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東西名探偵/平×新のSSブログです。幸せイチャイチャ中心。                                                               死にネタ別れネタなし。初めての方はカテゴリーより「はじめに」をクリックしてください。                                                 ご意見、ご感想等ございましたら カテゴリー下にあるリンクのWEB拍手や文末コメントにてお願いします。
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2026/07/04 (Sat)
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2010/11/02 (Tue)

 酔っぱらいの朝  の続き。 


「…二人に内緒にしていたのは悪かった。」
軽く頭を下げると、しばらく俯いたまま言葉を探す。突き刺さる視線が痛い。
こういう時にいつもの滑らかな啖呵が切れればいいのに、そう焦りながらも喉がつかえる。
しかしいずれは話さなければいけないことだったのだ。

「服部とは、その、半年くらい前からそういう付き合いをしてる。」
真っ赤になりながらも、言葉を紡ぐ。
恥じ入ることなどは何もない。
ただ自分たちを知る幼馴染みに話すという行為が猛烈に恥ずかしいだけだ。

「服部は話しておいたほうがいいんじゃないかって言ってくれていたんだ。」
テーブルの上のコーヒーカップを両手で包むように握りしめる。
「俺は少し、時間が欲しくて。」
湯気がまだほのかに香りをまとって、鼻をくすぐる感覚が遠い。
緊張しているのか、と自己分析する自分がおかしい。
きゅっとコーヒーカップを握る手の力を強めると、新一は幼馴染み達を見回した。

「けど、俺は、」
「工藤。」

平次がぴしゃりと言葉を挟み込む。
はっとしたように新一は目を瞠る。そしてそのまま目元を緩ませた。
「ああ。あー…」
こほんと小さく咳払いをして、そして少し頬を赤らめながらも一息に告げる。
「・・・俺たちは、お互い、相手がそういう意味でも必要なんだ。」
先ほどまでの動揺が嘘のように引いた静かな目で二人に笑いかける。
視線を床に落として、テーブルに肘をついている平次の表情が心なしか柔らかい。
けれど。

「さみしいわ。」
いつもは高い位置で結わえられているポニーテール、今は降ろしている長い髪が俯いた彼女の表情を隠す。
呟かれた言葉は重く、鳥のさえずりが聞こえる程の静けさの中で張り詰められた空気。
「遠山さん」
俯いたまま、また「さみしいわ」と繰り返す和葉に、名前を呼ぶ以外言葉をかけることができなくて、
探偵達の能弁な舌は今はその動きを止めた。
ふと蘭を見れば、やはり寂しそうな笑みを浮かべている。

彼女たちでも、やはり自分たちを認めてもらうことはできないのだろうか。
いや、彼女たちだからこそ、認められないのだろうか。
それならばいっそ、怒りを露わにしてくれればこちらも言葉を返すことができただろう。
けれど二人はただ、寂しいと呟くだけ。
その言葉が、今までのどの言葉よりも何故か歯がゆさを感じさせる。
無意識にごめん、と喉元まで出かかるが、それは平次に対しての自分の気持ちを否定することになる気がしてまた口を閉じた。
何を話せばこの二人に伝わるだろうか。
けして幼馴染み達をないがしろにしているわけではないと。ただ自分は、自分たちはー……。
そこまで考えて、はたと気づいた。

本当は蘭なら平次とのことを理解してくれるんじゃないかと、楽観的に希望を持っていた。
だからこうして、話すことにもさして抵抗はなかったのだ。
これほどの重たい空気の中にあることが、そのことへの軽いショックが、自分がいかに蘭に甘えていたのかを知らしめる。
できることは真実を、できうる限り明確に伝えることだけ。
普段ならばけして彼の前では使うことのない言葉で、大切な、ずっとずっと好きだと思っていた彼女に伝えることだけだ。

「俺は、」
あらためて緊張に体がこわばる。

「……俺は、服部が、好きなんだ。」
誰に否定されても、自分だけはそれを否定できない。
長く続くかと思われた沈黙は、がたりと椅子を引く音と、それに間髪入れず続いた予想外に明るい声で破られた。

「あー、平次が紅うなっとる~。」
「…っやかましっ!」
「ほんま恥ずかしいくらい馬鹿っぷるやねえ、ごちそーさま。」
どんっと音をたて、行儀悪く肘をテーブルにつくと和葉は先ほどのまでの雰囲気を払拭した。
半目になって、にやーりと笑いながら平次をからかう言葉を投げ、平次は和葉に照れを隠す為か荒っぽい言葉で受け答える。
それはいつも大阪で見せられる光景。

その変貌ぶりに、肩すかしをくらった新一はきょとんと目の前の漫才を見るだけだ。
和葉は新一のそんな表情を見ると、ふふっと猫のように目を細めて笑う。
「なあ、工藤くん。」
頬杖をついたまま、新一へと首を傾ける。
「うちらな、平次と工藤くんがつきあっとること怒ってる訳やないの。」
――― ずっと一緒におったのに。
「話してもらえなかったことが、淋しいかったんや。」
一晩眠れなかった仕返しに、少しくらい意地悪したっていいかなって。

そうして頬杖を解くと、和葉はテーブルの上で掌を組んだ。
「何がきっかけでも、話してくれたことは嬉しいわ。それに・・・なあ?蘭ちゃん。」
「うん。」
和葉の言葉を受けて、静かに話の行く末を見守っていた蘭が口を開く。
胸へと手をあてて、そっと何かを噛みしめるようにした小さな声。
「なんとなく、二人の関係が変わったような気はしてた。」
そうして蘭と和葉は二人揃って顔を上げると、今まで見たことのない綺麗な微笑みが浮かんでいた。

「びっくりはしてるし、一応ショックなんだけど」
「・・・納得もしているとこがあるの。」
「話してくれてありがとう。」
「まあ、なんなら相談にのったらんこともないで?」

幼馴染みをやめたわけじゃないからな、と和葉が言えば、大きく蘭が頷いた。

「蘭、遠山さん…。」

動揺もショックも、けして小さなものではなかったはずだ。
それでもなんとか二人して笑おうと決めていたのだろう。
笑みにはやや苦く、明らかに悲しみも混じっていたが、それ以上に二人の目に浮かんでいたのは自分たちの幼馴染みへの信頼。
新一と平次がともにある姿を長く見ていたからこその、それ。

同じ年齢の人間の中にあって、その才能故の異質さを感じさせぬように、いつもどこか緊張していた生活。
遠慮なく言葉を選ばずにいたのは、幼馴染みである自分たちのみであったことを知っていた。
子供のようなじゃれあい、聞く者を混乱させるとりとめがない言葉の応酬、互いを試すような挑戦的な笑みを
嬉しそうに交わす二人を傍で見ていたからこそ、一晩で気持ちをある程度整理することができたのだ。

幼馴染み故の理解に、じんわり温かいものが新一の胸にこみあげる。
ありがとうと呟きかけた時、女の子二人が互いの視線を交わしたかと思うと揃って両手を合わせた。

「後ね、ひとつ謝らないといけないの。」
「私たちもちょっと酔ってて。」

えへへ、と照れながら二人が指さしたのは窓の外。
振り返った先のその景色に、新一はしばし呆然とする。
平次は知っていたのだろう、いや、もしかしたらその瞬間に現場を目撃していたのかもしれない。
しれっと何食わぬ表情のまま、コーヒーを飲んでいる。

そういえばやたらと日照りがいいなあと思ってたんだよなあ。
しょっぱい表情になった自分に気付きながらも、両手を合わせて上目遣いに謝る女の子の姿はやはりかわいくて、
新一は「いいよ、気にしないで。」と軽く笑ってその場を流し、心の中で庭で根本から倒れている楡の木に合掌したのだった。

 

 

 

 

 

 


「……とか思ったことを、後悔しちゃうのよ…」
「蘭ちゃんもそうやったん…」
二人して電話越しに大きなため息を吐いた直後、

「蘭――――っ!」
『和葉――――っっ!!』

渦中の人物に名前を叫ばれて、再び女二人は先程よりも大きなため息をついた。
通話を切らず、携帯電話を持ったまま振り返る。
そこには過去、各々自分が好きだった男が立っていたが今は溜息しか浮かばない。

「聞いてくれよ!服部のヤツひでえんだぜ!?」
「工藤のアホがまたひどいんやっ!」

…カミングアウトした後の二人は、いい意味でも悪い意味でも蘭や和葉に対してオープンになった。
当然だろう、つきあい始めの蜜月。

惚気る相手もいなかった反動か、聞いてもいないのにひたすら喋る。
そして愚痴る。それがのろけだと気付かないまま愚痴る。
聞かされる方も最初は親身になってアドバイスなりフォローなりをしていたが、そろそろ堪忍袋も破裂寸前。
ふるふると電話を持つ手が震えていることを知らない彼らは、昨夜の電話で相手がどれほど無神経であるのかをとうとうと語り出す。
まったくこの男どもは、どれだけ甘えれば気が済むのか。自覚のないことが嬉しいけれど腹立たしい。

「なあ?」
「聞いてんか?」

邪気のない顔で問われれば、もう限界。ふくらんだ堪忍袋が怒鳴り声をあげて破裂する。

「「もうっ!いいかげんにしてーっ!!!」」


・・・だけど叫ぶ口元が笑っていては、きっとこの怒りは伝わらない。

なんだかんだと幸せをお裾分けしてもらっている気持ちになっている女の子たちは、
腰に手をあてて目の前の男どもに怒鳴りながらも、
やっぱり最後には話を聞いてあきれながらも、嬉しそうに優しく笑うのだった。
 

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二児の母。2009年に唐突に平新に。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
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