「…じきに、わかる。」
「そう、一ヶ月もすれば、その体に沁み込んだものが愛だと気付くわ。」
そして予測どおり、新一が叫んだ想いは届かない。
新一の怒気にたじろいだものの、それだけのようだ。
一人が腕を持ち上げて、その手に握られたものを新一へ見せつける。
片手に収まるほどの大きさの、それはビデオカメラだった。
「証明を残してあげる。」
「きちんと撮影して、私たちの愛を映像からもあなたに伝えてあげられるわ。」
「美しい私たちの愛のメモリーだよ。」
気持ち悪い。
どれだけ自分たちがおかしな行動をとろうとも、それは愛だという一言で済ますつもりなのだろう。
犯罪という認識すら、自身を陶酔させるアドレナリンになる輩だ。
「怖いかもしれないが、すぐにわからなくなるから。」
「大丈夫よ。ぐちゃぐちゃになっても、きっとあなたはきれいでしょうね。」
じりじりと包囲網を狭めてくる彼ら。
コナンの頃のように上から見下ろされる視線に、違和感と懐かしさが同時に去来する。
言葉でどう言いつくろうとも、やはりその中にあるのは欲でしかないのだ。
ギラギラと嫌な光を放ち、べとつくような視線がそれを示す。
息を大きく吸う。一度目を閉じて、もう一度ゆっくり目を開けながら息を吐く。
――― あいつが来る。大丈夫。
「間に合わなかったら、思い切り蹴ってやる。」
自分が時間稼ぎをできなかった分はあさっての彼方にほおり投げて、理不尽な言い分を呟く。
そうしている間にも、頭上から伸びてくる手、手、手。
それに腕をとられた。新一はがむしゃらに動いて抵抗する。
数人が同時に駆け寄り、新一の体を乗り上げるようにして押さえつけた。
「止めろっ!」
もがいた拍子に指先が注射器にぶつかり、男の手から床に飛んで割れた。
肩をすくめた男は、背を向けて鞄から予備の注射器を手に取る。
注射器に薬を注入するわずかの時間、新一のすぐ頭上で興奮に息を荒げる男と女。
抑える手にはどれも汗が滲んでいて、べとつく感触が背筋を凍らせる。
「…っ気持ちわりーんだよっ!」
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
