東西名探偵/平×新のSSブログです。幸せイチャイチャ中心。 死にネタ別れネタなし。初めての方はカテゴリーより「はじめに」をクリックしてください。 ご意見、ご感想等ございましたら カテゴリー下にあるリンクのWEB拍手や文末コメントにてお願いします。
この時期にちなんだものと言われ、多少予想はしていたものの、
工藤邸に着いて早々有希子に掴まり、あれよあれよという間にメイクルームへ連れ込まれた。
すでに先に餌食になっていたらしき新一が鏡の前でぐったりとしている。
長いマントをはおらされており、明後日の方を向きながら乾いた笑いを浮かべていた。
この先に起こりうるだろう出来事は明白で、観念するしかないかと腹を括るのと同時に
有希子の威勢のいい掛け声が背中にかけられた。
「さあ!始めるわよー♪」
彼女の両手にはメイク用具が一式、逆らうことを許さない笑顔で仁王立ちだ。
「よろしくおねがいします・・・」
棒読みで、不慣れな東京弁まで出てしまう。
ひきつった笑顔で返せば、張り切った彼女の瞳が、より一層きらりと光った。
「よく似合ってるわよー」
「はあ。」
ぴょこりと頭から突き出した耳と、たらりと垂れる尻尾は、髪の色と同じ漆黒の毛並み。
「後は仕上げね。もう少しかかるけど、我慢してね。」
「大丈夫です。気にせんといてください。」
新一はすでに完成していたらしく、あの後しばらくしてリビングへと戻っていった。
鏡越しに、んふ、と笑うと有希子は平次の顔をじっと見た。
ふいに淋しげな表情になり、いつもより低めの声で静かに語りだした。
「ねえ、平次君。平次君て、いい男よね。」
優作ほどじゃないけど、と続けられて平次は苦笑するしかない。
「優作はねぇ、新一にとても甘いの。」
平次の髪に櫛を入れながら、有希子は話を続けた。
「今はだいぶ落ち着いたけど、新一が小さい頃なんてそりゃもうすごかったのよ?」
溺愛という言葉にふさわしいかわいがり方だったという。
両親ともに、仕事をせず時間の全てを子育てに投じた。
幸いそれが出来るだけの環境も金銭の余裕もあったためだが、
そうさせるほどのかわいさが自分たちの子供にあったというのが彼らの主張だった。
「毎日、朝起きればおはようのハグにキス、おやすみのハグとキス。転んで泣いたってハグしてキス。」
ぎゅうと抱きしめて、その小さな体が温かいことだけで泣きたくなるほど愛しいと思えた。
自分たちの育む小さな命が、少しずつ大きくなるその変化はあきることのないもので。
「本当にかわいくて、愛しくて、・・・目の中にいれても、とはよくいったものね。」
ふふ、と母親の顔で優しく笑われたら、少し居心地が悪い。
そのかわいい息子を、彼らからかっさらったのは他ならぬ自分なのだ。
「だからね、ちょっとだけいじわるさせてね。」
「へ?」
首をかしげる間もなく、有希子は悪戯な笑みを浮かべて扉の方へと声をかけた。
「優作ー、平次君の準備できたわよー。」
「あれ?先生もおるんですか。」
「うん。今日の主役よ。」
その声とともに、大きな音をたてて扉が威勢よく開いた。
「やあ、平次君。今日はどうも。」
ハンチングを被り、ブーツを履き、そして肩には長い・・・あれは銃身に見える・・・ものがぶらさがっていた。
嫌な予感がした。
「・・・あの、何の格好してはるんですか?」
「見てわかるだろう?狩人だよ。」
―――突っ込みたい。
兄弟デュオの人ですかと突っ込みたいが、それを許さぬ空気が漂っていた。
何故だろう、優作の目が笑っていない。
おもむろに猟銃を肩から下ろし、手にしたそれの安全装置をガチャリと音を立てて外す。
「狼を狩るのは、狩人の仕事だからね。」
嫌な予感の的中率だけは100%を誇っていたなあ、と平次は自分の感の良さを呪った。
「・・・ハロウィンには狩人は出えせん思いますよ?」
なんとか平和的に解決したいと、とぼけてみたが無駄なようだ。
チリチリとした空気で、背中に嫌な汗が流れる。
「嫌だなあ。君はもっと聡いと思っていたよ。」
優作の明らかな本気を感じとり、平次はじりじりと目前の狩人から距離をとりつつ逃げ道を算段する。
しっかり照準を心臓に合わされているのに、無駄に笑顔なのが恐ろしい。
「ハロウィンだなんて、一言も言っていないだろう?」
「このシーズンていえば、学園祭よね♪・・・そして学園祭といえば学芸会でしょう?」
有希子が助け舟を出すかのように、二人の会話に加わった。
しかしちゃっかり安全圏まで退避している。
扉の向こうで手を振る姿で、なんとなくこの先の展開が読めてくる。
ふと平次は新一のマントの色を思い出した。
ハロウィンならば黒いマントだろうに、あれは薔薇のように深い赤色だった。
派手な吸血鬼と思っていたが、彼は、あれは。
「もしかせえへんでも、・・・『赤頭巾』ですか・・・?」
「正解♪」
ピンポーンとベルの代わりに、猟銃が火を噴いた。
それは平次の頬を掠め、背後の鏡が粉々に砕け散る。
「かわいい赤頭巾ちゃんを食べようとした狼がどうなるか、・・・知ってるよね?」
あかん。あの親父、目がマジや。
ひきつる口元を引き締めて、銃弾を入れ替える隙に出窓へと走った。
窓を突き破って、庭に転がり出る。
舌打ちを背に受けながら走り、とりあえずメイクルームから逃げ出すことには成功する。
しかし耳に尻尾をつけたまま外へと逃げる訳にも行かず、もう一度玄関をくぐる。
それに、やられっぱなしでいるのも、性に合わない。
「くどー!」
とりあえず現状を把握しようとリビングへと駆け込むと、当の本人はゆったりコーヒーブレイク中だった。
赤いマントが違和感なく存在している。
「どーいうこっちゃ!説明せえっ!ちゅーか、あれ実弾か?」
息を切らして叫ぶ平次を、うざったそうにふりかえる新一の口からは意外な一言が発せられた。
「一晩逃げ切ったら、きちんと認めるってよ。」
その言葉に、ピタリと平次の動きが止まる。
「敷地はこの屋敷内。あと、書庫には絶対に近寄るなよ。」
本が駄目になったら、わかってんだろうな。
言外に脅しをかけて、にっこりと笑いフードを被った。
「おばあさま、どうしてそんなに肌が黒いの?」
瞬間、新一の背後に飾られた絵が破裂音とともに砕ける。
爆風に飛ばされた砂塵をフードでいなし、新一は口元の笑みを深くして平次を横目で一瞥する。
平次の入ってきた入口とは反対側の扉から、優作の影が近づいてくる。
薬莢が床に転がる音が、やけに響いて平次の額から汗が流れた。
「その前にしとめてみせますよ。」
「優作、素敵!」
しなやかに腕を払い、優作がリビングへと登場する。
その後ろにふわりとスカートをなびかせて、小さく拍手しながら有希子も現れた。
何処まで本気か、いや何処までも本気なのか。
こっくり息を飲み込みながら、おそるおそる平次は工藤夫妻へ質問を投げた。
「一晩て、何時までですか?」
「夜は、朝が来るまでが夜だよ。」
時間指定なしかっ!
この時期の日の出時刻を思い出す。まだまだ先が長いことだけは確かだ。
「がんばってね、平次君。」
しかし、きちんと認めてくれるのだと言う。
それならば、命がけでもおかしくはないし―――惜しくもない。
「本気の父さんは、怖いぞ。まあ、がんばれよ。」
他人事のように、今度はこちらを見ようともせず新一はコーヒーに口をつける。
「ルール説明も終わったようだね。では、再開といこうか。」
優作はすうっと目を細めると、照準を合わせようと銃を構えた。
ちくしょう、覚えてろ工藤。
後で絶対、食ってやる!
平次はそう心で叫ぶと、忍び寄るおどろおどろしい気配にまた走り出した。
秋の長夜は、まだ始まったばかり。
ハロウィンになりませんでした・・・。あれ?狼男と吸血鬼のえちの予定は何処に?
工藤邸に着いて早々有希子に掴まり、あれよあれよという間にメイクルームへ連れ込まれた。
すでに先に餌食になっていたらしき新一が鏡の前でぐったりとしている。
長いマントをはおらされており、明後日の方を向きながら乾いた笑いを浮かべていた。
この先に起こりうるだろう出来事は明白で、観念するしかないかと腹を括るのと同時に
有希子の威勢のいい掛け声が背中にかけられた。
「さあ!始めるわよー♪」
彼女の両手にはメイク用具が一式、逆らうことを許さない笑顔で仁王立ちだ。
「よろしくおねがいします・・・」
棒読みで、不慣れな東京弁まで出てしまう。
ひきつった笑顔で返せば、張り切った彼女の瞳が、より一層きらりと光った。
「よく似合ってるわよー」
「はあ。」
ぴょこりと頭から突き出した耳と、たらりと垂れる尻尾は、髪の色と同じ漆黒の毛並み。
「後は仕上げね。もう少しかかるけど、我慢してね。」
「大丈夫です。気にせんといてください。」
新一はすでに完成していたらしく、あの後しばらくしてリビングへと戻っていった。
鏡越しに、んふ、と笑うと有希子は平次の顔をじっと見た。
ふいに淋しげな表情になり、いつもより低めの声で静かに語りだした。
「ねえ、平次君。平次君て、いい男よね。」
優作ほどじゃないけど、と続けられて平次は苦笑するしかない。
「優作はねぇ、新一にとても甘いの。」
平次の髪に櫛を入れながら、有希子は話を続けた。
「今はだいぶ落ち着いたけど、新一が小さい頃なんてそりゃもうすごかったのよ?」
溺愛という言葉にふさわしいかわいがり方だったという。
両親ともに、仕事をせず時間の全てを子育てに投じた。
幸いそれが出来るだけの環境も金銭の余裕もあったためだが、
そうさせるほどのかわいさが自分たちの子供にあったというのが彼らの主張だった。
「毎日、朝起きればおはようのハグにキス、おやすみのハグとキス。転んで泣いたってハグしてキス。」
ぎゅうと抱きしめて、その小さな体が温かいことだけで泣きたくなるほど愛しいと思えた。
自分たちの育む小さな命が、少しずつ大きくなるその変化はあきることのないもので。
「本当にかわいくて、愛しくて、・・・目の中にいれても、とはよくいったものね。」
ふふ、と母親の顔で優しく笑われたら、少し居心地が悪い。
そのかわいい息子を、彼らからかっさらったのは他ならぬ自分なのだ。
「だからね、ちょっとだけいじわるさせてね。」
「へ?」
首をかしげる間もなく、有希子は悪戯な笑みを浮かべて扉の方へと声をかけた。
「優作ー、平次君の準備できたわよー。」
「あれ?先生もおるんですか。」
「うん。今日の主役よ。」
その声とともに、大きな音をたてて扉が威勢よく開いた。
「やあ、平次君。今日はどうも。」
ハンチングを被り、ブーツを履き、そして肩には長い・・・あれは銃身に見える・・・ものがぶらさがっていた。
嫌な予感がした。
「・・・あの、何の格好してはるんですか?」
「見てわかるだろう?狩人だよ。」
―――突っ込みたい。
兄弟デュオの人ですかと突っ込みたいが、それを許さぬ空気が漂っていた。
何故だろう、優作の目が笑っていない。
おもむろに猟銃を肩から下ろし、手にしたそれの安全装置をガチャリと音を立てて外す。
「狼を狩るのは、狩人の仕事だからね。」
嫌な予感の的中率だけは100%を誇っていたなあ、と平次は自分の感の良さを呪った。
「・・・ハロウィンには狩人は出えせん思いますよ?」
なんとか平和的に解決したいと、とぼけてみたが無駄なようだ。
チリチリとした空気で、背中に嫌な汗が流れる。
「嫌だなあ。君はもっと聡いと思っていたよ。」
優作の明らかな本気を感じとり、平次はじりじりと目前の狩人から距離をとりつつ逃げ道を算段する。
しっかり照準を心臓に合わされているのに、無駄に笑顔なのが恐ろしい。
「ハロウィンだなんて、一言も言っていないだろう?」
「このシーズンていえば、学園祭よね♪・・・そして学園祭といえば学芸会でしょう?」
有希子が助け舟を出すかのように、二人の会話に加わった。
しかしちゃっかり安全圏まで退避している。
扉の向こうで手を振る姿で、なんとなくこの先の展開が読めてくる。
ふと平次は新一のマントの色を思い出した。
ハロウィンならば黒いマントだろうに、あれは薔薇のように深い赤色だった。
派手な吸血鬼と思っていたが、彼は、あれは。
「もしかせえへんでも、・・・『赤頭巾』ですか・・・?」
「正解♪」
ピンポーンとベルの代わりに、猟銃が火を噴いた。
それは平次の頬を掠め、背後の鏡が粉々に砕け散る。
「かわいい赤頭巾ちゃんを食べようとした狼がどうなるか、・・・知ってるよね?」
あかん。あの親父、目がマジや。
ひきつる口元を引き締めて、銃弾を入れ替える隙に出窓へと走った。
窓を突き破って、庭に転がり出る。
舌打ちを背に受けながら走り、とりあえずメイクルームから逃げ出すことには成功する。
しかし耳に尻尾をつけたまま外へと逃げる訳にも行かず、もう一度玄関をくぐる。
それに、やられっぱなしでいるのも、性に合わない。
「くどー!」
とりあえず現状を把握しようとリビングへと駆け込むと、当の本人はゆったりコーヒーブレイク中だった。
赤いマントが違和感なく存在している。
「どーいうこっちゃ!説明せえっ!ちゅーか、あれ実弾か?」
息を切らして叫ぶ平次を、うざったそうにふりかえる新一の口からは意外な一言が発せられた。
「一晩逃げ切ったら、きちんと認めるってよ。」
その言葉に、ピタリと平次の動きが止まる。
「敷地はこの屋敷内。あと、書庫には絶対に近寄るなよ。」
本が駄目になったら、わかってんだろうな。
言外に脅しをかけて、にっこりと笑いフードを被った。
「おばあさま、どうしてそんなに肌が黒いの?」
瞬間、新一の背後に飾られた絵が破裂音とともに砕ける。
爆風に飛ばされた砂塵をフードでいなし、新一は口元の笑みを深くして平次を横目で一瞥する。
平次の入ってきた入口とは反対側の扉から、優作の影が近づいてくる。
薬莢が床に転がる音が、やけに響いて平次の額から汗が流れた。
「その前にしとめてみせますよ。」
「優作、素敵!」
しなやかに腕を払い、優作がリビングへと登場する。
その後ろにふわりとスカートをなびかせて、小さく拍手しながら有希子も現れた。
何処まで本気か、いや何処までも本気なのか。
こっくり息を飲み込みながら、おそるおそる平次は工藤夫妻へ質問を投げた。
「一晩て、何時までですか?」
「夜は、朝が来るまでが夜だよ。」
時間指定なしかっ!
この時期の日の出時刻を思い出す。まだまだ先が長いことだけは確かだ。
「がんばってね、平次君。」
しかし、きちんと認めてくれるのだと言う。
それならば、命がけでもおかしくはないし―――惜しくもない。
「本気の父さんは、怖いぞ。まあ、がんばれよ。」
他人事のように、今度はこちらを見ようともせず新一はコーヒーに口をつける。
「ルール説明も終わったようだね。では、再開といこうか。」
優作はすうっと目を細めると、照準を合わせようと銃を構えた。
ちくしょう、覚えてろ工藤。
後で絶対、食ってやる!
平次はそう心で叫ぶと、忍び寄るおどろおどろしい気配にまた走り出した。
秋の長夜は、まだ始まったばかり。
ハロウィンになりませんでした・・・。あれ?狼男と吸血鬼のえちの予定は何処に?
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プロフィール
HN:
こば
性別:
女性
自己紹介:
二児の母。2009年に唐突に平新に。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
何故だと自問自答しつつも数年ぶりに筆をとる。
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