泣き叫ぶ女の顔が画面に映る。
下衆な野次が混ざり、悲鳴がいっそう高くなる。
「これが、ヤツらの犯した罪です。」
白髪を丁寧になでつけ、品の良いスーツに身を包んだ初老の男が薄暗い部屋に立つ。
見せたいものがあると、そう言って新一をこの部屋に連れてきた男は、感情を殺した声で話し出す。
「あなたは、自分の大切な人間をこんな目にあわせた人間を許せというのですか。」
新一はソファに座ったまま、振り返る男の視線を真正面から受けた。
「許せということではありません。同じ犯罪者にならないで欲しいと願うばかりです。」
半地下の部屋は、電気をつけなければまるで檻のようだ。
小さな覗き窓の外のは明るい昼の陽射し。
それが滑稽なほど、画面の中では今なお暗い惨劇が繰り広げられている。
「頼りにならない日本の司法を当てにしろと?」
「個人で罪を裁くことは、この国ではしてはならないことです。彼の罪も・・・法の下で平等に明かされるべきです。」
スピーカーからは絶え間ない悲鳴が部屋に響き、それを聞きながら眉間に深く皺を刻みつつも、
きっぱりと新一は男へと答えを返す。
「考えは変らないと?」
「ええ。」
新一が頷くのを見た男は、背広の胸ポケットから固定電話の子機を取り出した。
「あなたの彼女・・・幼馴染でしたか。」
その電話を片手で掲げたまま、男は無表情のまま話を続ける。
「あなたからの頼みと偽って、届け物をお願いしましたよ。」
新一は思わずソファから立ち上がる。
「今止めなければ一時間以内には着くでしょう。・・・この映像の場所です。」
灰色の倉庫の床に、散らばる長い髪。
「とても美しい少女だ。きっとヤツラは見逃しはしないでしょう。」
「・・・蘭っ」
「ここは携帯電話は使えません。外部への連絡は私の持つ、この電話のみです。」
携帯電話を取り出そうと、自身の胸ポケットへと手を伸ばしたが、その姿を見て男は諭すように言う。
「もし今回の事件の犯人を忘れてくれるというのなら、今すぐ彼女を止めてあげますよ?」
「・・・あなたは・・・!」
「それでもあなたはヤツらをかばうことができますか?」
抑揚のない響きの中に、激しい憤怒を感じて新一は反論を封じられた。
「彼女があの子のような目にあった時、それを公にしてまで司法の手に犯人を委ねると?」
暗い色の瞳は、目の前の新一ではない何か遠くを見ているようだ。
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何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
