bitter 続きです。
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・・・終わるだろうか。がんばるぞ!
踏み出した足の裏に、浴室の床下の空洞を意識させる軽さとは異なる重々しい絨毯の感触。
ところどころに広がる色の異なりは、彼がろくに拭かず出歩いた後を示す。
浴室の扉から点々と続く足跡の先、クローゼットの前には大きな染み。
おそらくはそこで体を拭い、服を脱いだのだろう。急いだのか、水の行方を目で探れば雫はベッドの上にまで飛んでいた。
そしてベッドの上に置かれた着替えに気づく。
ビニールの包装に入っている下着、黒い綿地の服と茶系のダークカラーのパンツ。
おそらくベッドへと寝かせる前に、邪魔になるだろうと財布や携帯電話は服から抜き取ったのだろう。サイドテーブルに並べて置かれていた。
時計も外されている。おかげでコナンの頃から愛用している麻酔銃は水難を逃れたようだ。
両手でバスローブの袷を解き、するりと脚元へ落とす。平次の用意した着替えを手にすると、ピリっと音を立ててビニールの包装を取った。このホテルで購入したものではないらしい、本当にクセになっていたのか。
だとすれば、あいつの中にはコナンだった頃の俺もまだ存在しているのか。
何度目かわからない溜息を一つ。
すぐに気を取り直して下着に脚を通し、今度は平次の着替えであったろう長袖のシャツを頭から被る。
すべて着替え終えるとにわかに疲れを感じて、新一はベッドにどしりと座り込んだ。
ぐったりと前屈みになって、片手で頭を抱える。ふと足下を見れば、履いたパンツの裾は踵あたりにあった。
思いついて己の肩を手で撫でる。シャツの肩幅も少し余裕はあるもののサイズはぴったりで、そういえば服は同じサイズだったんだと、今更ながらに思い出した。
「・・・馬鹿じゃねえの。」
同じ体躯、同じ性。
「ほんと、馬鹿じゃねえの?」
そういった趣向でないことは、それなりのつきあいで知っている。それなのに男を好きになるなんて。
「・・・どうすんだよ・・・。」
両手で顔を覆う。
声が震えている理由なんて、今は知りたくない。
より深くうなだれた拍子に、濡れた髪がひたりと頬に張り付く。
かきあげようと顔から掌を離れさせて、ふと自分の手首に目が行った。褐色の腕が掴んだそこには、跡など残っているはずもない。
けれど意識したとたん、まるでまだ掴まれているかのように、じんと熱をもって痺れた。
一瞬、せりあがるものがある。
熱を感じる場所をもう片方の手で覆い、隠すように胸へと押し付けた。
「くそっ、消えろよ…!」
ぎゅうと強く、抱きしめるように。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
