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東西名探偵/平×新のSSブログです。幸せイチャイチャ中心。                                                               死にネタ別れネタなし。初めての方はカテゴリーより「はじめに」をクリックしてください。                                                 ご意見、ご感想等ございましたら カテゴリー下にあるリンクのWEB拍手や文末コメントにてお願いします。
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2026/07/02 (Thu)
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2009/09/28 (Mon)

新平的表現でお送りしますので、苦手な方はご遠慮下さい。
平次を押し倒して襲ってマス。でも平新ですけどっ!




 

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2009/09/26 (Sat)
もう、そんな季節なのか。
ゆらり川辺に揺れる彼岸花。
赤い赤い手が、こちらへおいでと招くように涼しげな風に凪いでいる。


前に見たのは、去年の秋。
バイクの後ろに乗って、二人で遠くまで走った。
服部の背中越しに流れていく景色は、風が洗うのか空気が透明度を増していた。
気持ちいい。
メットの隙間から風の鳴る音が、その強さをいっそう感じさせてくれる。
ふう、と息をついた。
途端、バイクの速度が上げられた。ワインディングは終わったらしい。
稲刈りを終えた田んぼが左右に広がる、まっさらなストレート。
落とされてはかなわない。バイクに乗ると、こいつはいつもより性格が野性味3倍増しだ。
ぎゅう、と腰を強く抱いた。
それを合図にしたか、ワァンと高い音がマフラーから流れる。
まだ速度あげる気かよ。
メーターをちろっと覗き見て、大仰にため息をついた。
こんだけスピード出すんだ。そりゃあ、俺に革ジャンよこすわな。

コンビニも自販機もない、山の途中の道。
ちょっとした展望台になっている切り立った崖の上でバイクは止められた。
片足をひょいと上げてバイクから身軽に降りる。
メットを脱ぐと、冷たい風が髪をすいて心地よかった。
俺から半歩遅れてメットを脱いだ服部は、そのメットをバイクのハンドルにひっかけた。
バイクの横にすらりと立つ長身。
黒の革パンはブーツカット。
それがごついブーツを合わすことで脚が細く見え、また上着も体のラインにあわせたかシングルの革。
もちろん黒で統一している。
革ジャンのジッパーを音を立てて下ろすと、インナーは彼の好きな色なのか、ダークグリーン。
褐色の肌によく映える。

一瞬、見惚れそうになった自分を心の中で叱咤する。
それに気づいたのか気づいていないのか、服部はにっかり笑って眼前に広がる景色を指差した。

紅葉の進んだ山々に、ふわりふわり銀のススキが波のように群生している。
けれど彼の指差すものはそれでなく、おそらくはその景色よりも下―――、山の端を埋め尽くす毒々しいまでに艶やかな赤。
薔薇よりももっと、闇を秘めた美しさを花弁に湛える彼岸花。

気づけば、いつの間にか空はじんわりと青を黄金色へと変化させている。
その光を受けて、雲さえも金属のように硬質な輝きを放っていた。

「これ、見せたくて。」
「ああ。」
指差さずとも、すぐにわかった。
しばらく二人、無言でその景色を見入る。
沈黙を破ったのは、服部が先だった。

「長い時間、すまんな。」
「いい。ちょっとケつが痛えけど許容範囲だ。」
服部は小さく噴出した。
「次は座布団敷いとくわ。」
「・・・・・・。」

秋の日はつるべ落としとはよく言ったものだ。
時間はそう経った気がしないのに、こうしているだけで空は紫と濃紺のグラデーションを描き出す。
服部はまだ、景色から目を離さない。
「おい。」
黒で統一された姿が夜に隠されていくようで、何故か俺は焦りを覚えた。

「暗くなると心配だ。てめえの運転は危なっかしい。」
「暗闇でもすぐわかるように、後ろのお前に白の革着せたんや。」
「てめ、俺は反射板かっ!」
肩を掴んでつっこんで、ようやくあいつの目が俺を見た。
闇を秘めた、暗い目。

「なあ。」
「―――言うな。」
太陽のようだったのに。

「・・・そうか。そうやな。」
淋しげに微笑する。横顔が儚い。
「赤い色、昔は嫌いやった。でも、この景色見て、ちょっと好きになったんや。」
「そうか。」

そうして、たっぷりと十分は黙ってから、帰ろうかと呟いた。



抱きしめればよかったんだろう。
わかっている。
そんなこたぁ、わかってた!

俺だって、俺だって本当は・・・本当は。

だけど、それは許されないことだとも知っていたんだ。
俺にはお前を道連れになんてできやしなかった。
なのに、どうして。



彼岸花が揺れている。
こちらへおいでと、揺れている。

――――頼むよ。
服部を連れて行かないでくれ。

あいつが目を覚ましたら、今度はちゃんと俺が連れて行く。
道連れにだって、なんだってしてやる。
失うことよりも、それのが大事だって、わかったから。
わかったから。

彼岸花、頼む。
呼ぶな。あいつを。


 
まだあおいさんは来てくださっているでしょうか・・・。以前拍手で書いていただいた、バイク二人乗り書いてみました!

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2009/09/24 (Thu)

「・・・そう、工藤君が慌てるところが見たいの。」
「まあ、たまにはな。こう赤なったり青なったりしてるとことか、あんま見せへんやろ?」
「簡単よ。」
平次にいれてもらったコーヒーの入ったカップをソーサーへ置くと、
哀は博士のPCをいじっている新一へと声をかける。

「工藤君。」
「何だ?灰原。」
新一はキーボードを叩く指も止めず、声だけで返事をする。
こちらの会話はあまり届いていないようだ。


「窓は全部閉めても、換気口が空いてたら意味ないのよ?」


ピシリと空気が凍る音が聞こえた気がした。
キーボードを叩く音も、即座に止んでいる。
状況を把握しつつも平次はあまりの空気の重みに、足をとられたか動けない。
張り付いた笑みが、口元をひくつかせる。

「・・・・はぁっとりいいいいいっ!」
地の底から響くような低音で平次を呼びながら、新一は立ち上がる。
顔は俯いていてよくは見えないが、耳が赤い。となれば顔は言わずもなが。
ガタリと椅子が床に転がる音で我にかえった平次は、即効立ち上がって部屋を逃げ出した。
その後を嵐のような勢いで新一が追う。

「恨むで、ねーちゃんーっ!」
階段を駆け上る音とともに、平次の捨てセリフが響いていった。

「てめえが悪いんだろーがっ!おとなしくお縄につきやがれ!」
バタバタと足音をたてるだけでなく、家具が倒れる音も聞こえてくる。
かたづけはきちんと自分たちでしてもらおうと、算段しつつまた哀はコーヒーを手にとった。
彼のいれるコーヒーは、やや濃いめだが好みの味。
天井から落ちてくる埃からカップをかばいながら、おそらく惨状と化すだろう部屋を目だけでちらりと見上げた。


「自分しかあんな顔引き出せないって、気づいてないのかしら。」




うちは隣が旦那さんの実家です。換気口は部屋についてます。スライド開閉です。
・・・気づいたときの衝撃といったら、もう。

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2009/09/23 (Wed)
久々に大人向け。
しょっぱなからです。

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2009/09/22 (Tue)

書斎の窓から見下ろすと、庭に背の高い花の群生。
1メートルはあるだろう、ゆらりゆらりと茎ごと風に凪いでいる。
「満開だな・・・。」
「何が。」
新一の呟きを聞き逃さず、本から顔も上げぬまま平次が尋ねる。
「あれ。」
指を挿す気配で、平次は顔を上げる。
資料を机に置いて新一の立つ窓辺へと歩き、彼の肩に手を乗せてひょいと庭を覗き込んだ。
「ああ。酔芙蓉か。」

工藤家の書斎には、興味深い資料が山のようにある。
訪れてはそこに入り浸る平次に、新一は面白くなさげな表情を浮かべつつも、
気持ちはよくわかるのだろう。時間のあう限り、平次の自由にさせていた。
同じように本を読んでつきあうこともあれば、彼を置いてさっさと出かけてしまうこともある。
外出先から戻ると、同じ体勢で本を読んでいる平次を見てあきれつつも、
そういえば自分も同じことを幼馴染に指摘されたことがあったなと苦笑する。

今日も訪れた平次に、面白い資料が手に入ったと言うと、
二つ返事で書斎へと二人して閉じこもった。

案の定、平次は資料を読み進め、時に口元に挑発的な笑みを浮かべながらその解読にいそしむ。
昨日の自分と同じ状態なのだろう。
平次も心得たもので、今日は平次オススメの本も持ち込んでくれ、
先ほどまで自分もその本にトリップしていた。
実際、いつもなら手に取らない作者のものである本は面白く、
これだけ趣味が合いながらも方向性が違うというのはラッキーだな、とあらためて感じたほどだ。

読み終えて肩の凝りをほぐしながら、新鮮な空気が恋しくなり窓に近づいたとき、
ふいに目にうつったその花。
呼び覚ます記憶に、気づけば言葉が出ていた。


「白と赤が混在して咲いているなんて、めでてえよなー。」
「ちゃうちゃう、白いのが赤くなるんや。」
「・・・そうだっけ?」
「そうや、だから酔芙蓉。酒に酔うて赤くなるみたいやろ?俺んちの庭にもあるから、よう覚えとるわ。」
そう、残暑の頃。あの暑さにもうだることなく涼やかな空気を纏う庭。
二人で歩いた砂利の音が耳に残る。
指さえ触れることはなかったけれど、互いを意識する緊張がつま先まで張り詰めていた。

「芙蓉いうだけあって、艶っぽい花ビラやろ。」
「・・・そうか?」
頸を傾げ、平次を見る。
褐色の大地に、ふわりと花が綻ぶ笑み。
それは誘いの蜜のようだ。

「工藤に、似とるわ。」
「はあ?」
「真っ白な肌が、すぐ赤うなる。」
すい、と指先で首筋をなぞられた。

「ほら。」
今も。

指摘された紅潮をごまかすように、その手首を掴んで言葉を紡ぐ。
「・・・今日は何も塗ってねえぞ。」
「あん時は黒すぎや。どうらんなんて、よう持っとたなー。」

くすくすと笑う声に、甘さが混じる。
言葉をかわすごとに近づく吐息。


そうして、重ねて。
芙蓉が赤く染まる。

 

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2009/09/17 (Thu)
平次はいつも、ゆっくりとキスをする。
軽く触れるだけのそれは、いつだって新一の濁りを溶かす。

彼が触れた箇所の余熱は、恐ろしい速度で体の奥深くへと沈み、
その思いが、自分の中に眠るものすら呼び起こしていくようだ。

無論、愛情だけではない。
心を形成する全ての感情が、
その知らせるべき場所を求めて彷徨するように
新一の体を構成する全ての部位へと、ゆるり唇を這わせていく。

髪を、
額を、
瞼を、
頬を、
腕を、

些末な音もたてない密やかさであるのに、秘められた思いは荒々しい濁流。
血管を伝い、理性を攫う。

掌へ、
指へ、
頸へ、
唇へ、

「・・・足りねえ・・・」
喰らい尽くすほどの飢えが、叫ぶような勢いで喉の奥からせりあがる。
零れ出た呟きを耳で拾うと、平次は動きを止めて新一を見た。
何かを言おうとしたが言葉にならず、じわりと悲しげに笑顔を浮かべて
骨の軋む強さで、新一を抱きしめる。

頬に温かく胸の鼓動。
新一は平次の背中へ腕をまわした。
溶けたいと願うほどきつく抱き返せば、奪う激しさでその唇に舌を絡めとられた。


次は何処へ触れる。

鎖骨?
耳?
踵?
・・・それとも。


歯列をなぞる舌に甘く痺れて、麻痺していく思考。

彼の触れる全てに、――――― 溢れろ。
俺の狂気。






23:23様のリクエスト。(2322番踏まれました。おしいー!ということで、日頃のお礼も兼ねまして。)
グリルパルツアーの「接吻」よりインスピレーション。
この詩、すっごい平新でした・・・・!教えてくださってありがとうございます。
全然、接吻のイメージに近づけなくて歯噛みしています。うう
どっちかっていうと夢枕バクに・・・?

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2009/09/15 (Tue)

警察の事情聴集が長引いたのだろう。
その疲労を苦笑で隠しながら、平次は深夜ふらりと工藤邸を訪れた。
サンキュ、と新一が短く礼を言うと、平次は笑みを深くして新一の髪をぐしゃりとかきまわした。
「かまへん。とりあえず、情報交換でもしよか。」
「ああ。コーヒー入れてやる。リビングで待ってろ。」
「おーきに。」

けれど、そのコーヒーは平次の胃袋へと入ることはなかった。
新一がリビングへ温かいコーヒーをいれ戻ってくると、平次はソファで眠ってしまっていた。
くかーと、だらしなく口を開けて、しかもご丁寧にその口の端には涎までたれている。
「・・・きったねー寝顔だな。おい。」
せめて客間のベッドで寝ろよ、と肩を小突くが、眠りが深いのか目を覚ます気配はない。
ふと、思いついてソファサイドに膝を突き、平次のシャツの袖をめくる。
案の定だ。傷を負ったらしく、警察での治療を受けた形跡がいくつかあった。
「・・・気にせんでええ。」
検分していれば、目を開けぬまま平次が呟いた。
「してねーよ。」
「ひどいのはないわ。全部かすり傷程度や。」
「・・・・おう。」
それだけ言うと、ごろりと平次は寝返りをうってまた寝息を立て始める。
「起きたんならベッドで寝ろよ。」
「ここで、ええー・・・。くどうはちゃんとベッドいきー・・・」
寝息に混じりごにょごにょと口の中で言うと、今度こそ本気で平次は寝入った。
一つ、ため息をついて新一は立ち上がる。
リビングを出て、戻ったその腕には毛布。
ふわりと一枚広げて、平次へとかけてやる。
そしてもう一枚、新一の腕には毛布が残っていた。
その毛布をごそごそと自分に巻き付けると、平次の足元近くの床に座り込む。
ソファを枕に、少しだけ平次の足に頭をくっつけて新一はゆっくりと体の力を抜いていく。
思ったよりも疲れている。瞼が重い。
新一はくわあと欠伸をすると、目を閉じた。

けれど、まだ全てが終わった訳ではない。
仮眠を取ったら、明け方にでもすぐ動かねばならないだろう。

 

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2009/09/13 (Sun)
「なあなあ工藤、9月10日やで?」
「・・・んだよ、どーせ、‘くどーの日‘や!とかって言うんじゃねえんだろうなあ。」
「8月10日は服部の日でたっぷり楽しませてもろうて・・・・あたっ」
「るせー、その口閉じねーと蹴り殺す。」
「もう蹴って・・・やいやいや、そーんなベタなことはいわんよ?やっぱ9月10日ゆうたら”キュートな日”やろ?」
「はああ?」
「そこでや、キュートで、超がつくほどかわええ工藤くんをかわいがる日にしたいと思います。」
「変な宣言しながら体をまさぐんな!」
「照れて抵抗する顔もかわいらしいなあ。ほんまキュートやで。」
「死ね」
「・・・工藤さん。本当に彼岸に行きそうですよ?壁に穴、空けたらダメだと思いますよ?」
「だいたい、キュートな日っていうんなら、てめえの方が俺よりかわいいじゃねえか!」
「はあああ?」
「そうだろーが、あっちこっちで笑顔ふりまくだけじゃねえ。俺に強請るときだってすっげえかわいい顔で言うじゃねえか!」
「んーなわけあるかい!工藤よりかわいい生き物がこの世に存在するか!」
「お前こそちゃんと鏡見たことあんのかよ!ぜってええ、てめえの方がキュートだ!」
「お前こそ、今の顔、鏡で見せたりたいわ!この世の全てを魅了するキュートさやで!」






「あれー?救急車、近いわねー。誰か倒れたのかしらー。」
「ねえ園子・・・」
「なーにー?あ、今日新一くんとこ行ったんだよね?もしかして、そのご報告?」
「カップルの痴話げんかって犬も食わないっていうけど・・・」
「そーねー、端で聞いてると呆れちゃうわよねー。」
「ホモの痴話喧嘩って、そういうの通り越してウザイわ。」
「あの、蘭?・・・あの救急車って・・・もしかして・・・。」


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2009/09/08 (Tue)
残暑がまだその猛威をふるい、アスファルトには陽炎が上る。
事件現場から歩いて帰宅した二人は、その暑さから逃げようとリビングへところがりこんだ。
しかし、まだエアコンがその効果をあげないため、新一はダイニングへと移動する。
ずるずると足を引きずるようにして冷蔵庫の前に立つと、
行儀悪く、冷蔵庫を開け放したまま冷気を浴びる。
「生き返る・・・。」
ふはーと、肩の力を抜いてその冷たさを味わっていると、のしっと背中に重みがかかる。
「くどーっ」
新一の背中にべったりと平次が張り付く。
うだる暑さから開放されたことを邪魔され、苛立ちまぎれに乱暴に振り払う。
「暑苦しいんだよ、のけ。」
「つめたー。こんなに俺は愛しとるのにー。」
「この暑い中、くっついてくんなっつってんだよ。」
振り払われたことで、平次は床に座りこみながら、
冷たい対応にわざとらしく唇を尖らせて拗ねてみせた。
そんな平次を一瞥すらせず、新一は冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出す。
「俺の心は今、クール&ドライや。」
「そのまますっきりと乾け。そのほうが涼しいだろう。」
「ひどっ!つめたっ!」

いつもどおりの軽口の応酬だったが、暑さと湿度による不快指数のためか、
その声に苛立ちが紛れ、いつの間にか口論へと移行していった。
「うるせえっ!いいかげんにしろっ!」
「そない怒鳴らんでもええやろ。」

「だいたいな、会えば毎回毎回四六時中、好きだ好きだと言いっぱなしじゃねえか!」
「言いたいからや。ほんまは毎日でも言いたいくらいやで?」
「言葉のありがたみがねえんだよ。」
そう吐き捨てると、新一は手にしたペットボトルをぐいとあおる。
飲んだその口を、行儀悪く手の甲で拭うとキャップを力任せに閉めた。
平次は新一の苛立ちを教えるその仕草を一連じっと見終えると、
蓋を閉めていた手の側の腕をとった。
「せやかて、俺は工藤のことがめちゃくちゃ好きなんや。」
手首を掴んだまま、平次は新一を見上げる。
「少しでも言うてへんと、俺の中で破裂してまう。」

――― 溢れて。
「好きなんや。」
・・・・・・ 壊れそう。

工藤、と切なく呼ばれて、らしくもなく新一は動揺する。
震える睫、揺らぐ瞳は彼がどれほどの不安を抱えているかを知らせている。
声にならないもどかしさが、腹の底からむず痒く湧き上がる。
同時に平次の気持ちの強さも知らせているから、
セルフコントロールをする間もなく、新一の顔が赤くなる。

「バッカじゃねえの?」
強く手を振りほどいて、新一は平次に背を向ける。
表情を悟られぬよう距離をとろうと、ずかずかと部屋の入口まで大股で歩き、戸口に立った。
シャツの襟からのぞく首筋は赤いが、否定される言葉ととった平次は眉をさらに下げた。

「蝉みてえに、うるさく喚きやがって。」
拳を握り、すぐ横にあった扉に打ちつけた。
重い音が響いたが、その余韻に隠れるよう呟かれたせいいっぱいの言葉。

「・・・・・・蛍の気持ちも考えやがれ。」


ひらり、視線を泳がせて部屋を振り返る。
しばし呆けた平次の顔が、次の瞬間、一気に朱に染まるのが見えた。
言葉にならないのか、口が開いたままものいいたげに戦慄いている。
自分の言葉の効果を即座に悟り、新一は羞恥に突き動かされて走り出す。
逃げた先は彼の部屋。
扉の閉まる音に、我に返った蝉は羽根を広げて後を追う。
捕まえられた蛍は、その名の通り、―――身を焼かれ。




恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす

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2009/09/06 (Sun)
「ここらにおったアホな連中も片付けといたわ。」
倉庫にほおりだされていたケーブルで、ひとくくりに縛っておいた男どもを一瞥して平次は話を続けた。
「きっちり掴まえておいたから警察へ引き渡しとく。」
「・・・警察だと!」
男は息を飲むと、電話へと食って掛かる。

「やめろ!お前たちは自分たちが何をしたのかわかっているのか!」
「あなたが為すべきことは、彼を支えることで煽ることじゃないはずです。」
「断罪を、断罪をと願うのは罪か!それを実行してせめて悲しみを癒そうという彼の苦しみをとがめる権利はお前たちにはないだろう!」
平次は黙って男の言葉を聞いていた。
「・・・すまんな。」
しばらくの沈黙の後、ようやく出せた言葉はそれだけ。

男は怒りにまかせて電話を投げ捨てた。
途切れた通話。
壁にぶつかり床に転がる受話器からは、ツーツーと虚しく響く電子音。
「これで、あなた方の計画は終わりです。」
「・・・貴様らは。」
男は興奮のあまり肩で息をしていた。そして新一をぎろりと睨みつける。
視線で殺されそうなほど強く。

「彼の妻はこの計画には携わっていない。彼が逮捕されれば、彼女は・・・一人だ。」
幸せな家族を見ているだけの幸福を、奪い去るのは誰だ。
「これ以上、あの家族から何を奪うつもりだ!貴様らは・・・っ!」
おおう、と獣の咆哮。
言葉に出来ぬほどの憤怒が、男の口から迸った。
ひどくひどく悲しい叫び。

彼と男の間に、どれほど固い絆があったのだろうか。
この悲しみを見ればその深さが伺える。

耳を塞いでしまいたい誘惑にかられるが、それは自分には許されないことだ。
蹲り、なおも苦しみを吐き出し続ける男の背に 新一は話し出した。

「まだ幸いにも人死には出ていません。情状酌量も十分に有り得ます。」
なんの慰めにもならないことなど承知だ。
「今度こそ、あなたの力で彼らを支えてくだされば・・・」
わずかに体を起こし、新一ではなく目の前の床を見つめながら呻く。
「・・・お前たちは、自分たちが何をしたのかわかっていない・・・。」
先ほどまでとは違う、がらんどうの声。
「何をしたのか。いつか、思い知るだろう。」

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2009/09/05 (Sat)

壁にかけられた時計が、時刻を告げる音を鳴らす。
それを見ることもなく、男はゆっくりと立ち上がった。
「時間がないよ、工藤くん。」
「・・・・・・。」
新一はゴクリと息を呑む。
横目で時計を睨みつける額に、じんわり汗が浮かぶ。
「返事を聞こうか。」
「・・・・・・俺は、」

突然の電話のベルが、緊迫した空気を散らした。
連絡が入ることなど予期できるはずもない男が、慌てたかボタン操作を誤り電話のスピーカが機能する。
「もしもーし。きこえまっかー。」
聞こえてきたのは、場違いに陽気な大阪弁。
「・・・誰だ・・・!」
男がうろたえると同時に、新一はほっと息を吐く。・・・保険は効いたようだ。
「あんたこそ誰や?・・・っと、まあええわ。とりあえず工藤そこにいてるやろ?」
「服部!」
「おー、いてるいてる。」
向こう側へ聞こえるよう大声を上げると、からりとした声が返った。
ちゃんと聞こえるでーと平次はさらに大きな声で自己主張した後、うってかわり今度は静かな声で話し出した。
「おっさんの友達な、とりあえず眠ってもろうてる。」


平次に見つかった「彼」は、この状況をどう抜け出すか判断を迷った。
無関係な人間は巻き込みたくない。
けれど今日という日を逃せば、あいつらに復讐する機会を失うかもしれない。
しかも目の前の男を見逃せば、自分に手錠が架せられる可能性が高い。
だが、ここで起爆装置を押せば自分の証拠も残る―――。
どうするか、そんなうろたえる隙を逃す平次ではない。
「堪忍。」
一言、そう呟きすっと背後へ回りこんで延髄へと手刀を落とした。
へたりこむように倒れる男を眼下にし、そうしてすばやく周囲を見渡す。

娘の無念の痕を根こそぎ抉りとろうと、倉庫自体を破壊するためにしかけられた爆発物が
建物の基盤を揺るがす位置にまだ鎮座している。
数十分後、それが起動して全てを消しさる予定だった。
今度も爆破の証拠が残らないよう、古いガス管の位置などを計算にいれていたため、
平次は以前の事件状況から爆破物の位置も特定できていた。
だからこそ、男の潜む位置も知りえた。
「現場にあってもおかしないもんで、こんだけのもん作るんはすごい技術力やな。」
感心しつつ、解体するべく爆破装置へと近づく。
「工藤の資料の通りなら、アリバイもきっちりみっちり作ってんやろなぁ。」

仮に怪しい証拠があがろうとも、男が彼のアリバイを証明して彼は無罪になる手筈だ。
男は、それだけの力を持っている。
毛利探偵事務所へ来訪したタイミングを考えれば、それは明白だ。
おそらく、警察内部からなんらかの形で情報提供があったとみていいだろう。
それを逆手にとったのは、さすが工藤新一だが。
結果から言うと、爆破物は起動しないように処置できたが、
物音を聞きつけた複数の男たちが、平次をぐるりと取り囲んだ。
「おーおー、こりゃあご丁寧に大勢でお出迎えでっか。」
にやりと不敵な笑みを浮かべ、こきりと拳を鳴らす。
柄の悪い服やタトゥーを纏い、悪役の決まりセリフを並べ立てながら、
その男たちが平次へと飛び掛ってきて――、数分の後に平次の足元に倒れ付した。
そして、最初に気絶させた男から電話を探り履歴からここの連絡先を割り出したのだ。


「姉ちゃんのお使い頼んだんは、おっさんやろ?俺が毛利の姉ちゃんに代わって届けに来たっちゅーわけや。」
電話を持つ平次は木刀のようなものを反対の手で握っており、杖のようにして肘をつきながら話をしていた。
木刀らしきものは誰が持っていたのか今となってはわからないが、
おそらくその当人は持っていたことを後悔しただろう。
電話の声の主では埒が明かないと見たか、振り返り視線で問う男に新一は頷いた。
「こちらへ伺うことを決めたとき、友人に連絡をとりました。」
「友人・・・?」
「もしも蘭が、毛利探偵事務所を出るようなことがある場合にはそれを阻んでもらうようにと。」
そして、後はまかせるとも言った。
まあ言わずとも、今の結果を携えて彼はあの場所に立っているだろうが。


昨晩の深夜遅く、新一は平次へと連絡をとった。
突然の無礼な電話にも関わらず、眠たげな声一つ出さないまま平次は新一の無理な頼みを二つ返事で了承した。
新一がFAXした事件の概要を確認するとだいたいの仮説の目処がつき、新一の意図を汲んだ平次はその足でバイクに跨った。

例の倉庫までは、蘭が電車などを使えば一時間程度かかるかもしれないが、バイクで行くとなれば飛ばして20分ほどの距離だ。
まして、蘭は男に指定された時間に遅れぬよう、彼の計算よりも早い時間帯にでかけようとしていた。
平次がポワロの前で蘭を掴まえ、新一には自分が代理で頼まれたと嘘をついて場所を聞き出した。



ちょっと、苦しい・・・?

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2009/09/05 (Sat)

「・・・っかやろ、風呂くらいはいらせろ・・・!」
そんな抗議も受け付けず、のしかかる体は重力を増していく。
べろり、と耳の後ろを舐められた。
「汗の味がする。」
くつくつと笑いながら言われ、顔に熱が昇る。
「だから・・・っ!」
シャワーくらい浴びさせろと、同じ文句を繰り返そうとするが、
「あかん。興奮する。」
全身をまさぐる手はその動きを増し、衣服の中へすべりこんで素肌に直に触れる。
それだけで息も熱くなる。
「この、へんた・・・い・・・」
「そんでもええ。工藤の全部、感じたいもん。」
首筋から鎖骨へと顔を下ろし、平次は視線だけを動かして押し倒した新一の顔を見る。
すん、と鼻をならしたかと思うと、うっとりと息を吐き出す。
「ええ匂い。」
「汗臭いだけだろーが・・・!」
呆れたように言えば、平次はがばりと体を起こして新一と顔を合わせる。
「工藤の、な。」
全部を。
「食わせて?」
告げられて、唇を貪られた。

こんなに近くにいれば、新一も平次の匂いをいやおうなしに感じさせられる。
互いの下半身が、その形を成していく。
あがる息をなんとか抑えようとするが、灯された炎は強くなるばかり。
新一は抵抗をあきらめて、唇の離れた隙にがぶりと平次の頸へと噛み付いた。
感じたのか、びくりと体を揺らした平次が目を細め、その視線で新一を煽る。

「くそ・・・っ」

お前の匂いにだって、ひどく欲情するんだよ。
だからシャワー浴びさせろって言ってんだ!

 

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2009/09/04 (Fri)

「彼を、止めてください。・・・あなたは連絡する手段を持っているはずです。」
「私がこの電話を使うのは、君の返事を聞いたときだ。」
「あなたが今、二人の人間に連絡をとれば、何の事件も起こらずにすみます。」
「・・・・・・・。」
男は目を細めるだけで、その言葉を聞く気がない。
時間が過ぎることに過敏になった新一は、焦りを含ませて声をあげる。
「何も犠牲を増やすことはないでしょう。冷静になって下さい。」
「冷静に・・・だと?」
噴出す怒気が新一へと叩きつけられる。
「部外者が口を出すな!」
普通の人間であれば、体をすくませるほどの迫力がその声にはあった。

「あの子の苦しみを見たことがあるか!必死に自分でも立ち直ろうとしていた!けれど、恐れで自身の部屋の扉を開けることさえできなかった!震える体を懸命に自分の腕で抱えて、それでも生きていこうと頑張りながら、・・・・それでも、」
彼の怒りが本物であるとともに、また苦しみも本物なのだ。
「それでも、自分で命を絶たなければならなかったほどの苦しみが・・・・っ!」
激昂が途切れ、男は膝をついた。肩を震わせ、声を震わせ、抑えきれない嗚咽が喉を震わせ。
「・・・・・・ただふらりと現れただけのお前に、わかるのか。」

残されたこの映像は、証拠品としては十分すぎるものだ。
警察へ被害を届ければ、映像の中の下衆な男共を罰することはできるだろう。
けれど、失われたものは戻らない。むしろまた失われるものがあるだろう。
だからこそ、彼らは計画を立てた。
「彼女は、そんなことを望んでいないでしょう。」
ありきたりな言葉だ。けれどほかにかけられる言葉などあるはずもなく。
それを聞いた男は、くっくっと喉を鳴らして笑う。―――明らかな嘲笑。
「だからお前は、部外者だというんだ。」
その嗤いは、新一の胸を裂く。
「あの子がゆっくりと安心して眠ることができるよう、あやつらを地獄に送り届けねばならんのだ。」
そのために喜んで、ヤツらとともに堕ちて、地獄の門番にもなろう。
あの子が天国で安らげるよう。
「あいつらがいるかぎり、怖くて出られないと泣いていたから。」
「・・・しかし・・・!」
新一がなおも言い募ろうとするのを、男が遮る。
「ケダモノにはケダモノへのやりかたがある。」
「トルーマンですか。」
「・・・・・・私は、無関係のものには危害を加えるつもりはない。」
「蘭は関係ありません。」
「君が口を出してきた段階で、関係者さ。」
 

04

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2009/09/02 (Wed)
ぎり、と奥歯を噛み締める新一に視線だけを向けつつ、男は話し続ける。
「あの子は私たちの宝でした。」
遠い瞳。おそらくその少女が健在であったころを思い出すのか、懐かしむように口元が緩む。
「彼が結婚し、あの子が産まれ、
・・・子をなすことの出来なかった私にとっても、あの子は孫のように愛しい存在だった。」
新一は自身が調べた内容と事実が符合したことを知った。
彼のアリバイの承認として、この男が重要な役割を示していた。
古い友人で、家族ぐるみでつきあいがありながら、その地位ゆえに発言に力を持つ男。
「あの事件以降、壊れていく彼女の心を、なんとかして少しでも癒そうと私たちは努力したのだよ。」
瞳の奥で揺れる暗い焔。

「傷跡は抉られたまま、治癒の兆しも見せず、ただただ時間だけが過ぎて、」
「・・・亡くなられたのは先月だとお聞きしました。」
「警察は自殺だと言った。けれどね、実際は殺されたのだよ。」
あんな事件さえなければ、今頃は外の陽射しを浴びて笑っていただろうに。
言外に悔しさを滲ませて、男の手は震えた。
「だから、彼を見逃して欲しい。ただ黙ってくれていればいい。君は警官ではなく、ただの一市民だ。」
「・・・けれど、探偵です。」
「だから頼んでいる。」
持っている電話を、新一の目前に掲げる。
「脅迫ですよ。」
「君のしていることと変りはない。」

2週間前から毎日、立て続けに起こった爆破事故。
それは繁華街の一角であったり、郊外の家であったり、古いアパートの一室であったりした。
一見共通項のないものであったが、毎日のことに警察も不信感を持たざるを得ず、
爆破物などの証拠のないまま捜査を開始することとなった。
そこで協力を依頼された新一が十数件の現場状況を分析し、いくつかの情報を集めている時、
毛利小五郎の事務所へアリバイつくりの一環のため訪れたこの男と会うことが出来た。
それは偶然の域を出るものでなく、
また殺人も起きていないため、新一は無謀にも一人、
確証を得るためにこの男の屋敷へと乗りこんでいったのだ。

話をするうちに男は新一の目的を悟ったのか、1階の客間から半地下の部屋へと案内された。
テレビ画面や映像機材に囲まれた部屋。おそらくはシアタールームであろうこの部屋。
ソファへと座らせられた後に流された映像は、彼がこの事件に深く関わっていることを示している。

爆破された場所は、全て倉庫を拠点とするそのグループの関係者のものだった。
これは警察もまだ掴み始めたばかりの情報だ。
少しずつ追い詰めて、恐怖を味あわせてから殺す。
爆破犯は、確実のそのグループへと牙を向けている。
今夜、それが決行される可能性が高い。
少女の49日である、今夜。


03

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2009/09/01 (Tue)

泣き叫ぶ女の顔が画面に映る。
下衆な野次が混ざり、悲鳴がいっそう高くなる。
「これが、ヤツらの犯した罪です。」
白髪を丁寧になでつけ、品の良いスーツに身を包んだ初老の男が薄暗い部屋に立つ。
見せたいものがあると、そう言って新一をこの部屋に連れてきた男は、感情を殺した声で話し出す。

「あなたは、自分の大切な人間をこんな目にあわせた人間を許せというのですか。」
新一はソファに座ったまま、振り返る男の視線を真正面から受けた。

「許せということではありません。同じ犯罪者にならないで欲しいと願うばかりです。」
半地下の部屋は、電気をつけなければまるで檻のようだ。
小さな覗き窓の外のは明るい昼の陽射し。
それが滑稽なほど、画面の中では今なお暗い惨劇が繰り広げられている。

「頼りにならない日本の司法を当てにしろと?」
「個人で罪を裁くことは、この国ではしてはならないことです。彼の罪も・・・法の下で平等に明かされるべきです。」
スピーカーからは絶え間ない悲鳴が部屋に響き、それを聞きながら眉間に深く皺を刻みつつも、
きっぱりと新一は男へと答えを返す。
「考えは変らないと?」
「ええ。」

新一が頷くのを見た男は、背広の胸ポケットから固定電話の子機を取り出した。
「あなたの彼女・・・幼馴染でしたか。」
その電話を片手で掲げたまま、男は無表情のまま話を続ける。
「あなたからの頼みと偽って、届け物をお願いしましたよ。」
新一は思わずソファから立ち上がる。
「今止めなければ一時間以内には着くでしょう。・・・この映像の場所です。」
灰色の倉庫の床に、散らばる長い髪。
「とても美しい少女だ。きっとヤツラは見逃しはしないでしょう。」
「・・・蘭っ」
「ここは携帯電話は使えません。外部への連絡は私の持つ、この電話のみです。」
携帯電話を取り出そうと、自身の胸ポケットへと手を伸ばしたが、その姿を見て男は諭すように言う。
「もし今回の事件の犯人を忘れてくれるというのなら、今すぐ彼女を止めてあげますよ?」
「・・・あなたは・・・!」
「それでもあなたはヤツらをかばうことができますか?」
抑揚のない響きの中に、激しい憤怒を感じて新一は反論を封じられた。

「彼女があの子のような目にあった時、それを公にしてまで司法の手に犯人を委ねると?」
暗い色の瞳は、目の前の新一ではない何か遠くを見ているようだ。
 

02

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自己紹介:
二児の母。2009年に唐突に平新に。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
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