「彼を、止めてください。・・・あなたは連絡する手段を持っているはずです。」
「私がこの電話を使うのは、君の返事を聞いたときだ。」
「あなたが今、二人の人間に連絡をとれば、何の事件も起こらずにすみます。」
「・・・・・・・。」
男は目を細めるだけで、その言葉を聞く気がない。
時間が過ぎることに過敏になった新一は、焦りを含ませて声をあげる。
「何も犠牲を増やすことはないでしょう。冷静になって下さい。」
「冷静に・・・だと?」
噴出す怒気が新一へと叩きつけられる。
「部外者が口を出すな!」
普通の人間であれば、体をすくませるほどの迫力がその声にはあった。
「あの子の苦しみを見たことがあるか!必死に自分でも立ち直ろうとしていた!けれど、恐れで自身の部屋の扉を開けることさえできなかった!震える体を懸命に自分の腕で抱えて、それでも生きていこうと頑張りながら、・・・・それでも、」
彼の怒りが本物であるとともに、また苦しみも本物なのだ。
「それでも、自分で命を絶たなければならなかったほどの苦しみが・・・・っ!」
激昂が途切れ、男は膝をついた。肩を震わせ、声を震わせ、抑えきれない嗚咽が喉を震わせ。
「・・・・・・ただふらりと現れただけのお前に、わかるのか。」
残されたこの映像は、証拠品としては十分すぎるものだ。
警察へ被害を届ければ、映像の中の下衆な男共を罰することはできるだろう。
けれど、失われたものは戻らない。むしろまた失われるものがあるだろう。
だからこそ、彼らは計画を立てた。
「彼女は、そんなことを望んでいないでしょう。」
ありきたりな言葉だ。けれどほかにかけられる言葉などあるはずもなく。
それを聞いた男は、くっくっと喉を鳴らして笑う。―――明らかな嘲笑。
「だからお前は、部外者だというんだ。」
その嗤いは、新一の胸を裂く。
「あの子がゆっくりと安心して眠ることができるよう、あやつらを地獄に送り届けねばならんのだ。」
そのために喜んで、ヤツらとともに堕ちて、地獄の門番にもなろう。
あの子が天国で安らげるよう。
「あいつらがいるかぎり、怖くて出られないと泣いていたから。」
「・・・しかし・・・!」
新一がなおも言い募ろうとするのを、男が遮る。
「ケダモノにはケダモノへのやりかたがある。」
「トルーマンですか。」
「・・・・・・私は、無関係のものには危害を加えるつもりはない。」
「蘭は関係ありません。」
「君が口を出してきた段階で、関係者さ。」
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何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
