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東西名探偵/平×新のSSブログです。幸せイチャイチャ中心。                                                               死にネタ別れネタなし。初めての方はカテゴリーより「はじめに」をクリックしてください。                                                 ご意見、ご感想等ございましたら カテゴリー下にあるリンクのWEB拍手や文末コメントにてお願いします。
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2026/07/01 (Wed)
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2010/03/02 (Tue)
でれっとした顔を隠そうともせず、高木が携帯電話を眺めている。
事件が解決し、今日はもう少ししたら帰宅できることを報告しようと携帯電話を持ったはずだが、二つ折りのそれを開いた途端ににまりと笑ったままだ。
不気味に思った新一が傍によると、携帯電話の待ち受け画面にはもうじき1歳になる高木の娘が満面の笑みを浮かべている。
「…高木さん?」
おそるおそる声をかけると、びくっと背中をゆらして高木が振り返った。
「あ、ごめん。工藤くんかっ。本当ありがとう!今日はきちんと帰れそうだよー!」
嬉しさを隠そうともせず、電話に頬ずりしそうな勢いだ。
「いえ。娘さんですか?かわいいですね。」
「そうだろう!すごくかわいいんだよ!もうこの世のものとは思えないね!」
「…はあ。」
「もうじき奥さんも育児休暇を終えるから、保育園の予約をしてるんだけど。どこも満員らしくて困ってるんだよー。」
でれでれとした相好のまま、矢継ぎ早に子供のかわいさを語り始める。
「工藤君も早く結婚して子どもをつくるといいのに。すごくすごくかわいいよ。」
結局電話に頬ずりし始めた高木に、曖昧に笑って見せながら新一は美和子さんによろしくといい置いてその場を離れた。

似たようなことなら、もう耳にたこができるほど聞き飽いている。
子供ができた人間は、その幸せを他の人間にも知ってほしいと子供のいない人間に子供を作れ作れとはやし立てるものだ。
『ねえ、新一。』
ふと、母親の言葉が蘇る。
平次との事を話した後、しばらくしてのことだった。

『私はね、生まれてきて一番幸せだったことは優作に会えたことよ。』
窓の外に揺れる楡の木の葉を眺め、ソファに座ったまま彼女は言葉を募る。
『その次は新一に会えた事。この手にあなたを抱いたとき、本当に嬉しかったの。』
木漏れ日が髪を照らし、明るい栗色の毛が光を弾いているのを新一はきれいだなと思って見ていた。
『あなたが小さい頃、家の中で毎日笑いが絶えなかった。怒ったり泣いたりもしたけど、優作と二人で本当に本当に楽しくて幸せな日を過ごさせてもらったの。』
今でも、もちろんそうだけど、と振り返りながら有希子は少し淋しげに笑った。
『あなたが、私のようにたった一人の誰かに会えたのなら、それはもうとても幸せなことよ。反対はしない。』
有希子は立ち上がると、新一の傍へと歩いて近づく。
『でもひとつだけ。私たちがあなたを育てたときの幸せを、命が繋がる実感と喜びを、あなたが味わえないのを残念に思うわ。』
今ではもう背が自分よりも高い青年の頭を、よしよしと2回撫でて母親の顔でもう一度微笑んだ。

考え事をしながら歩いていたせいか、ポケットの中にいれていた電話が鳴っていたことに気付くのが遅れた。
ごそごそととりだしているうちに音は途切れ、着信を確認すれば平次からのようだ。
あいかわらずタイミングのいいことだ。ふと口元に笑みが浮かんだ。

――― たった一人に会えたことは、とても幸運なことだと思う。

失うものは、あるだろう。
けれどそれは相手が平次だからではない。
誰が相手でも、結局のところ失うものもあれば得るものもあるのだ。
少しその比率が一般とは違っていても、探偵である自分たちはもともと一般的な生活などできやしないのだからイーブンだ。
同年代の世代の親が顔をほころばせて孫の話をしているところを見れば、やはり自分の親に孫の姿を見せられないのは申し訳ないと思いつつ、譲ることのできないものはどうしてあるのだから仕方ない。

電話を手に握ったまま、新一は空を見上げて瞠目した。
口元には消えることのない笑み。
知ることのない幸せは、知ってしまった幸せにはかなわない。
少しだけ痛む胸も、もう、たったひとりのものだから。

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こば
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女性
自己紹介:
二児の母。2009年に唐突に平新に。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
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