吐き捨てるような口調に、眉を下げて苦く笑う平次の表情が少しやわらいだ。
負け惜しみの口調の祝福は、けれどきちんと平次に届く。
「ほんま、アホやね。」
「ん。」
「アホやわ・・・。」

こんなに痛む胸も、彼のものなのが悔しい。

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2010/03/02 (Tue)
でれっとした顔を隠そうともせず、高木が携帯電話を眺めている。
事件が解決し、今日はもう少ししたら帰宅できることを報告しようと携帯電話を持ったはずだが、二つ折りのそれを開いた途端ににまりと笑ったままだ。
不気味に思った新一が傍によると、携帯電話の待ち受け画面にはもうじき1歳になる高木の娘が満面の笑みを浮かべている。
「…高木さん?」
おそるおそる声をかけると、びくっと背中をゆらして高木が振り返った。
「あ、ごめん。工藤くんかっ。本当ありがとう!今日はきちんと帰れそうだよー!」
嬉しさを隠そうともせず、電話に頬ずりしそうな勢いだ。
「いえ。娘さんですか?かわいいですね。」
「そうだろう!すごくかわいいんだよ!もうこの世のものとは思えないね!」
「…はあ。」
「もうじき奥さんも育児休暇を終えるから、保育園の予約をしてるんだけど。どこも満員らしくて困ってるんだよー。」
でれでれとした相好のまま、矢継ぎ早に子供のかわいさを語り始める。
「工藤君も早く結婚して子どもをつくるといいのに。すごくすごくかわいいよ。」
結局電話に頬ずりし始めた高木に、曖昧に笑って見せながら新一は美和子さんによろしくといい置いてその場を離れた。

似たようなことなら、もう耳にたこができるほど聞き飽いている。
子供ができた人間は、その幸せを他の人間にも知ってほしいと子供のいない人間に子供を作れ作れとはやし立てるものだ。
『ねえ、新一。』
ふと、母親の言葉が蘇る。
平次との事を話した後、しばらくしてのことだった。

『私はね、生まれてきて一番幸せだったことは優作に会えたことよ。』
窓の外に揺れる楡の木の葉を眺め、ソファに座ったまま彼女は言葉を募る。
『その次は新一に会えた事。この手にあなたを抱いたとき、本当に嬉しかったの。』
木漏れ日が髪を照らし、明るい栗色の毛が光を弾いているのを新一はきれいだなと思って見ていた。
『あなたが小さい頃、家の中で毎日笑いが絶えなかった。怒ったり泣いたりもしたけど、優作と二人で本当に本当に楽しくて幸せな日を過ごさせてもらったの。』
今でも、もちろんそうだけど、と振り返りながら有希子は少し淋しげに笑った。
『あなたが、私のようにたった一人の誰かに会えたのなら、それはもうとても幸せなことよ。反対はしない。』
有希子は立ち上がると、新一の傍へと歩いて近づく。
『でもひとつだけ。私たちがあなたを育てたときの幸せを、命が繋がる実感と喜びを、あなたが味わえないのを残念に思うわ。』
今ではもう背が自分よりも高い青年の頭を、よしよしと2回撫でて母親の顔でもう一度微笑んだ。

考え事をしながら歩いていたせいか、ポケットの中にいれていた電話が鳴っていたことに気付くのが遅れた。
ごそごそととりだしているうちに音は途切れ、着信を確認すれば平次からのようだ。
あいかわらずタイミングのいいことだ。ふと口元に笑みが浮かんだ。

――― たった一人に会えたことは、とても幸運なことだと思う。

失うものは、あるだろう。
けれどそれは相手が平次だからではない。
誰が相手でも、結局のところ失うものもあれば得るものもあるのだ。
少しその比率が一般とは違っていても、探偵である自分たちはもともと一般的な生活などできやしないのだからイーブンだ。
同年代の世代の親が顔をほころばせて孫の話をしているところを見れば、やはり自分の親に孫の姿を見せられないのは申し訳ないと思いつつ、譲ることのできないものはどうしてあるのだから仕方ない。

電話を手に握ったまま、新一は空を見上げて瞠目した。
口元には消えることのない笑み。
知ることのない幸せは、知ってしまった幸せにはかなわない。
少しだけ痛む胸も、もう、たったひとりのものだから。

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2010/02/28 (Sun)
「ほんと、ひでえ目にあったぜ。」
「まあでも、事件も解決。その女の子もかわいかったんやろ?ええやないか。」
「ばーろー。耳をずーっとひっぱられてみろ。うさぎになるかと思ったぜ。」
「・・・・・・うさ・・・ぎ・・・・」
「んだよ。服部?おい、服部。話きいてんのか?」
「・・・ん。ああ・・・・・・・・。」
「おい?」
(ちょっと平次、どうしたの?鼻血がでとるやないの。)
(なんでもないて、おかん!あっちいっとって!)
「服部・・・?」
「すまん、工藤。またかけるわ。」

「・・・・?」

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2010/02/27 (Sat)
夏の海、眩しい陽射しが明るい青に反射して煌く。
事件を解決したお礼にと、沖縄に招待された平次が新一たちを誘って海へとやってきた。
さっさと着替えを済ました二人は、砂浜にシートを引いて荷物を下ろしながら、
抜群のプロポーションをほこる幼馴染たちが水着に着替えるのを待っていた。
二人ともサーフパンツに上着を羽織るだけのラフないでたちだ。
新一、と遠くから呼ぶ声がして、そちらを二人して振り返ると、混みはじめた海水浴場で二人を見つけにくいのか、きょろきょろと周囲を見渡す女性陣を発見する。
「蘭、遠山さん、こっち。」
新一が手を振って二人を呼ぶと、気付いた二人がこちらに歩いてくる。
腕を上げたせいで長袖の上着から新一の腕が顕わになると、平次は眉をしかめてその腕を睨んだ。

「なんや、なまっちろい腕してんなー。」
「てめえが黒すぎるだけだろう。」
「あほう、細すぎ言うてんのや。この腕なんか見てみい。」
新一の腕を取ると、自分の腕に並べてにやりと笑う。
「細っいこと、もうちょい鍛えたらどうや。」
「てめえが剣道で上半身ばっか鍛えてるからだろう。足は俺のが太えよ。」
ぐいっと水着のため、隠されていない足を突き出す。
白黒並べてみれば、確かにやや新一のほうが足が太い。
ムっと平次が口ごもると、ふふんと新一は鼻で笑う。
「もうちょっと走りこんで鍛えたらどうかなー?」
「肩幅は俺のが広いで。」
すかさず平次が新一の肩を両手で掴みながら言えば、お返しとばかりに新一は平次の腹をつついた。
「腹筋の割れ目は俺の方が深い。」
「アホいえ、俺のがきっちり割れとるわ。」
「体脂肪の差じゃねえの?お前俺より重いじゃん。」
「全部きっちり筋肉じゃ、ぼけっ!それに体重があるのは背が俺のほうが高いからや。」
「ほんのミリ単位の話じゃねえか。」
「そこが重要なんや。」
「靴のサイズは一緒なんだよなー…。」
「足の長さは俺のが長いで。」
「ばーろー。俺と同じじゃねーか。つまり身長分俺のほうが長いってことだ。」
借りた服はサイズの長さで困ることはなかったと鼻で笑う。
「そんなことないやろ。」
ぴたっと新一の体に自分の体をくっつけて、足の長さを競う。
「ほれみい、俺のがちょっと長いやろ。」
「サーフパンツでよくわかんねえよ。」
「ケツの付け根の位置が俺のほうが高いって!」
「はあ?俺の方が高いだろ?」
「俺の脚の付け根はここや、ここ。」
手刀をつくってバシバシと自分の足の付け根を水着の上から叩く平次に、
「ほとんど同じじゃねーかっ!俺のはここだぜ?」
自らも手刀で自分の足の付け根を水着の上から新一は示す。
ギリギリとお互いにらみ合っていたが、ふいに同時に腕を組んで正面から向き合う。
「…・・・埒があかねえな…。」
「こら、あれやな。きっちり勝負つけんと」

燃え上がるライバル意識に集中しすぎて、幼馴染の二人がすぐそばに到着したのにも気付かない。

「こっちのサイズできっちり勝負したろやないか!」
「望むところだ。絶対負けてねえ!」
水着にバッっと手をかける、と同時に。

「やめんかぁ!」
「いいかげんにしなさい!」

四方投げと後ろ掛け蹴りが決まり、男二人は砂浜に沈没した。



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2010/02/20 (Sat)

隣に立つ男が遠くを見る。
少しだけ眉を寄せて、目を凝らしてじっと遠くを。
色濃い肌の拳がきつく握り締められ、
その腕に浮く血管が堪えているものを知らせている。

夜の海。
暗い空から冷たい風が凪いで、吐く息を白く染めながら言葉ごとまた空へと攫う。
―――犯人を見逃すべきだったのか、今なおあの男は迷っている。
自分の判断が自分にとって最上のものであったかどうかを、考えて考えて考えあぐねて。
答えの出ない問いは、ただ深く深く己のうちに沈んでいく。
それは悲しみに近い感情だろう。
けれどそれに同情することはない。

新一はできるだけ平然と、そしてできるだけ自然に彼の隣に立ち続ける。
本当は一人でいたいのかもしれない。
夜の海に呼ばれてしまうような、弱い男でないことも知っている。
けれど、たぶん今、この男の苦しみを誰よりも感じるのは自分だ。
それをより近くで共有したいと願うのは、自分のわがままだろうと自嘲する。


――― 一人の男が死んだ。
家族の墓の前で倒れている男の体は、赤い雪が覆っていた。
ひどく痩せこけた顔は蒼白で、眉間に深く皺が刻まれて苦しみながら死んだことは誰の目からも明らかだった。
死因は失血死。刃物で己の首を裂き、その血で墓石に「怨」とだけ書かれている。
彼は数年前に、平次が関わった事件の犯人だった。

その事件で殺されたのは、暴力団の男だ。
以前別の事件で容疑者として名前があがりながら証拠がみつからず、犯人としてあげることのできないまま数年が過ぎた。
墓前で死んだ男は、暴力団の男が容疑者としてあがった事件の被害者の家族だった。
妻と幼い子供の二人を殺されて、けれど警察を信じて犯人が逮捕されることをひたすら待っていた。
毎日仏前に話しかけながら、来る日も来る日も警察へと通いつめて、事件の風化を避けながら。
そう、事件を担当した警官と、その暴力団の癒着を知るまでは。

憎しみを募らせた男は妻と子供の敵を討つべく殺人を計画し遂行したが、平次によってその計画の全容を暴かれ、殺人犯として男は刑務所へと送られた。
しかし、そこには男の属する暴力団団員も数名収容されており、仇討ちと証したひどいリンチを繰り返し繰り返し受けることとなる。
男は、少しずつ衰弱し精神の均衡を崩したまま釈放の日を迎えた。
おりしも不況の波が吹き荒れる時代、前科を持つ男を雇う会社はなかった。
少し家族への愛情が強い、平凡な会社員であった男はその愛する家族を殺されただけでなく、
犯罪者として身を落としたがために、社会的に自分も殺されていくのに耐え切れなかったのだろう。
妻と子供の墓の前で自害し、果てた。

「何故、今ここで俺の罪を暴くんだ。それならあの時、あの男の犯罪を暴いてくれれば!」
逃げようのない証拠をつきつけた時、男がそう言って泣き崩れた姿を覚えていると平次は言った。
「怨」の文字は、事件を解いた探偵まがいの高校生へと向けたものだろうと死体を発見した土地の管轄の刑事は言った。
面白半分に探偵ごっこをきどって、自分の人生を狂わせたのだと。
それを示唆するように、彼がねぐらにしていたダンボールからズタズタに裂かれた平次の新聞記事が見つかっている。


自らが暴いた犯罪の結果をつきつけられることは、これからもあるだろう。
揺らぐ己の存在意義。しかしやめることもできない探偵という業。
自分たちには生きていくうえで不可欠なそれは、けれどただ謎を暴きたいというだけの子供じみた性でもあり、所詮正義の味方ではないのだということを思い知るばかり。
誰も死んでほしくない。けれど事件のない日々には耐え切れない。
せめて人が殺される前に、その事件を止めることができたら。

もっと早く気付いていたら。
もっと早く止められたら。

ぎり、と歯を食いしばる音が聞こえた。
ちらと平次を一瞥すれば、彼は少し震えている。
叫び出したい衝動を押さえつけているのか。

新一は海へと視線を戻した。どこまでも暗い夜の果て、その闇は今の彼の迷いのようだ。
星の光さえ吸い込まれていきそうな夜は、どこまで続くのだろう。
終わらない航海のように、海溝へと落ちた月光はどこへ辿りつくのか。

新一は目を伏せた。

慰めは必要ない。
それは俺たちには邪魔なものだ。
それら全てを背負う覚悟で、俺たちは現場に立つ。
ときおりこうして襲う現実、それこそが俺たちに必要なものだろう。

「朝が来たら、帰ろう。」
目を開けた新一は、囁く声で平次へと告げる。
寒風に身を晒す行為が自己満足の嘆きだと、二人とも知っている。
新一のほうを向くことも出来ないまま、平次は顔を歪ませて目を閉じた。
 






サイト名にもなっている「よるのはて」は、おがきちかさんの「landreall」にある「夜の果ては朝だよ。」というセリフからいただいています。
竜胆の持つ刀の名前「夜の果て」、その名前が朝を示すのだと笑うDX。とてもすてきなシーンなのです。

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2010/02/14 (Sun)
待ち構えていたインターフォンの音に扉を開くと、そこには途方にくれるという表情の平次が立っていた。
来るとは思っていたし、それは微塵も疑うことのない事実であったがこの表情は予想外だ。
「どうしたんだよ。」
早く入れと促すと、ようやく玄関ホールへと足を踏み入れる。
けれどその歩みはのろのろとしていて、いつもの平次らしくない。
いつもより高いテンションで恥ずかしいセリフでも吐きながら来るだろうと予想していた新一は肩すかしをくらった気分だ。
実際そんなことをされれば、容赦なくこの黄金の右足を炸裂させる気でいて、スタンバっていたのだが。
うなだれたまま、平次はぼつりと言葉を零す。

「どうしてええか、わからんかった。」
「は?」
「初めてのバレンタイン、工藤がどうしたら喜ぶかわからんかった。」

こうしたイベントごとを喜ばないのだろうか。
それとも、きちんとしたほうがいいのだろうか。
新一から欲しい気持ちもあったが、彼は女性ではない。
ベッドでの立場を気にして、むしろチョコを渡すという行為には反感を持つのではないだろうか。
ならば、自分から渡して気持ちを形にするこのチャンスを逃すべきではないのか。
チョコより酒のほうがいいのか。
外国のように花を贈るべきなのか。

「お前が喜ぶんはどんなんか、わからんくて。とりあえず全部準備してみたけど。」
そう言いながら両腕にぶらさげていた大きな紙袋から、白を基調にした青と緑をほどよくあわせた花束、
そして新一の好む洋酒とビターのチョコレート。
どちらも東京についてから購入したのだろう、バイクでなく新幹線で来たのもこのためらしい。

「気持ちあらわすには全然足りんけど。」
どさりと、新一の腕へとおとされる品々。
「工藤、―――好きや。」
そう言うと平次は、プレゼントごと新一を抱きしめた。
寒風の中歩いてきた平次の体は冷たくて、けれど新一は指先まで温かくなるような錯覚に陥る。
すでに陽は暮れ始めている。
どれだけ悩んだのか、どれだけためらいながらここへ向かってきたのか。
告白する度胸があるくせに、変なところで小心者だ。
「ばーろう。」
額をこつんとあわせて、呟く。
せやかて、言い訳を紡ごうとする平次に、今度は容赦なく頭突きをかます。
痛ぇ、と蹲るのを思いっきり冷徹に見下すと、涙目で見上げてくる。
捨てられた犬が、ぴるぴると尻尾を丸めるよう。
ああ、いじめてえ。
一瞬かなり本気で浮かんだ考えを額の痛みとともに、首を振って追い払う。

「てめえは来るだけでよかったんだよ。とっとと上がれ。」
両腕がふさがるような荷物持たせやがって、抱きしめられないじゃねえか。
心の中だけで呟くと踵を返してリビングでと向かう。
「だいたいてめえは肌がチョコみてえじゃねえか。そっちを堪能させろよ。」
ぽろりと本音を零した途端、後ろで盛大に平次が転ぶ音が聞こえた。
「え、あ、」
目を白黒させながら起き上がろうとしている姿がかわいくて、新一がくすくす笑うと平次はむうと唇を尖らせた。
急いで靴を脱ごうとしているが、指先がかじかんでいてエンジニアブーツをうまく脱ぐことができないらしい。
とことんかっこ悪いところを見せているのが自分でもわかるのだろう、先程の言葉とあわせて顔は真っ赤だ。

今キスしたら、きっともっと赤くなるだろう。
新一はにんまり笑うと、その考えを実行するべく再び平次のいる玄関へと足を向けた。



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2010/02/14 (Sun)

今年は何個もらったとか、それを聞いて勝ったとか負けたとか。
そんなやりとりを去年はしていたはずだった。
電話の向こうで来年も見とれよ、と高らかに笑った男は目の前にひどく飢えた目をして立っている。

幾重にも張り巡らされた罠、古びた洋館の密室、綻びのないアリバイ。
依頼を受けて呼ばれた現場に、この男も呼ばれていた。
偶然の再会はたわいない嫌味の応酬から始まりながらも、互いに発見する証拠と推論。
背中を預けることのできる信頼と、飛躍する推理の連続に高揚する魂。
謎解きの披露を終えて、警官が犯人を洋館の外に連なるパトカーへと連行していくのを二人で見送ったのは2分も前ではないだろう。

携帯が鳴って、蘭からのメールを読んだ。
その腕をとられて、名前を呼ばれて。
「今日、会うんか?」
誰に、と聞くまでもない。蘭専用のメールの着信音を彼も覚えている。
ひどく苦しそうに問うのを不思議に思いながらも、当たりまえだろうと頷いた。
毎年この日は、彼女が手作りのチョコレートを必ず渡してくれる。
高校生の頃と変らぬ関係のまま、こういうのを恋人未満友達以上とでも言うのだろう。
居心地のよさに甘えて互いにそれ以上踏み込むこともなく。
それを幼馴染の彼女から聞いて、彼も知っているはずだろう。
きょとんとした表情の自分を見つめ、平次は苦しそうに顔を歪めて唸る。
喉から血を吐くような声がした。
「工藤、俺は。」
続けて告げられた言葉は到底信じられないもので、一瞬自分の足元が崩れる気がした。

信じられねえ、ほんまや、嘘だ、ずっと、言うな、――聞け。

低く押し殺した言葉の応酬は、昨日までとはまるで違う。
彼の言葉がわからない。
目を見るだけで次の言葉がわかるほど、何でも疎通できたはずだった。
なのに、どうして。

威圧されるのか、無意識に後ろへと後ろへと足が下がる。
こつり硬い感触にもうそこは壁だと気付き、動揺しつつもそれを表情に出すようなへまはしない。
けれど、目の前には平次が立つ。
壁に背中を預ける形になった新一の耳の横あたりに、彼の手が伸びて置かれた。
くどう、と唇が名前を形づくる。
蛍光灯の白い光によって描かれた彼の影が、自分を覆うようにして伸びる。
誰かを、こんなにも恐ろしいと感じたのは初めてだった。
震えそうになる足を心の中だけで叱咤しつつ、平次の視線から己の目をそらすことなく逆に睨みつける。
耳鳴りがする。
それがうるさいほどに鳴る心音だと気付けない。
肌が粟立ち、背筋が凍る。呼吸がうまくできない。
ぐらぐらと脳が煮立つような混乱の中、彼の声が唇に触れたのを境に新一はパニックになったのだと思う。
「俺は蘭が好きなんだ!」
叫ぶと同時に平次を殴りつけ、部屋を飛び出した。
去り際に後ろを一瞥すると、頬を抑えた平次がひどく暗い目をして床を見つめていた。
彼は、追いかけてはこなかった。



どうやって家に戻ったのか覚えていない。
すでに夜と呼べる時間、タクシーを降りた門の前には一人の少女が立っており、新一の姿を見つけて嬉しそうに微笑んだ。
「蘭…」
(俺は蘭が好きなんだ。)
叫んだ言葉が耳に蘇る。

「お帰り、新一。よかった、会えて。」
冷気に晒されて、鼻の先が赤い。
この寒空の下ずいぶん待ったことを愚痴りもせず、ただ会えた事実を晴れやかに喜ぶ姿。
わけのわからない焦燥に喘ぐ新一には、まるで救いの女神のようにも見えた。
あの頃と同じように待つばかりの彼女なら、自分に踏み込んでこない。
は、と笑いがこみ上げた。
どうしたの、と近づいてきた蘭を新一はぎゅうと抱きしめた。
「俺は蘭が好きなんだ。」
平次へと投げた言葉を繰り返す。
「新一…。」
腕の中で彼女の体が強張ったのがわかった。
嬉しくて、笑いたくて、でも気持ちが追いつかずに泣きそうになって、震えている。
細身の自分よりもひとまわりも細い、女性の小さな体。
膨らんだ胸の感触にも、女の柔らかさが溢れる。
すがるように、一層腕に力をこめて彼女を抱きしめた。
ほら、俺は蘭が好きなんだ。
抱きしめると、こんなにも落ち着くじゃないか。
はあ、とようやく体から力を抜くことが出来た。
あれからずっと体が緊張していたことがわかる。

あんなふうに、体全部がぐちゃぐちゃになるような思いはゴメンだ。
壊れそうだった心臓が、今、息を吹き返すようで新一は安堵の息をまたついた。
「らんがすきなんだ。」
言い聞かせるように繰り返す。

おれはらんがすきなんだ。

ふいに、蘭の体が先程と違う緊張に硬くなると、新一の体をそっと押し返した。
「蘭?」
長く待たせた終止符となるはずだった抱擁を、柔らかく、けれど確かな拒絶を持って離されて新一は動揺する。
俯いたままの彼女は何も言わない。
新一のひどく焦る気持ちを感じていないはずはなかったが、蘭は少しの間何かをこらえるようにして、それからゆっくりと顔を上げて新一の名前を呼んだ。

「新一は、色んな事件の真実を見抜く目を持っているよね。」
何を言い出すのだろうか、いや、これ以上何を言わせてもいけないのではないだろうか。
しかし切迫した彼女の声は、新一の声を喉へととどめる。
「でも私、新一の嘘だけは見抜けるんだよ。」
そう言って、蘭は新一を正面から見つめた。
―――どうして、そんな悲しそうな目をしているんだろう。
考える間もなく、すいと目の前に差し出されたのはシックな包装紙に包まれたチョコレートの箱。
派手な飾りは苦手だと、呟いていたのを覚えていたのか。
「受け取ってくれる…?」
震える声。ふわりと微笑んだその表情は何かしらの覚悟を湛えていて、例年のような遣り取りで過ごせるものでないことが知れた。
こくり、喉が鳴る。

俺は蘭が好きだ。
好きなはずなんだ。
それなのにどうして、この箱を手にとることができないんだろう。

真っ直ぐに見つめる彼女の目が揺らいで、ほろりと涙が零れていく。
それを止めることが出来るのも自分だけだということはわかっていた。
この箱を受け取れば、その涙を止めることができるであろうことも。
けれど同時に、彼女には自分の中にある彼女への気持ちを悟られているのだ。

自分でも自覚のなかったものを抉り出されて、新一は指すら動かすことも出来ずに立ち尽くした。

02

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2010/02/04 (Thu)

いや、もうこの状況をどうしていいのやら。

酒を過ごした自覚はある。
工藤だって、ずいぶんと勢いよく飲んでるなーとも思っていた。
しかし、しかしだ。

「だからどーして下から脱ぐんやっ!」
「俺は胸より足のほうが自信がある。」
「だからその理屈がもうわからんてっ!。」
「…靴下は残しただろう?」
「お前の恥じらいポイントはどこじゃーっっ!」

目の前にはシャツの一番上のボタンとネクタイは緩めているものの、
下半身は下着と靴下といういでたちの男が仁王立ちでいる。
目は潤んで、頬は紅潮。
上目遣いに睨んでいて男のクセに壮絶な色気を漂わせながらも、
その格好の間抜けさがなんともいえないシュールさをかもし出す。

「野球拳っちゅーのは、もっとこう恥じらいが必要だろーがっ!」
「じゃあてめえはどこから脱ぐんだよ。」
「そりゃあ、上着やシャツからやろ?」
「ふうん。」
頷くと工藤は、にやーりと笑う。嫌な予感。
「じゃあ、見本を見せてみろよ。」
「え?」
「俺の脱ぎ方が気にいらねえんだろ?お手本見せてみろって言ってんの。」
「なんでそうなるんやー!って、うわ、」
「上着からだっけー?このシャツからだよなー。」
「俺は上はこれしか着てないやろーっ!脱がすな、うわ、こら!」

とんでもない状況になりつつある気がする。
酔いが廻って動きが鈍いせいか、目の据わった工藤がやけに嬉しそうな表情をするせいか。
俺の抵抗が緩いのが一番の問題だ。
 

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自己紹介:
二児の母。2009年に唐突に平新に。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
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