遠く、声がする。
「・・・ああ、うん。・・・そうか。問題ないんやな?」
服部の声。
「りょーかい。姉ちゃんもあんまいじわるせんといてや。」
電話か。相手は・・・?
「うん。まあ、わかってる。ありがとう。」
体を起こそうとするが、頭がくらりとふらついてうまく起き上がれない。
なんとか体勢を整えようと伸ばした腕が、しゅるとシーツを滑る。
その摩擦音に気づいた服部がこちらを見た。
ふ、と笑うと電話を切りながら、こちらに声をかける。
「ちょい待ってて?」
そう言うと部屋を出て、またすぐに戻ってきた。
手には琥珀色のグラス。
差し出された冷たいコーヒーは、何故かいつもと違うミルク入り。
「甘いもの、とったほうがええと。」
砂糖も、はいっているらしい。
「・・・?」
言われた意味がのみこめず、うろんに彼を見上げれば苦笑された。
「工藤の飲んだ薬、一時的に血糖を下げるもんらしいで?」
「・・・んだよ、それ。」
(だから嘘だって言ったでしょう?)
そーいうことかよっ!
怒りのあまり、がばっと上半身が起こされる。
しかし、起き上がった衝撃で、体の中のものがこぼれて下肢を伝った。
「~~~~~~っ!」
あまりのことに言葉にならない。羞恥が新一の顔を耳まで朱に染める。
「あ~・・・すまん、起こしたらあかん思うて、」
視線をさまよわせながら、心なしか照れた様子の服部に
今更ながら自分の状況に意識を向けた。
色濃く情交の跡を残したベッドに、
のしかかった時のまま上着だけを裸身に纏う己に気づく。
血が上る音が聞こえてきそうだ。
またくらくらとする額を片手で押さえながら、白いシーツばかりを眺める。
騙されて、勢いで服部襲って、なにやら口走って、
こんなステキな状況で服部の顔が見られるはずもない。
「とりあえず、片付けるわ。」
服部の影がそのシーツにかかったと思うと、いきなりひょいと体が持ち上げられた。
「おい!」
「我慢しぃ。」
シーツで体を包むと、平次は新一を抱え上げた。
諌めようと声をかけるも、
服部は聞く耳持たずといったふうに、ずかずかと大股で部屋を出る。
かって知ったる他人の家。
階段をかけ下りて、バスルームへ直行された。
バスチェアーに新一をゆっくりとおろすと、平次はコックを捻り、熱いシャワーを出す。
呆気にとられながらも、「片付け」の意味をここにきてようやく悟る。
「てめ、」
なんとかこの先の展開から逃げ出そうと立ち上がろうとするものの、
まだうまく体が動かない。
平次は新一の傍らに片膝をついて視線の高さをあわせると、湯の温度を確かめながら
ゆっくりと新一の足元へシャワーをかけていく。
濡れていくシーツと平次のジーンズ。
「イヤやろうけど、ちょっとまだふらつくやろ?すぐ済ますから。」
そう言うと、止めるまもなくシーツの隙間から手を入れられた。
触れられて体が硬直する。
「い・・・っ」
嫌だ、と言う声は濡れた音に消された。
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何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
